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弓道場の出会い
頭のはるか上を越え、ボールが植え込みの中へ転がり込んだ。
「すまん!」
友達に謝られ、恵太は軽く片手をあげた。
「いいよ。取ってくる」
恵太は、植え込みの中へ分け入った。
ボールが転がった辺りに目星をつけ、身をかがめながら進む。ボールはフェンスぎわに落ちていた。
恵太はボールを持ち上げて、先ほどまで通ってきた植え込みとフェンスの隙間で体を伸ばした。
瞬間、目の前を、ヒュンッと何かが横切って、スパッと的に突き刺さった。
…そっか、ここ、弓道場か。
恵太は、射手を見た。
射手は次の矢をつがえ始めている。
黒い髪を後ろで一つにまとめた、凛とした佇まいの女子。
…弓が似合う人だな。
ぼんやりと眺めていると、戻らない恵太を心配して、友達がガサガサと植え込みをかき分けてやってきた。
「恵太!ボール、見つかったか?」
「あったよ。今から戻る」
答えてから、恵太はもう一度弓道場へ目をやった。
射手が恵太を見ていた。
邪魔しちゃったかなと恵太が思ったその時、弓が射手の手から放れた。
弓は、的を大きく外れて飛んで行った。