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Arseare ~創魔の術師が行なう魔術観光~  作者: 柿の種
第6章 雷鳴轟く瘴気の大地にて

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Chapter6 - Episode 40


どのプレイヤーにとっても、不得意な距離、不得意な戦場、不得意な展開というものは存在する。

その逆で、得意なモノも存在するのだが、まぁ今は関係がない。

兎に角、不得意な場面というのは誰にでも存在しているのだ。


「【灰の剣】」


私はタップダンスを牡鹿相手に踊るかのように、灰色の部屋の中を移動する。

足を踏み鳴らし、指を鳴らし、そして手に生み出した灰で出来た剣を振るう。

私の出す音に合わせ、氷の荊が、炎の華が、土の獣が、風の武具が部屋を舞う。


だが、牡鹿の悪魔……フールフールはそれを意に解さぬかのように雷を、炎を、そして竜巻を、時に自らの身体をもって受け流す。

それは端から見れば、一種の舞踏の様に見えたことだろう。

しかしながら、それを行なっている私の精神は紙やすりで削られたように徐々に磨耗していっていた。


……厳しい、というよりは致命的に私とは場所も相手も合っていない……!

フールフールが現れた直後辺りから、灰色の部屋自体の縮尺がおかしくなっているのか、大きく動いた所で壁にぶつかるという事はない。

だが、しかし。

そもそも私という、灰被りというプレイヤーは真正面から戦う事が得意というわけではないのだ。


よーいドンで始まる決闘などのコンテンツ、PvPなどには手を出す事は滅多になく。

PvE、それも自分の戦う位置は中後衛という、前線からは一歩離れた位置から支援や遠距離攻撃を続け勝利を得る。それが私の戦い方だ。

間違ってもボス個体と真正面から戦うようなストロングスタイルではない。


「……Arseareで結構慣れてきたつもりでしたけど……ッ!」


フールフールがこちらへと突進してきたのを紙一重で避けつつ、その身体に対して【灰の剣】を添わせることで撫で斬りにしようとするものの。物理的な耐性が高いのか、刃は皮膚に弾かれ肉まで到達することはなかった。

逆に私がフールフールの勢いに押され、身体が大きく開く形になってしまったほどだ。

……まずっ?!

咄嗟に緊急離脱用のアイテムを使用し、少し離れた位置へと瞬時に移動するものの。

先ほどから似たような事を繰り返しているために、そろそろそのアイテム自体の在庫が尽きてしまいそうになっている。


ジリ貧だ。

手持ちの、すぐに使えるような魔術ではフールフールには歯が立たない。

だからといって、詠唱が必要な【灰の女王】などの魔術を使おうとすれば、今のように突進などの対処が必要な攻撃を仕掛けてくるため、中断せざるを得ない。


「これ死に戻りした方が早いのでは……?」


そんな考えが浮かぶ程度には、私と目の前の牡鹿の悪魔は相性が悪い。

そもそも普段のプレイですら、相性の悪いダンジョンボスなどに出会ったら若干諦めが入るのだ。それなのに、今回は対策すらさせてもらえない突発戦。

しかもソロでの攻略を強いられているのだから、私のやる気はどんどん下がっていっている。

これが転移した直後、フィッシュなどの知り合いが近くに居る状況だったら……と考えずにはいられない。


「よし、死にますか」


覚悟が決まれば行動は早かった。

私はフールフールがこちらの事を無言で見つめているのを不思議に思いつつも、灰で出来た剣を自らの首筋に当て、そして横に引く。

元々が切る、というよりは高速で剣状に移動しつづける灰によって切削する代物だ。

その所為か、強い衝撃と共に頭部を強制的に左右に振られ続け……最終的に私の視界は床へと落ちた。

これで、この不毛な戦いが終わると信じて……視界が暗くなる。





『――逃がすと思うか?』


視界が回復し、私の目に映ったのは。

自死する前に居た灰の部屋だった。


すいません、いつもより短いですがキリが良かったので

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