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うちのもふもふが恋のキューピットだった件  作者: あっくん
第一章 幼馴染の恋が成就するまで
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第二話 新しい飼い主が決まりました

 あたいが産まれてから、だいたい四十六回ほど(最初は目が開かなかったので曖昧だけど)日が昇ったある日。


 季節はすっかり夏。強い陽射しにじりじり焼かれ、今は弟犬たちと一緒に”透明な冷たい何か”に乗っかって、避暑しています。あー涼しい~~。


 弟は赤毛と黒毛が一匹ずつ。ちなみにあたいは黒毛なので、余計に陽射しが暑い気がする。


 母ちゃん犬のお乳は既に卒業し、今のご飯は朝昼夕にカリカリを少しずつ食べている。


 これは前世でも食べていたけど、種類が違うのか、少し大きめな粒。でも、出されたものはすぐに完食するぐらい、食欲旺盛になっているので、ガツガツ頂く。


 最初はカリカリをふやかしてから食べていたけど、今はそのまま食べても問題ない。今の飼い主の会話を”人語理解”スキルで聞いてみたら、特に幼犬期は体の成長にエネルギーを消費するので、ともかくお腹が減るものらしい。


 前世の体型との大きな違いは、”差し尾”が”巻き尾”に変わったこと。


 感情表現するのには差し尾の方が分かりやすいのだが、巻き尾が体にぴったり付くほど巻かれており、なかなか尻尾が振れないのよ。まぁ成長すれば尻尾も大きくなるか……。


 あとは黒毛の色。前世では黒々していたけど、今世ではいぶしたような黒色。


 あたいとしてはこちらの色の方が似合っていると思う。ちなみに父ちゃんは黒毛の柴犬、母ちゃんは赤毛の柴犬だ。


 今日は母ちゃん犬と離され、お外のサークルで弟犬たちと遊んでいる。


 あたいは前世の反省もあり、今世ではどの程度の力であれば甘噛みしても大丈夫かを弟たちと一緒に学んでいるところ。神様のお蔭で、姉弟犬の中では一番自己主張が強いのかもしれない。


◆◆◆


 お日様が真上になった頃、一台の車が駐車場に停まった。


 大きな車からは大人の男性と女性、それに男の子と女の子の四名が出てきた。男の人が飼い主に挨拶している。 


「まぁまぁ、新田にったさん、初めまして。遠いところをわざわざありがとうございます。お子さんたちは気分が悪いようですが、大丈夫ですか?」


「いえいえ、おかまいなく。山を二つほど越えてきたので、少し車酔いしただけです。さっそく子犬を見せていただけますか」


 今の飼い主さんがお客さんにあたいたちを紹介する。


「今回は柴犬が三匹産まれて、黒二匹と赤一匹です。黒一匹はメスで後はオスです」


 話を聞いていると、男の人が「下の子のじょーそーきょういくのため」と言っていた。見るからに優しそうな家族なので、何とかあたいを家族の一員として迎えてもらえないかな。


 しばらく飼い主(”ぶりーだー”って言うらしい)から説明を受けた後、手に何かをシュッシュしてから、子供たちがあたいたちを触り始めた。

 

 女の子は弟犬二匹を一緒に抱いて、もふもふ感を楽しんでいるようだ。


「うふふ。お母さん、私この子が気に入っちゃった。メスの黒ちゃんは全然笑わないから苦手かも~~」

 どうやら女の子は弟犬のうち、赤毛の末っ子を気に入ったようだ。


 そこで男の子と目が合う。先ほどの話だと、”しょーがくせい”らしい。


 これはあたいの勘だけど、この子からはあたいと同じ匂いがする。そう、”ぼっち”くんの匂いが。あたいは男の子の顔をペロペロ舐めながら、猛烈にアピール。


「キューン、キューン(あたいを家族にして!)」

 

「母さん、俺はこっちの犬がいい」

 男の子はあたいを抱えながら、遠慮がちにそう言った。


「えーっ⁉ 私はこっちの犬がいいよぉ‼」

 女の子が反対する。


 お母さんは少し迷いながらも、結局男の子の意見を採用したらしい。


「分かったわ。普段自己主張しないあなたがそこまで言うのなら、そっちの子にしなさい。お父さんもそれで良い?」

「そうだなぁ……。りくがそこまで言うのならそれでいいんじゃないか」


 妹は少し不満気だったが、あたいがペロペロ顔を舐めたら諦めたみたい。


「まぁ、ご購入ありがとうございます。引き取りについてはあと十日ほどかかるので、少しお待ちください。血統書の登録を行いますが、名前はどうしますか?」


「そうだなぁ……。せっかくだから陸、お前が決めなさい」


 男の子は思案顔になったが、意を決して……。


「”もも”がいいと思う。この子のお尻は丸っとしているし、ちょうど桃の収穫時期だから……」

「”もも”か……。うん、それじゃあそうしよう。黒毛の子だから黒桃号でいいか」


「分かりました。それではその名前で登録しますね」

 飼いぶりーだーは購入が決まったのでホクホク顔だ。


「引き取りできる日になったら改めてお伺いします」

「ええ、お待ちしています。そういえばこの近くの川に鮎のやながあるんですよ。時間があれば是非寄ってってください」

「おぉ、それはいいですね! せっかくなので帰りに寄ってみますよ」


 そう言って新田家のみんなは帰って行った。


☆☆☆


 次にあの子に会えるのはいつだろうか? あたいは男の子に感謝しつつ少し心配になったが、さっきの話だともう一度会えるのは間違いないはず……。


 これが今世であたいの生涯の飼い主となる、新田にったりくくんとの初めての出会いだった。

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