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T.T.O.T.T  作者: むこーむこ
Conclusion:MIsfortunes never come singly.
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40  singularity-シンギュラリティ-

 

 鎧武者の腕に抱かれたマルスの肉体が土と化し、ぼろぼろと地面にこぼれていく。

 自ら切り離した豪の両腕も同じ現象が起きていた。

 体内のフォビックオリジンを使って腕を高速再生させているが、かなり息が荒いところを見ると、すでにかなりエネルギーを消費しているはずだ。

 力の正体は分からないが、あの甲冑には後人の身体を構成しているフォビックオリジンを恐ろしい速度で吸収、もしくは蒸発させる効果があるようだ。

 おそらく、自分もあの鎧に触れれば、マルスと同じ運命を辿るだろう。


「素晴らしい。さすが後人。腕を生やすだけではなく自らの意思で肉体から分離させることもできるとは」



 鎧武者が土の中から拾った指輪を儚志徹が胸元に入れる。


「運が悪いぜ。まさかこのタイミングで最強の戦国武将様ペアが完成するとはな」

「運ではないよ。この日のために、準備をしてきたのだからな」

「……そうかい。じゃあ“戦闘用人型人工知能兵器プログラム”VS“後人”だと思っていたのは俺だけだったんだな」

「そう思っていたのだとしたら、勝敗は最初から決していた。マシンである人工知能をお前達は吸収できない。だが、人工知能はお前たちの力の源を分析し、研究し、対抗策を練ることができる。なぜなら人工知能には人類の知恵という心強い仲間が—―」

「博士、お下がりください」


 鎧武者は豪の前を悠々と歩き、前に出る。

 豪を助けに来た牧島を迎え撃つために。


「牧島さんっ! ……くそっ、助けなきゃ」

「むぐっ」


 牧島を追っていこうとした時、背後でくぐもった声で頼に呼びかけた。

 それは顔から足首までを触手で包まれ、ミイラのように倒れていた小判だった。


「……そうだった」


 すっかりその存在を忘れていた頼は慌てて触手の拘束を解いた。


「ごめん……大丈夫?」

「この大馬鹿が」

「いててっ!」


 起き上がりざま、二発のビンタを頼にお見舞いすると、頼の耳を強引に口元まで引っ張った。


「……今から言うことをよく聞きなさい」

「そんなことより、牧島さんが」

「分かってる。だから黙って聞いて。私たちの本当の任務が何か」

「……本当の任務?」

「私と兄兄は上層部からの指令を受けてここにいる」


 早口で捲し立てるように言う。


「今回の目的はクスト派とザポダ派両方のトップを潰すこと」

「両方……じゃあ儚志徹博士も?」

「トップ同士を衝突させ、消耗したところを叩く。そのために兄兄はクスト派にスパイとして送り込まれた。だから今も意識を失った振りをしてそのチャンスを伺っている。頼のクラスメイトのお二人さんも多分、それを知ってる」


 頼は壁際で倒れている三人に目を向けた。

 その視線には驚きと同時に、若干の恨みも籠っていた。


「どうして意識を失った振りなんか……こんなことになっているのに」

「それも含めて、上層部のシナリオ通りよ。あなたがお尻から出したもので私をグルグル巻きにしたこと以外はね」


 これは皮肉なのだろうかと思ったが、頼は話を急いだ。


「それで、どうするつもり?」

「先に儚志徹を殺る。あの甲冑男は後人には無敵に近い力を持っているけれど、相手が人間なら話は別。私と兄兄なら問題ないわ」

「そして、その後は父さんを」

「そうね……まあ、甲冑男との戦闘中に倉井豪があの扉から逃げ出したりすれば、さすがに追いかける余裕はないでしょうけれど」


 そう言った時の小判の表情を見て、頼ははっとした。

 目が合った小判がニッと笑う。


「……小判、君は」


 小判の指が頼の言葉を封じる。

 

「大丈夫。あなたはあなたの信じる道を選びなさい」


 そう告げた唇が、口封じの役割を指と交代した。

 突然のことに頼は拒否する理由が見付からず、受け入れる結果になった。


「えへへっ、後人になった頼の初唇ゲット」

「何だよ、それ」

「行くわよ」

「……ああ」


 そして二人は同じ方向へ走り出す。

 それぞれ自分が信じる目的のために。


「来たか」


 儚志徹が二人に気が付き、指示を送る。


「ドウゲン。後人は無視でいい。女二人を先に殺す」

「……分かった」


攻撃を避け豪の守りに徹していた牧島の前に二人が立つ。


「牧島さん、大丈夫?」


 さすがにずっと裸なのもアレだと思い、頼は触手を使って身体を包ませた。


「倉井君、ありがとう。でも、どうせなら武器が欲しいのだけれど」

「これを貸してあげる」


 牧島にクナイを渡す。


「あなたは?」

「そうね……もしかしたらあなたの娘になるかもしれないわね」

「……娘?」


 牧島は首をひねったが、最初から理解させるつもりもなかったのか、小判は黒い小刀を抜き、鎧武者を睨みつける。


「二人で殺るわよ。甲冑のない関節部分を狙う」

「……分かった」

「頼はそこの儚志徹を何とかしなさい」

「……フンッ、無駄なことを」


 儚志徹は笑い、白衣の中からガスマスクを取り出す。

その瞬間、鎧武者から紫の煙状のものが噴出された。


「……うわっ!」

「全員、一度離れて! 毒ガスよ!」


 煙は数秒も経たず、十メートル四方に広がった。

 豪を引っ張り、四人で一度避難する。


 鎧武者の背後の辺りで、ドアが開く音がした。


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