女の子……へ? 女の子?
友達と小説を書く条件を提示した結果、こういった作品が生まれました。
大体三つの条件をもとにして書いていくことになるので、こちらの更新は不定期です。(進化上等も不定期ですけど)
何とか完結までは持っていくので、こちらも読んでいただけると幸いです。
溥儀様鄰。それが僕の名前だ。
どこにでもいる、普通の男子中学生である。いや、高校に入学するからもう高校生かな。
今僕は地元の大きな病院の一室にいる。
なぜ、僕はこんなところにいるのだろうか。
さきほどから体を動かそうとするが、体が非常に重く、腕すらあげられない。
いったい何がどうなってこんなところにいるのだろう?
スゥー、という病院独特の扉を開く音と共に、誰かが入ってきた。
誰だろう?
眼は開いているのだが、いかんせんよく見えないので、誰が入ってきたのはわからない。
シルエットからして、おそらく女性だろう。誰かな?
突然、パリンッというガラスや陶器が割れる音がした。
「鄰? お、起きたの…………?」
この声はお母さんかな?
でも、なんでお母さんがここにいるの?
「鄰! 鄰! 良かった! 目が覚めて……本当に良かった」
お母さん、泣いてるの?
僕が何かしたのかな?
「はッ! こうしちゃいられない。すぐに知らせないと! 待っててね鄰。すぐに主治医の人を呼んでくるから!」
そういってパタパタと走り去っていった。
主治医ってことは、やっぱりどこかけがをしたのかな?
でも、どこで?
記憶の中をまさぐってみるが、一向にけがをした理由が見つからない。
入院しなければいけないほどのけがを負ったのならば流石に覚えているはずなのだが…………
そうやって色々考えていると、複数の足音が聞こえてきた。
「鄰君!」
そう大きな声で僕の名を呼ぶ人が来た。声からして男の人だと思うけど、僕こんな声の人の知り合いにいなかったはずなんだけどな?
「本当に目を覚ましたんだね! 何処か体に異常はないかい?」
僕はそう聞いてくる人のことをじっと見つめる。
相変わらずぼんやりとしか姿が見えないけれど、白っぽい服装の感じだしお母さんが主治医の人を呼んでくるって言ってたからたぶんお医者さんなんだろう。
「えっと……体が重たくて腕が上がらないのと、目が見えにくいです」
僕の言葉を聞いてお母さんが息をのんだ。主治医さんは険しい顔をしている。
「そうか……鄰君。君に大変重要な話がある」
主治医さんが改まった口調でそう言った。
「いいかい。君の体は男の子ではなく―――――
女の子になっている」
僕は主治医さんが言っていることの意味が分からなかった。
だってそうでしょ? 僕は確かに女顔で体つきも随分と華奢だとは言われるけれど、僕は医学的にも男性だと証明されているんだ。
それを全否定するようなことを言われて、はいそうですかと理解できるわけがない。
…………まあ理解したとしてもそれで納得できるかと言われればそうとはお思わないけれど。
僕は言葉を絞り出す。
「なにを、言っているんですか? 僕は男、ですよ……?」
「確かに信じられないかもしれない。でも、君は完全に女の子なんだよ。まだ体を越せるほど筋力が戻っていないから鏡とかの前に立てないけれど、どこからどう見ても、君は女の子なんだよ」
僕はお母さんの方を見る。
お母さんは涙を溜めながら、僕に頷き返してくる。
それで確信する。
……僕、本当に女の子になっちゃったんだ、と。
そう思うと自然と涙が溢れてくる。
今までの思い出が自然と頭の中を流れていく。
今までの自分はもういないのだということを、理解させられる。
そう思うと涙が止まらない。
中学生なってからは一度も泣いたことなどないのに、今の自分は泣いている。
それがとてもおかしくて。
僕はいまだ流れる涙を拭うこともしないまま、なぜ自分が女の子になったのかを聞くことにした。
「なんで、こんなことになってしまったんですか?」
僕の言葉を聞いた主治医さんは、驚いたような顔をした。
「君は覚えていないのかい? あのときのことを?」
あのとき? いったいなんのことだろうか?
「君は事故に遭ったんだよ。一ヶ月前にね」
事故。一ヶ月。
その言葉は、僕の心に重くのしかかる。
「事故の内容は、君が大型トラックにはねられそうになっていた子供を自分を身代わりに助けたことが原因だ」
「僕が、自分を犠牲にして子供を助けたんですか?」
僕はそのことに驚いた。僕自身そんなに他人を積極的に助けるような性格をしていないのに。
「ああ、ご家族も驚いていたよ。君がそんな行動に出たことにね。話を戻すけど、その事故で子供は助かったが君自身は大けがを負った。それこそ修復が不可能なほどのね」
「どんなけがだったんですか?」
「ざっくりまとめると、両手両足は完全につぶれて使い物にならず、脊椎がやられて半身不随。脳のダメージも相当大きく、ある程度の記憶や感情は問題なかったが五感を司る部分にダメージがあって視力の大幅な低下、というか片目がほぼ失明状態だ」
だが、と主治医さんは言葉を続ける。
「肉体は修復不可能だったものの、脳だけは生きている状態だった。だから、ご家族のご意見も交えた結果、このままの状態よりも、別の体に脳を移植するということを決断した」
それはつまり、脳を移植したということだろうか。
脳移植。だがそれはあまりにも―――――
「非人道すぎる、か? まあ、確かにその通りだろう。脳移植はかなりリスクの高い手術なうえに、死体に脳を入れ替えて生命を保持させるというまさに禁断の行いだ。もちろん、それに納得してくれる子なんていなかったよ。ただ一人を除いてね」
「その一人が、僕の体の主だった人ですか?」
「そうだ。彼女はここの病院の患者でね。脳に大きな障害を持っていた。手術をしても治る可能性は低く、手術自体の成功率も大幅に低い。そんな状態だった彼女が偶然、君のことを知ったそうだ。そして僕たちにこう言った」
「『もし、私の手術が失敗したら、この体を、あの男の子に渡してあげてください』とね。一体どういう思いでそんなことを言ったのかわからない。でも彼女のおかげで、君は生きることができるようになった。そのことを忘れないでくれ」
「そう、だったんですか」
僕はその一言だけを何とか絞り出して言った。
僕に体を預けてくれた少女。いったいどんな人物だったのだろうか。
今はもう知る方法はないけれど、一言でもお礼が言ったかった。
次は進化上等を書き上げたいと思います。
大体交代交代で書いていくので、気長に待っていてください