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泥土に咲く花  作者: りゅ氏
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番外編 ある日の誕生日

こんにちわ。陽菜です。

もうすぐお兄ちゃんの誕生日なので、ドッキリを仕掛けたいと思ってます。

お兄ちゃんには散々泣かされてきたので、お兄ちゃんを泣かせてみたいです。

でもやり方が良く分からないので、考え中です。


「ねぇ、お兄ちゃんって欲しいものあるの?」

「んー?欲しいものか、家かな?」


今の陽菜には無理です。お兄ちゃんってなんか子供っぽくないです。


「もー、そういうのじゃなくて、今欲しいものとか」

「今は、そうだな、軽くお腹空いたからおにぎりが食べたい」


お兄ちゃんって物欲が無いんでしょうか?これじゃ何も出来ないです。

かと言って誕生日のプレゼントを聞いたらドッキリにならないし…。


「あ!分かった、なるほどぉ」


お兄ちゃん分かっちゃったぞぉ、って感じで陽菜を見つめてきます。思わず抓りたくなる顔ですけど、バレちゃったんでしょうか?


「本当は陽菜が欲しいものあるんだろ?何が欲しいんだ?」


…お兄ちゃん、何でも陽菜の事考えてくれるのは嬉しいですけどたまには自分の事も考えてほしいです。


「もう良い、お出掛けしよっ」

「また公園にでも行くか?」

「うん、行こう!」


何はともあれお兄ちゃんとのお出掛けは楽しいです。陽菜は当初の目的も忘れてお出掛けの準備をします。

もちろんお兄ちゃんから貰った大切な髪留めは必ず着けていきます。

そして二人で手をつなぎながら公園のベンチに座ってゆっくりしたり、時にはブランコ等も乗ってます。

でも陽菜達が行く時は大体遊具は埋まってるので、ベンチで日向ぼっこしてることが多いです。


陽菜はこの時間がとても好きです。嫌でも意識させられる街の喧騒にお兄ちゃんと二人きり。

どんな事があってもお兄ちゃんが居てくれて守ってくれる安心感に包まれます。


時々お兄ちゃんの方を見ると、親子が遊んでるのを優しそうな目で見ています。

お兄ちゃんはやっぱり家族が欲しいんだと思います。陽菜が居るのに、何か足りない?

無い頭を一生懸命振り絞ってやっと結論がでました。

そっか!簡単な事だった!これはお兄ちゃんの誕生日が待ち遠しいです。




誕生日の前日、陽菜は静音さんことママさんに頼んでケーキを買ってきてもらいました。一応施設でもバースデーカードは貰えるのですが、やっぱりちゃんとお祝いしたいです。

プレゼントはバッチリです。お兄ちゃんは必ず喜ぶと思います。


「陽菜ちゃん、買ってきたわよ、おまけしておいたから、他の人には内緒よ?」

「わあ、ママさんありがとうっ」


ママさんから受け取って中を確認してみると、美味しそうなケーキが四つも入っていました。

ありがとう、ママさん。


そして部屋に持って行き、洗面台の下に隠しました。ドライアイスが入ってるのでまだ持つと思います。

後は0時ちょうどにお祝いするのです。陽菜はきっと寝たら起きれないので先に少し寝る事にしました。


途中目が覚めて周りを見るとお兄ちゃんが隣で寝てました。お兄ちゃんと寝るのは大好きです。

温かいものに包まれてる感じがします。

時間を見ると丁度0時になる少し前でした。

危なかったです。陽菜は起き上がって、念のためケーキの入ってる箱を開けて匂いを嗅いでみました。

凄く甘い匂いが陽菜をくすぐります。

後は時間になるのを待つだけです。


3.2.1…


「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう!」

「んっ・・・・えっ、うわあ」


恐らく寝ぼけてるであろうお兄ちゃんの上に飛び乗ります。


「ひ、陽菜どうしたんだ、まだ夜中じゃないか」

「今日はお兄ちゃんの誕生日だよ、はい、ケーキも用意したんだよ!」

「え、陽菜、、、ありがとう…」


お兄ちゃんは目をうるうるとさせてます。でもプレゼントはこれからです。これがトドメとなって泣いてくれるはずです。


「それでね、お兄ちゃんにはプレゼントがあるの」

「陽菜が俺に…?凄く嬉しいんだけど」

「あのね、お兄ちゃんの子供を作ってあげるの!」

「…はい?」


お兄ちゃんが物凄く驚いた顔をしています。ふふん、やっぱりお兄ちゃんは嬉しいに違いない!


「ね、早く子供作ろ」

「お、おい、陽菜、子供作るって…ええええっ」


子供の作り方はよくわからないけど、お兄ちゃんなら知ってるはず。


「いや、それは、まずいよ、その…」

「どうして?喜んでくれないの?お兄ちゃん子供作ろうよ、ねえ」


陽菜はお兄ちゃんの上に乗っかったまま身体を揺すります。ここで嫌だなんて言われるとは思わなかったです。


「お兄ちゃん!ねえ、子供!子供作ろ?お兄ちゃんの子供欲しいなっ」


そういうと顔を真っ赤にしてるお兄ちゃんを見てなんだか陽菜も恥ずかしくなってきました。


「お、おい、急に黙るなって…」

「だって、お兄ちゃん、顔真っ赤なんだもん、なんだか陽菜も恥ずかしくなってきちゃって…」


なんとなく気まずい流れを感じます。陽菜はもしかしていけない事を言ったのでしょうか?


「あのな、えっと、子供は大人にならないと作れないんだ」

「そうなの?お兄ちゃんは大人みたいだよ」

「ええっと、俺はまだ子供だし、それに陽菜も大人にならないと駄目なの!」


なんだ、作るのはだいぶ先になるのかな、プレゼント用意できたと思ったのに、残念です。


「そっかぁ、じゃあ陽菜が大人になるまで待ってね」

「う、うん、まぁ、大人になったらな…」


なんだか難しい顔しています。これ以上問題が何かあるんでしょうか。


「でもお兄ちゃんは出会った頃から大人っぽかったよね」

「あ、あぁ、、そうだな…これは俺と陽菜がまだ会う前の話なんだが」

「駄目ッ!」


陽菜はお兄ちゃんの口を手で塞ぎました。


「今そっち側で回想に入ろうとしたでしょ?そういうのは陽菜が居なくなってからやって」

「おいおい、なんか言ってはいけない発言してないか…?」


なんとか回想に入ろうとするお兄ちゃんを阻止しました。

今は陽菜がいるんだから陽菜だけを見て構ってほしいです。


「大体な、陽菜が居なくなるなんてあるわけないだろ…」

「……」

「あるわけないよな?え?不安になるから無言はやめてくれ!」


慌てるお兄ちゃんを見て陽菜はもっと虐めたくなっちゃいます。


「さ、お兄ちゃん、バレないようにケーキ食べよ?」

「無言のままですか!」


納得がいかないって顔してましたけど、ケーキを食べると美味しそうに食べてくれました。

結局泣かせる事は出来ませんでした。でも、お兄ちゃんが嬉しいと陽菜もとっても幸せです。お兄ちゃんにももっと幸せになってほしいです。

陽菜はお兄ちゃんの為ならきっと何でもできると思います。

例え陽菜が居なくなったとしても…。


わたしはあの約束をずっと待っています──

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