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Prolog
白いレースのカーテンを通して、柔らかくなった光の筋が窓から差し込み、部屋を照らす。
綺麗に磨かれた木製の床に、整頓されたアンティーク調の机。
その隣の本棚には、上から下までこれでもかと言う程、大きさや分厚さの違う様々な本が詰まっている。
「ん……」
本棚の正面。少々小振りなベッドの上で寝返りを打つと、窓からの光を瞼に受けた少女は目を覚ました。
くあと欠伸を一つし、眠たげに垂れる目を擦りながら起き上がると、レースのカーテンを掻き分けながら窓の鍵を外して、窓を左右に開いた。
窓ガラスとカーテンに吸い取られ、弱まっていた光が本来の輝きを纏って少女に降り注ぐ。
青々として澄み切った空から送られる、心地の良い風は、部屋に溜まっていた昨日の夜の空気を一掃した。
目を閉じて、小さく深呼吸。
うん、朝だ。
そして確かめる様にそっと目を開き、日光を遮るように手を眼前に翳し、にっこりと笑うと、窓はそのままに、綿で出来た緩いロングワンピースの裾をひらつかせて部屋を出た。