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きっかけ

質問の意味が全くわからない。


「『なぜ、人間の貴方が』って……。ミールさん、貴方もここに居るじゃないですか」

「私は人間ではありません。ほら」


 ミールさんはそう言うと、着ているシャツの前を開け、胸を俺にみせた。


「これって……」

「命核です。私たちの生命力の源のようなものです」


 ますます意味が分からない。元いた大学ではない事は確かで、おそらく日本でない事も確か。今度はいよいよ地球ですらない可能性も出てきた。


「じゃあミールさんは人間じゃないんですか?何者なんですか?と言うか、ここはどこなんですか?」

「落ち着いて下さい、貴方が困惑の最中にあることは良く分かりました。一緒に一つずつ整理していきましょう」


 俺は気を失い目を覚ましたら知らない土地だった事を話した。ミールさんはここが何処で、自分が何者かを説明してくれた。

 分かった事といえば、おそらくここが今まで自分が暮らしていた世界とは異なること。異世界に飛ばされたってことらしい。にわかに信じ難いが、今は割り切ろう。


「じゃあこのホールデン王国は亜人の国で、ミールさんも亜人なんですね」

「ええ、成人の人間がこの国に入る事は極めて珍しい。そのため気になったのです」


 "成人の人間"はって言うのがひっかかった。


「子供なら人間でもこの国に多くいるんですか?」

「表向きは居ないことになっています」

「表向き?」

「ええ、人間の子供は裏取引の対象です。人身売買や人質として連れて来られるため、表向きには居ないことにはなっています」


 気になる事が多すぎる。


「あの、亜人は人間にとって悪なんですか?」

「善と悪の定義は自分の立ち位置で大きく、簡単に変化します。人間からすれば悪である事に変わりはありませんがね」

「人間と亜人は対立しているんですか?」

「少し長くなりますが、歴史の話をしましょう」


 ミールさんはこの世界のことを少し教えてくれた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 20年前に突如として亜人族や魔族、獣族など様々な種族が暮らすこの世界に人間が現れた。

 新たな勢力の誕生により、この世界の均衡は簡単に崩れた。これが新秩序戦争である。

 人間は数の力と優れた文明の力で、魔法や特殊能力を操る異世界の住人達と互角に戦った。

 ある時、亜人の偵察部隊によって人間が空間に穴を開け、そこから武器や人を補給していることを確認する。

 亜人族はこの補給口の破壊を優先する方向に舵をきる。この作戦は成功を収め、人間はみるみる衰退した。その後人間は小さな自治領を作り、そこに定住した。

 捕らえた人間の捕虜を調べた結果、魔力を全くもっておらず、身体能力なども含めた攻撃力はこの世界の住人を大きく下回っている事が分かった。

 この様な非力な種族が、亜人族や魔人族と互角に戦っていたことに多くの亜人が困惑した。

 この困惑が好奇心への変わり、亜人は人間の研究を始めた。

 人間の武器は文明だった。高度な技術により、強力な兵器をつくり、それで戦った。脳には膨大な知識を詰め込んだメモリーと呼ばれるものが埋め込まれていた。

 一部には体全てが機械でできている様な人間もいた。

 戦争は終結したものの、人間は魔族と亜人族から研究の対象とされ、誘拐の後に裏ルートで売買されるような結果となってしまった。

 今は表だった敵対はないが、危うい均衡を保って仮初の平和を享受している状況だと言う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「20年前って、つい最近じゃないですか」

「ええ、私も兵士として戦争に参加しました。男性はほとんど徴兵されたのです」


 人類は20年前に突如として現れた。この世界の均衡を破るほどの勢力として台頭したなら、相当な人数がこの世界に渡ったに違いない。そんな話聞いたことないけど、秘密裏に異世界転移技術が元の世界で開発されていたのか?それに頭にデータメモリや、体をサイボーグ化した人間も居ただって。


「その戦争が終わったのって……」

「新秩序戦争は五年間続きましたから、今年で15年前です」


「ミールさん、アサヒさん、ご飯の準備ができました」

「ありがとうフーシャ、さぁアサヒさんご飯にしましょう」


 とてもモヤモヤする。新しい情報を知れば、新しい疑問が生まれる。


「ノックスはどうしました、フーシャ」

「お兄ちゃんは他の子達を先にお風呂にいれています。もうすぐ出てきます」


「フーシャ、飯はできたのか?よし、みんな体を拭いて、早くたべよーぜ!」


 風呂から出てきたノックスと子供たちの体をみて気がついた。


「ミールさん、ノックス達には命核が……」

「あぁ、ここに居る子供たちは皆人間です」

「え、それって……」


 当たり前のように接していたが、この人も亜人じゃないか。自分の中で緊張感が一気に高まった。


「ミールさんは、私たちを助けてくれたんです」

「あぁ!俺たち兄弟も、ここにいる子供たちはみんなミールさんが助けてくれたんだ」


 助けた?何から。元ともこの子たちはどう言う状況に置かれていたんだ。


「あのっ、ミールさん。貴方についてもう少し詳しくお話聞かせてください」

「えぇ、急に貴方が現れたのも何かの縁です。全て話しましょう」

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