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うちのもふもふが恋のキューピットだった件  作者: あっくん
第一章 幼馴染の恋が成就するまで
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第七話 土地神様に相談されました

 あたいの散歩デビューから数週間後。今日は帰宅した陸くんと一緒にお散歩中だ。


 緑の丘の散歩コースには緑豊かな公園などがあり、あたいのお気に入りになっている。でもなぜか今日も幼馴染の陽菜が付いてきているのだ。あたいと陸くんの大事な時間を邪魔するとは、なんて迷惑な女だろう。


 ところで、先日スキルに追加された霊感についてはようやく使い方が分かってきた。このスキルを使うと霊体がえるようになる……。


 つまり”幽霊あれ”が視える。よく感受性の強い子犬が誰もいない方角をジーッと見ていることがあるでしょ。あれって、漂っている”幽霊”が視えるからなの。ねっ、怖いでしょ。


 結果、あたいがお外を散歩しているとよく”幽霊あれ”に遭遇するようになったので、あたいの心の健康を維持するために、霊感スキルを調節して高位な霊体しか視えないように設定し直した。これでようやく一安心ね。


◆◆◆


『おーい、誰かぁ、わらわの声が聞こえぬか……』


 そんなあたいが散歩コースにある小さな神社の前を通過していると、どこからか弱弱しい女性の声が聞こえてきた。


 あたいが耳を澄ますと神社の境内からのようだった。あたいはぐいぐいとリードを引っ張り、小さな鳥居をくぐり、陸くんと陽菜を連れて境内へと立ち入った。女性の声は小さな拝殿はいでんの中から聞こえてくる。


「へぇー、あたし、この神社に来るの、ずいぶん久しぶり」

「俺もだ。昔はよく遊びに来てたっけ」

「ねぇ、せっかくだからお参りしていこうよ! あたし、小銭持っているから」


 陽菜と陸くんが昔の遊び場を懐かしがっている傍らで、あたいは女性の声に答える。


「はぁい、あたいには聞こえてますよぉ」


 あたいが返事をすると、いきなり目の前に見たこともない古めかしい装束を来た女性が現れた。もちろん陸くんと陽菜には姿が視えない。


『そこのお主、わらわが視えるのかぇ?』

「えぇ、えますよ。ところで……あなたはどなたでしょうか?」


『わらわはこの土地の神で”ヒメ神”という』

「ええええっ、ヒメ神様⁉ じゃあ、あなたも神様なのですか?」

『うむ、その通りじゃ! お主、神を知っているとはどうやら転生前の記憶を持って生まれたようじゃの』

「はい、あたいは柴犬の”もも”です」

 

 あたいが名前を名乗って、ははーっと伏せの姿勢を取ると、ヒメ神様はあたいの頭をなでなでしながら昔話を始めた。


 なんでもヒメ神様が土地神として奉られているのは五百年以上も続く、由緒ある神社らしい。でも最近はめっきり参拝者が少なくなり、神通力じんずうりきも弱まってきた。このままではこの土地を守ることが出来なくなってしまうのだそうだ。


「そ、それは大変なことですね」

『うむ。そのためにもこの神社への参拝者を増やし、皆の信仰心を高める必要があるのじゃ』

「あたいにも何かお手伝いが出来ればよいのですが……」


『そうじゃのぉ……例えばお主がこの神社にお参りしてくれれば、それを見た人間たちがきっとわらわのご利益りやくを信じ、敬うようになると思うのじゃが』

「そ、そんな簡単にいきますかね。ところでご利益りやくって?」


『ふむ、わらわは五穀豊穣ごこくほうじょうのほか、復縁ふくえんのご利益りやくを授けられるのじゃ』

復縁ふくえん?」

『そうじゃの、例えばお主が誰かと喧嘩して仲たがいし、もう一度仲直りしたいと思ったとしよう。そんな時にわらわの神通力じんずうりきでお互いの仲を修復出来るのじゃ』


「へーっ、ヒメ神様はすごいんですね……うんっ?」

 あたいは仲たがいした二人の仲を修復出来るという言葉がとても気になった。


「それって……例えばあそこにいる二人にも当てはまりますかね?」

 あたいは境内を散策している陸くんと陽菜のことをヒメ神様に聞いた。


『疎遠になった者同士か……最終的には二人の意思の問題じゃが、わらわが強制力を働かせることは出来るぞ』

「それはすごいです‼ ぜひともあたいに協力させてください」


 あたいは陽菜と仲直りしたい陸くんを応援するため、ヒメ神様をお手伝いすることにした。


『そうかそうか、ありがとの。ほれ、お主の飼い主がやっているのを真似てみやれ』


 見ると陸くんと陽菜の二人が賽銭箱に小銭を入れ、拝殿に向かって二回おじぎしてから、二回手をたたき、最後におじぎを一回していた。


『あれは”二拝二拍手一拝”という作法じゃ。もちろん真剣な気持ちを込めてやるのじゃぞ』

「なるほど……じゃあ、あたいも真似てみますね!」


 あたいはお座り姿勢になり、まずは二回頭を下げ、それから両方の前足を上げ、出来るだけ揃えるポーズを取りながら二回足元の石畳に向けて両足をゆっくり振り下ろし、肉球でポンポンと叩く。最後にもう一度頭を下げてお参り終了。


「「ええっ、も、ももちゃん、なんでお参りが出来るの⁇」」


 陸くんと陽菜があたいの”お参り”を見て絶句している。そりゃそうだよね。普通のわんこがいきなりこんなこと出来る訳がないもの。

 

 何とか二人を誤魔化しつつ、ヒメ神様と毎日散歩の途中でこちらの神社に立ち寄ることを約束し、今日のところはさよならする。でも帰り際にヒメ神様があたいに気になることを言ってきた。


『ところで……ももよ、お主はなぜ自分がこの世に転生できたのか、知っているのかぇ』

「えぇ、神様からは今世で善行を積んでくるように言われているんです」

『普通はそんな理由だけで転生は出来んぞ』


 ヒメ神様はそう断言した。あたいも確かに不思議に思うが、きっと神様には神様なりの理由があるのだろう。


「もしかしてヒメ神様はその理由をご存知なのですか?」

『うーむ、この件でわらわがお主に伝えることはない……が、一つだけ、このまま善行を積んでいくことがきっとお主のためになるだろう』


 ヒメ神様は意味深に言葉を濁した。

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