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星脈と三種の超越者について

【星脈】

 ルミナスが創り上げた、宇宙の星々を網の目のように結ぶ全宇宙規模のシステムのこと。まるで脈のように流れを打っていることから、フェバルを始めとした人々はこれを星脈と呼ぶ。脈の内側では、黒い宇宙空間のような場所が広がり、淡く白いものがふわふわと漂っている。

 フェバルとなる運命を持つ者が初めて異世界へと流れ渡るとき、その者をフェバルに相応しい力を持つ肉体に作り替える。不規則な周期で脈動し、フェバルを次の異世界へと誘う。

 フェバルの力の源であり、極めて大きなエネルギーを持っている。「死んだ」フェバルが還っていく場所でもある。

 フェバルに旅をさせることで個々の星々にエネルギーを循環してムラを緩和する役割も果たしている。だが星脈自体の持つエネルギーがあまりに強大であるために、星脈自体が歪みや淀みの温床となってしまうケースもある。

 星脈システムの真の役割は、ルミナスが創造した宇宙の適切な維持・管理と、次の宇宙の核となることである。

 ビッグバンによって展開された宇宙は、フェバルを通じて星脈へと情報の収集が進められる。そして創造された宇宙の不完全性ゆえにいずれ必ず迎えてしまう決定的な破裂の前に、宇宙全域に網目を張る星脈を手繰り寄せることで、宇宙を畳んでしまう。

 そして、最後には一点に潰れる――ビッグクランチが引き起こされる。その後、再び宇宙はビッグバンにより展開される。

 この一連の流れの繰り返しにより、宇宙は定常的に維持されることになる。


【三種の超越者】

 およそ世界に属するほとんどすべてのものは、その世界の許容性の支配下にある。「人」は「人」としての理の下にあり、通常は各世界が規定する「人」の限界を超えることはできない。

 だがごく稀に許容性限界を超えた力を持ってしまうものたちが存在する。彼らは三種の超越者に分かれる。

 一に、フェバル。

 一に、星級生命体。

 一に、異常生命体。


 フェバルが先にあるように思われるが、順番としては実は異常生命体が先である。以下で解説する。


【異常生命体】

 ルミナスの創造した宇宙は必ず不完全なものであるために、ごくごく稀に【運命】に従わない超越的な存在が発生する。寿命で死ぬ者も多いが、中には寿命を超越して非常に強力な個体に成長する者もいる。ルミナスの【運命】の束縛下にない生命体を「彼女」は異常生命体と定義した。異常とはあくまでルミナスの視点から見たものである。

 異常生命体は潜在的に宇宙の定常状態を破壊する性質を持ち、現宇宙の永遠なる存続を望む「彼女」にとっては一番に排除すべき危険因子である。

【運命】に支配されていないため、異常生命体だけがルミナスを打ち破り、定常宇宙を終わらせる可能性を持つ。

 ルミナスは異常生命体を最も恐れており、アルに命じて徹底的に排除させている。再生した宇宙で復活を【運命】付けられてしまう者たちとは異なり、異常生命体に限っては、彼らが誕生した宇宙が終わるまでに殺してしまえば二度と復活することはないからである。

 宇宙の終わりまでに排除し切れなかった異常生命体は、星脈システムへと不可分に組み込まれてしまい、二度と単体で消滅させることが不可能なバグになる。

 だが星脈システムに組み込まれるということは、【運命】で操ることが可能になるということである。【運命】付ける過程で星脈の力を、すなわちルミナスの力を分け与えてしまうことになるが、代わりにルミナスを打ち倒す唯一の可能性である【運命】に囚われない性質を失わせることができる。「彼女」としてはやむを得ない措置であった。

 ルミナスとアルは異常生命体を可能な限り始末し、始末し切れなかった者は星脈システムに縛り付けることで【運命】を支配した。

 ルミナスによって【運命】付けられた異常生命体のことをフェバルという。フェバルは強力な能力を得る代償として星脈の奴隷となり、ルミナスに対抗する力を失うのである。

 ルミナスはアルを通じて宇宙を監視する体制を整えた。宇宙全域に張り巡らされた星脈と奴隷としたフェバルを利用し、さらにはダイラー星系列の一部などにも協力させて、異常生命体を徹底的に排除する仕組みを構築した。

 こうして、発生の初期こそ始末し切れなかった異常生命体の数、すなわちフェバルの数は増え続けたが、やがて異常生命体のすべては生まれたその宇宙で始末されるか、生まれる前に発見され、【運命】によって生まれないように改変された。

 唯一の例外として、ルミナスとアルの影響が著しく低下しているフェバル本編の周回においては、異常生命体が発生し、成長する土壌がまだ残されている。


【フェバル】

 星(世界)を渡る性質を持つ者たち。星脈に属する者。通常の人間が持たないような各人固有の特殊能力を持ち、その力はこの世の条理を覆すとまで言われる。だが実際はルミナスによって最も強く【運命】付けられた条理の奴隷である。

 フェバルの能力とは、星脈の力の一部を得たものである。星脈がルミナスの全身全霊によって創られたものであることから、創造主が持つ宇宙を管理するための万能に近い能力の一部を身に焼き付けられて得ることとなる。同時に副作用として常人より遥かに強力な肉体も得る。

 能力および肉体は宇宙周回のたびに再調整され、再度付与される。

 個々人の資質によって受け取れる力の種類はまったく変化する。一般に創造主によって強く【運命】付けられているほど、代償として強力な力を得る傾向がある。

 フェバルのすべては、元々異常生命体であった者をルミナスが【運命】によって無理やり縛り付けることによって生まれる。元々異常生命体として強力であるほど、支配下に置くために強く【運命】付けなければならず、その代償として能力も強力なものになるわけである。

 アルはルミナスの一のしもべとして最も強固に【運命】付けられているため、フェバルとして最も万能に近い最強の力を持つ。

 星海 ユウは元々強力な異常生命体であったが、ルミナスとアルを脅かした最大の敵として星脈システムに組み込まれ、強力に【運命】付けられている。代償としての能力のポテンシャルもまた凄まじいものとなる。

 フェバルは星脈という宇宙規模のシステムに属しているため、各世界の許容性の影響を受けにくい。各世界における人の限界を遥かに超越した身体能力諸々を常に持っている。通常の人間であれば高いレベルの気力と魔力を併せ持つことはできないのであるが、フェバルはそれが可能である。

 全員が共通して、決して成長も老いることもしない身体と、言語自動変換・自動翻訳能力、不死の性質と修復の性質を持つ。これもまた、ルミナスの性質の一部を受け継いだものである。

 不死の性質とは、正確に言えば、普通に死にはするのだが、死んだ際に次の異世界に飛ばされて、そこでは何事もなかったかのように蘇ってしまう性質のことである。

 修復の性質とは、旅を続けるに当たって重大な障害が、世界を渡る際に修復されてしまう性質のことである。肉体の損壊(手足の欠損など)や、精神の深刻な異常(発狂、廃人、植物状態など)は勝手に修復され、健常な状態に戻る。ただし、長い旅を続けることによって自然に摩耗した精神に関しては、この限りではない。

 フェバルが世界を渡るのは、強制的に次の世界へ流されるタイムリミット(各世界、各人ごとにランダム)が来るか、死ぬか、何らかの能力や手段を使って自分から移動したときである。

 フェバルは極めて長生きであるが、不老不死そのものではない。長い旅の果てに心をすり減らし、人としての心を維持できなくなったフェバルは「死ぬ」。星脈に存在を取り込まれ、肉体の自由を失って意識だけの存在となってしまう。そして宇宙が終わるそのときまで、ただ果てしない悪夢を見続けることになるのである。その後は宇宙再生の核として利用され、また同じフェバルとして生を受け、同じように覚醒し、また永遠の旅を繰り返すのだ。

 ルミナスはあえて修復の性質を限定的とした。そのようにしたのは、人としての精神の寿命という枠で彼らを縛ることによって、元は異常生命体であるフェバルをより安全に支配・管理できると考えたからである。あまりに長生きし過ぎたフェバルが際限なく力を増し、万が一にも【運命】の支配から逃れることを恐れた。

 実は、フェバルという名前は成立当初から存在していたわけではなく、ルミナスによる後付けである。そもそもルミナス自身、それまでは名前を持たなかった。

 ルミナスが初めて内宇宙に顕現し、地球と呼ばれる星に降り立ったときに、自らに「ルミナス」という名を与えた。世界に降臨したルミナスは実体を持たず、神々しい光球のようにしか見えないためにこのように名乗ったのである。

 同時に、彼らにも「フェバル」という名を与えた。

 すなわち、ルミナスとはLuminous(光を放つもの)であり、フェバルとはFated by Luminous(ルミナスによって【運命】付けられた)の意である。


【星級生命体】

 星を支配し、許容性のくびきからも解き放たれ、さらには一部フェバルの能力への抵抗を持つほどに極めて強力な個体であるが、【運命】には完全に従うカテゴリーの者たちを指す。ゆえにルミナスによって特別な対策が施されることはなく、繰り返される宇宙の中で同じ生と死と再生を繰り返すだけの、ルミナスから見れば一般人と何も変わらない「取るに足らない」存在である。

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