第97話 パズルのような
アマンダが指差す先。
ボス部屋の対角の隅に、積み上げられたなにか。
暗くて、よく見えない。
いや、それは嘘だ。
暗いのは確かだけど、俺はそれをちゃんと視認した。
でも脳が、理解するのを拒んだのだ。
それは——
死体の山だった。
円卓の守護者と、その仲間たちの。
装備を剥がされ、生身の状態で……。
「……」
俺はふらふらと、死体の山に近づいて行った。
それがただ乱雑に積み上げられていただけなら、ここまでの衝撃は受けなかったと思う。
最初から、覚悟していたことだ。
リスが木の実を隠すように、クマが獲物を埋めるように、ただ生物としての習性で、そうしただけかもしれない。
邪魔な装備を剥いで、神殿の隅に積み上げる。
そういうことも、ありえただろう。
食い散らかされていないだけ運が良かったと、そう思ったはずだ。
でも……。
(これは、違う……)
頭に浮かんだのは、ソロキャンプ中によくやっていた一人遊びだ。
適当に拾ってきた石を、可能な限り隙間なく積み上げていく。
そんな、自然のパズル。
この死体の山が、まさにそれだ。
ただ乱暴に積まれているんじゃない。
それこそパズルのように、明確な意思を持って隙間なく積み上げられていた。
(こんな、遺体を弄ぶようなマネを……)
本当に、異形の神がやったのだろうか。
生物の習性として、こんなことを……。
「……どっちの仕業なんだろうね」
俺と同じ疑問を、アマンダも抱いたようだ。
異形の神か、それとも——
「遺体が無事でよかった」
アマンダが弾んだ声で言う。
「これで英雄たちを弔ってやれる。そうだろう、ジロー」
「……そうだな」
「そろそろアンリが来るころかな。早く英雄たちを、こんなところから……」
不穏な気配に、俺たちは同時に振り返った。
開け放たれた扉から、魔物が姿を現す。
それも三体も。
腕のない人型の魔物と、その左右にデフォルメされた狐のような、鋭角的な四足歩行の魔物。
三体ともが、短く固そうな黒い毛に覆われている。
体全体に亀裂が走っていて、隙間から赤黒い光が漏れていた。
ドク、ドクと聞こえるのは、心音だろうか。
それに合わせて赤黒い光が明滅を繰り返していた。
見たことのない、名前も知らない魔物だった。
空位になった神の席。
そこに真っ先に駆けつけるのは、きっと二番手で。
おそらく、このダンジョンの最強クラスの魔物なのだろう。
一眼見ただけでわかる。
これまで出会ってきたどの魔物よりも強い。
アマンダが舌打ちし、剣を抜こうとした。
俺は片手をあげて、それを制した。
「そっち、任せてもいいかな」
「……ああ、構わない。任されたよ」
「それと……」
「わかってる。アンリに見せたりしないよ。入り口で遺体袋を受け取るさ。運び出すのは、手伝ってもらうけど」
「ありがとう」
俺は刀を抜き、魔物に歩み寄る。




