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Arseare ~創魔の術師が行なう魔術観光~  作者: 柿の種
第2章 精鋭達の夢の跡にて

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Chapter2 - Episode 8

2話更新、2話目


暫くして、扉の向こうから聞こえてきていた音が収まった。

だが流石にすぐに開けるような真似はせず、先に【血狐】を扉の隙間から通路側に移動させ、安全の確認、あるいは確保をしてもらう。

問題がなさそうだったため、恐る恐る扉を開いてみると。


焼き焦げた壁や床、砕けた岩、鉄製の矢が複数壁に突き刺さっていたり、何かの液体が水たまりのように床の一部に溜まっている。

唯一灯りだけは非破壊オブジェクトなのか、こんな惨状にありながら傷1つついていなかった。


「……うわ、糸とか全部なくなってるじゃん」


ルインズパペットの姿が見えなかったものの、この惨状だ。

恐らくは罠によってHPを全損、そのまま消えていったのだろう。

私が手を出したわけではないため、ドロップアイテムも貰えていないし、本当に何だったんだと溜息を吐いた。


だが、ルインズパペットという存在のおかげでこのダンジョンの攻略法と言うべき外道な方法を1つ思いついてしまった。

私は『白霧の狐面』を使い、更に霧を発生させながらその準備をし始める。


「うん、通路も今見えてる所までは安全そうだし……やれるかな。【衝撃伝達】」


私は【衝撃伝達】を発動させる。

といっても、このまままっすぐ前に突き進むために使うわけじゃあない。

しっかりと後ろ……最初の部屋の扉が開いているのを確認してから、私は大きく息を吸い込んだ。

思い出すは、【平原】でのあの事件。


「【挑発】ッ!!」


出来る限りの声量で、私は【挑発】を発動させた。

まるで山彦でもしているように、私の声は響きダンジョンの奥へと伝わっていく。

【挑発】……結局、普段はあまり使わないこの魔術は、私の声が聞こえるならば(・・・・・・・)全ての対象をターゲットに出来る。

これまで私が戦ってきたフィールドは全てが全て屋外。拡声器のような魔術があれば別ではあるが、そんな魔術を創れるような素材も敵性モブも見つけていなかったため、そこまで出番もなかったのだが……今回の戦場である『蝕み罠の遺跡』は違う。


音が響くのならば、同じ音である声も響く。

声が響くのならば、通常よりも遠くまで伝わる。

遠くまで伝わるのならば?


「うわっ予想以上!?」


ドドドドドドという何かが近づいてくる音と共に聞こえてくる、複数の爆発音や破壊音。

そして薄暗い通路の先、暗闇からこちらへと近づいてくるのは……大量のルインズパペットと、蝙蝠、蜘蛛の3種のモブとその背中を追いかけるように迫ってきている大量の罠達だった。


私は少し慌てながら【血狐】と共に最初の部屋へと戻ろうと地を蹴った。

瞬間、床に衝撃波が伝わって私の身体を一気に加速させる。

なんとか姿勢を制御して、最初の部屋へと飛び込むように入った私は、【血狐】を待たずにそのまま扉を閉める。

【血狐】はその閉まった扉の隙間からこちらへと入り込んできたため問題ない。


私が思いついた外道な方法。

思えば本当にこれは外道なのかと思うが、まぁそれはいい。

簡単に説明すれば、敵性モブを使って漢解除……所謂『罠に掛かって解除する』という方法をとっただけなのだ。


罠が大量に存在しているのならば、その分呼び寄せる相手も大量にすればいい。

罠が敵性モブ……ルインズパペットを倒しているのは確認しているため、呼び寄せたモブがそのまま最初の部屋付近に屯する事にもならないため、効果的な攻略法ではないか?と考えたのだ。

唯一の欠点としては、私が直接ダメージを与えて倒しているわけではないため、ドロップアイテムも経験値も貰えないことだろうか。


数分後、静かになった通路側を確認すべく【血狐】を先行させる。

すると、だ。


【『遺跡蜘蛛の足』、『遺跡蜘蛛の糸』を入手しました】


どうやら『遺跡蜘蛛』……ルインズパペットと同じように命名されているのならばルインズスパイダー?が残っていたらしく、そのドロップアイテムと少量の経験値を入手することが出来た。

流石に大量に集まりすぎたらしく、罠で倒しきれなかったのだろう。

【血狐】が戻ってきたため、扉を開き私自身の目でも確認する。


先程以上に散らかっている惨状を半笑いで見ながらも、私は少しずつ少しずつ前へと進んでいく。

もしかしたら私は『蝕み罠』という特性のダンジョンの攻略法を1つ見つけてしまったのかもしれない。

少しだけ嬉しくなりながら、そのまま先へと進もうとして立ち止まる。

この先の通路は灯り自体がないのか、暗闇だ。薄暗いというレベルではない。


通路の脇に吊り下げられているランタンは取れるのだろうか?と思い、手で触れてみると……案外簡単に取り外すことが出来た。

……アレ?これダンジョンの外に持ちだせたら最強の盾にならない?

そんな考えが過るものの、流石にそこまで都合が良い代物ではないだろうと苦笑する。


兎にも角にも、私は『蝕み罠の遺跡』の探索を本格的に開始することが出来そうだった。

目指すは、とりあえずボスエリアへ。

道中にあるかもしれない宝箱や宝物庫には触らないことにした。

というのも、ダンジョンの特性が『遺跡』だけならば良かったのだが……流石に宝箱や宝物庫にも『蝕み罠』という特性の所為で罠が掛かっているかもしれないと考えると……探す労力、罠を解除する労力など、宝を得るという目的にはこのダンジョンは流石に適していないだろう。


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