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T.T.O.T.T  作者: むこーむこ
Development:The snake which cannot cast its skin has to die.
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07 Anri Hiruma-比留間杏里-

 

 戦士科訓練生座学授業第二時限目。

 

「――MHOの主な特徴は二つ。答えられる者は?」


 戦士科訓練生教育官長、比留間杏里は粗末な黒板を指示棒で叩きながら二十名の生徒たちに訊ねる。


「さ、再生能力です!」


挙手と共に勢いよく起立したのは最前列の男子だった。


「そうだ。大よその再生速度は?」

「レベル五で二十五分、レベル一〇で二十二分、レベル十五で二十分です!」

「レベル二〇は?」

「十九分」

「いいだろう。座れ」

「はっ、はい! ありがとうございます」


 頭の後ろを掻きながら、照れくさそうに着席する男子。


「では他の生徒。もう一つは何だ」

「融合です」


 まるで軍人のように素早く立ち上がったのは、白いTシャツに短パンというラフな格好の女子生徒。顔は見えないが、短髪で肩幅が広く、背も高い。

腕相撲だったら確実に負けるな。彼女の後姿を最後列から眺めながら頼はそう思った。

女生徒が座ると、比留間は視線を全体に投げた。


「融合の特徴……この辺りは前回の試験範囲だったのもあり、記憶に新しいか。なら、ここは一つニューカマーに答えてもらうとしよう」


 比留間の一言で、生徒たちはちらりと後ろを見た。


「堂壁純一郎、倉井頼。どちらでもいい。融合の特徴は何だ?」


 名指しで訊ねられ、頼はたじろいで純一郎に助けを求める。


「ね、ねえ純一郎君。答えてよ」


 自分も名を呼ばれたというのに純一郎は机に蹲ったまま動かない。


「こういうのはお前の専門だろ、頼」

「専門って……同じクラスだったじゃないか」

「おい。どちらでもいいから早く答えろ」

「……はい」


 全く答える気がない純一郎を見て、頼は仕方なく立ち上がった。だが答えが分からず、慌ててテキストのページをめくっている。やがてあきらめたのか、テキストを机の上に置いて、おずおずと顔を上げた。


「あっ、あのっ、もしかしたら違うかもしれないんですけれど」

「それを判断するのは私だ。時間を無駄にするな。さっさと答えろ」

「はっ、はい……融合は、要はMHOが死者の肉体を取り込むことで、それで意志を持ったのMHOが……あっ」


 頼は何かに気が付いたように顔を上げた。


「ん、どうした?」

「……あの、MHOの発生要因はまだ不明ですけれど、ひょっとしたらあれって」

「倉井頼君」


 その時、黒板を弾く指示棒の音が教室に響いた。

 生徒の間に緊張が走る。


「はっ、はい」

「私の質問は何だったか?」

「質問はええと……融合の特徴ですよね」

「もういい。座れ。替わりに堂壁、答えろ」

「……おいおい、マジかよ」

「ごめん、純一郎君。お願い」


 頼の情けない姿に小さな笑い声が漏れた。純一郎の視線ですぐに収まったが、だが教室の中で二人の存在感は明らかに異質だった。


「堂壁。お前も答えられないのか」。

「……分かりましたよ。比留間教官」


 面倒だと思う気持ちを隠しもせずに堂壁は重い腰を上げた。

 そんな堂壁を頼は申し訳なさそうに見守る。それにしても大きい。日本人離れした彼の体格は戦士育成科の中にいても一際目立つ。

純一郎はわずかな時間、比留間に恨めし気な視線を送っていたが、やがてため息を一つ吐くと、首の後ろを揉むような仕草をしながら口を開いた。


「MHOの周囲に転がってる死体はさっさと片付けろ。そんだけの話だ」

「全然説明になっていないぞ」

「説明能力なんて戦場じゃ何の役にも立たないだろ。融合は基本させない、さっさと本体を潰す。それさえ頭に入れておけば問題はない……と思うのですが、いかがですか教官殿」

「貴様という奴は……相変わらずだな」

「……えっ?」

「教官。ひょっとしてあの転入生と知り合いなんですか?」


 その一言をきっかけに周囲がざわめき始める。

 しかし、その声は比留間が黒板を叩いた音ですぐに収まった。


「堂壁。今度ふざけた返事をすればお前にレポートを課す」

「……はいはい」

「倉井頼、お前もだ」

「……えっ」

「授業を続ける。このようにMHOは――」


その後、何事もなかったかのように授業が行われた。


「……お前、勉強ばっかやってた癖に何で答えられないんだよ。お陰で俺までとばっちり食らっただろうが」 


 耳に痛いことを言われ、肩を潜める。


「それは……その……授業中も研究レポートやってたからあんまり聞いていなくて」

「……そこまでしたのにレポート評価Cだったのか」

「……あはは」


 空笑いする頼。それを見て堂壁は怪訝な顔をした。


「授業中すみません、比留間教官」


 教室に誰かが入って来た。

教官服の上に白衣を着た一人の女性だった。


「何か用か亜沙方」

「はい……ええと、こちらで転入生が授業中ということですが」


 亜沙方と呼ばれたその女性が爪先立ちで生徒を見回す。


「転入生って僕たちのことだよね」

「他に誰がいる」


つま先立ちに加え、額に手を当てて目的の生徒を探している亜沙方という教官。それらの振る舞いが二人を見つける役に立つとは思えないが、その誰の目にも分かりやすい彼女の動きがしんと静まっていた教室の空気を和ませていく。


「……何の用だ」

「ファズエラの調整を終えたので二人を……と」

「そうか。おい、奥の馬鹿二人。行って来い」

「生徒を馬鹿扱いかよ」

「あはは……」



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