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Arseare ~創魔の術師が行なう魔術観光~  作者: 柿の種
第5章 記憶残る白霧の先にて

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Chapter5 - Episode 15

み じ か め


身体が軽い。

否、軽く感じているだけで先程までと力の総量などは変わっていない。

しかしながらそう感じるのは単に霧が使えるようになったからだろう。


霧を使える。

霧に関係する魔術を使う事ができる。

それだけで私の身体は今まで以上の性能を引き出す事ができる。


今までとは比べ物にならない速さで近づき、比べ物にならない膂力で蹴りつける。

その速度についてこれない相手は、それだけで砕かれ散っていく。

単純に視線で私の事を追おうにも、白い壁のように発生し続けている濃霧は視界を塞ぐ。

例え視界に頼らず、此方の動きが読まれていようとも、非実体の羽によって動きを強制的に封じられ隙が生じる。


一度封じられたからこそ実感する事ができる有り難さ。

それを感じ、そして笑いながら私は『酷使の隷属者』に向かって蹴りを放った。

【血狐】を纏った脚が、衝撃波を散らしながら骨の身体を吹き飛ばす。

瞬間、足を踏み鳴らし吹き飛ぶ相手の背後に回り込みその身体を羽交い締めにした。


そこから先は単純だ。

どんなに骨の身体が頑丈であろうとも、結局は骨。

肉がある人間と違い動かなくするだけならば、曲がらない方向へと力の限り曲げてやれば良いのだから。

折る必要はない。

曲げればその分だけ動きは鈍り、無理な動きをしようものなら負荷が掛かって自壊する。


それが例え魔術の存在する世界の骸骨であろうと同じ事。


「ふふっ、これだけ近ければ自慢の剣も使えないよね?」


答えが返ってくることに期待しての問いではなく。単純に確認としてそう言い放つ。

人間の骨を使っている以上、膂力などは分からないが動きは人間範疇内に抑えられてしまう。

これが私の知らない幻想的な生物だったり、人の形をした何かだった場合はこんな戦法は使えないのだが……今回は正しく『見た目通り』のため問題はなかった。


私の身体を振りほどこうと暴れる『酷使の隷属者』を、力づくで抑え込み。

私はそのまままず片腕を……右腕側の骨を曲げ折っていく。

再度言うが、相手は骨。

生物ならば首を折ってしまえば簡単に殺す事は出来るのだろうが、非生物。

だからこそ、頭などを狙う前に動けないようにするのが先決だ。


ギシギシという音が霧の立ち込める氷の檻の中に木霊し、最終的にはボキンというコミカルな音と共に腕が折れる。


「はい一本」


淡々とそう告げつつ、私は左腕、左足、右足と次々に力を加え砕いていく。

一応、折った腕や足は遠くに……RTBNが居る方向へと投げておいた。

私よりも対多への適応能力が高い彼女ならば何が起きても問題ないだろうからだ。


「……うん、HPは順調に減ってるねっと」


そして達磨状態となったボスをその場に放りだし、こちらを睨むように見つめてくる頭蓋骨を【衝撃伝達】を発動させた足で踏み砕いた。


【『隷骨王の王冠』、『隷骨王の鉄球』、『隷骨王の骨』×3を入手しました】




その後の展開は早かった。

私がボスと近接戦を行っている間、どうやらRTBNは馬型の移動用ホムンクルスを準備してくれていたようで。

私とRTBNはそれに乗り、『惑い霧の森』へと向かう事となった。

道中、ダンジョン系について書かれた掲示板を漁り、情報を得ようにも似たような事を書いている所は……他に無い。


これは『惑い霧の森』だけが難度上昇しているのか、それとも他のダンジョン管理者が気が付いていないだけなのかによって、対応が変わってくる。

一応、掲示板の方には私自ら難度の不自然な上昇が他でも起きてないかを確かめてほしい旨を書き込んでおいた。


あとは、だ。


「本当に行くの……?」

「ここまで来たんだし、出来れば人海戦術で手伝ってもらえると助かるんだけど」

「確かにそれはそうなんだけどさぁ……えぇ……?」


何故か私が灰被りから貰ったメッセージの詳細を改めて聞いた途端、行きたくないと駄々をこね始めた馬主の機嫌をとることから始めようか。


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