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美人ぎらい

職員室から出た恵太を待っていた侑斗は、ちょうど、カバンからガムを取り出して、口に放り込んだところだった。


「おっまえなー、なんであんな断り方するんだよ? 断り方にも、もう少しなんかあるだろ?」


「おまえは、女のことを何もわかってない。ああいう、私可愛いでしょ?みたいな、自分に自信持ってる女に、まともな奴は一人もいない」


「そ、その辺はよくわかんないけど…。 それにしても、河野さんに失礼だよ。話してみたらいい子かもしれないし」


「お前のことを、うるせーよ、気安く話しかけてんじゃねぇよ、雑魚がって目で見たあの女がいい子? お前、どんだけ人がいいんだよ? こっちがびっくりするわ」


侑斗が忌々しそうに吐き出す。


やっぱり侑斗もそう思ったか。確かに、河野さんの目は、間違いなくそう言ってた。


「だけど、お前、クラスでの俺の立場も考えてくれ…」


侑斗はちょっと気の毒そうな顔をしたが、返答のないところを見ると、今後、改めようという気はないらしい。


ひきつづき、侑斗が持論を展開する。


「まー、お前、あれだ。 顔のいい女にろくな奴はいない。顔のいい女にだけは、絶対に引っかかるなよ、恵太」


恵太が親の転勤で地元を離れていた中学の三年間に、この友人に一体何があったのだろう。

確か、小学校の頃も女にモテて迷惑そうにしていたが、ここまで酷くはなかった気がする。


「お、安田さん、今日、ありがとな。また明日な」


下駄箱を出たところで侑斗が声をかけたのは、絵に描いたような地味系女子。恵太の訝しげな目線に気づいて侑斗が返す。


「隣のクラスの安田さん。今日、電子辞書借りた。お前、体育でいなかったし」


声をかけられた地味系女子、安田さんは、会釈だけして足早に去っていく。そそくさと去っていく安田さんの気持ちが、恵太にはわかる。

自分と違う人種だと思っている侑斗に、気さくに話しかけられて、どうしていいかわからなくなったんだ。


普通の女子には失礼な態度もとっていないみたいだし、侑斗が女の全てを嫌っているという訳ではない。綺麗どころの女子以外には、普通に接するし、世話になったら地味系女子の名前もちゃんと覚える。


だけど、綺麗な女子には、容赦なく厳しい。


離れていく安田さんの背中を眺めながら、恵太がこっちにいなかった3年半の間に、一体侑斗に何があったのか、調べてみなければとぼんやり思った。

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