17 15 minutes-十五分-
「えっと……君の武器は?」
「そんなのいらない」
「……凄い自信だね」
「あなたこそ、この一か月で少しは強くなったのかしら」
牧島の質問に頼は指を折って計算をした。
「……レベル九。七十五戦七敗」
「それ、どんな嘘?」
「嘘じゃないよ。本当だ」
「でも、それじゃ計算が合わない」
『居残り』頼の替わりに比留間教官が答える。『私が許可したんだ。元からいる早く奴らに追いつきたいと言うのでな。流石のお前も驚いたか』
「ええ、驚いたわ」牧島が頼を見る。「それだけ訓練をしてレベル九だなんて。結局あなたもあそこにいる人たちと同じなのね」
「……それは僕なりの理由があって」
「言っておくけれど」牧島が頼の短刀を指さす。「殺す気で来ないと私があなたを殺すから」
『おい牧島。それは駄目だ』
「……じゃあ半殺し」
『ったく、向井頼。お前、牧島に何をした。胸でも触ったのか?』
「いや、そんなことして……」その時、頼は廊下で転んだ時のことを思い出した。
「……おい、お前まさか本当に」
「ち、違います! あれは不可抗力というか……はあ、もういいです」
頼は弁解めいたことを言った後、丸腰で構える。
「……どういうつもり?」
武器を持たずに戦おうとする頼の行動に、牧島は怒りを覚えた。
「最初に言っておくけれど僕は君には勝てないよ」
「……言い訳のつもり?」
「いや……だからって負けるつもりもない。だから武器は要らない。でもその替わり、条件を付けさせてくれないか?」
足を前に出し、牧島に一歩近付く。
「制限時間は十五分。その間、僕は君の攻撃をかわし続ける。もし一撃でも攻撃を受けたら僕の負けでいい」
『ハハッ、なるほど。そういう訳か』
比留間の笑い声に、牧島は敏感に反応した。
向井頼の提示したルール。
その意図を、比留間は知っているようだった。
「牧島さん、それでいいかな?」
「どうでもいいわ。好きにすれば?」
「うん、じゃあ好きにする」
頼は目を閉じた。
「教官、お願いします」