1/RUNNING LIGHT
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暗い。
ただただ暗い。
だけど明るい。
限りなく明るい。
もしかしたら、どちらでもなくて、何もないのかもしれない。
何も見えないし、匂いも音もない。
そもそも俺の体がないみたいな…
だから何もわからたないのも当たり前…かな?
でもその中でただ一つ、肌に触れる何かの感触。空気みたいな、そこにあってもないような肌触り。
それだけが唯一、俺に教えてくれた。
落ちていることを。
俺は離れている。
でも、近づいてる。
離れちゃいけないものから離れて、近づきたくないものに近づいてる。
離れて行くに連れて、見えていない目に何かが映る。それは、小学校の入学式。真新しいランドセルを背負った俺がこっちを見ている。しばらくすると、今度は友達とサッカーをしている俺、先生に怒られている俺、卒業式の正装を着ている俺。そうして俺はどんどん増えていく。服装も年齢もバラバラだけど、皆して俺を見ている。
まるで、哀れむのように。
なんだよこれ。人の記憶をヅラヅラと並べやがって。
これじゃまるで走馬灯みたい…
『走馬灯』…みたい…?
あぁ、そういえばそうだったっけ。
走馬灯『みたい』じゃないや。
本物だ。
俺、死んだんだっけ。
だったら説明がつく。
明るいのも、暗いのも。
目が見えないのも、何も感じないのも。
じゃあ何に近づいて、何から離れてるんだ?
死んでるんだとしたら…
あ、あの世とこの世か。
どうりで近づきたくないわけだ。
あれ…?俺…なんで死んだんだ?
ていうか、俺って誰だっけ
…思い出せないや。
まぁいいか。どうせこの後は天に昇って裁かれて、どのみち転生するだけだろうしな…
ゆっくり待つとしよう。
走馬灯も、もう少しあるしな…
一生に一度のこの感覚を楽しんで…
あれ…? もう…一生は終わった…のか…。