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2-3

 向陽にとってはいつもの見慣れた不思議空間になるマンションの一室だ。しかし秋吉からすれば、この異空間のような一室に戦々恐々とする。

「さて…おまえは何が目的で向陽の後を追っていた?聞けば向陽の知人ということらしいじゃないか。ん?それとも知人のフリをしていた間者かなにかかな?さぁどうなんだろうね~、ちょっと私が納得できるように自己紹介してくれるか」

 トーラがいるのはいつものカウンタ―ではなく、カウンターの近くに置いてある小さめの丸テーブルだ。その正面にガクブルと小刻みに震える秋吉。二人の間に挟まれるように向陽が座っていた。ただし秋吉は小さい椅子の上に器用に正座である。

「あの、トーラさん!なんかもう止めたげよう。秋吉そろそろ潰れそうですから」

 怯えっぱなしの秋吉の為に助け舟を出したつもりだったが、

「向陽。お前何勘違いしてる?お前あそこに行っておきながら甘いんじゃないのか?」

 火に油だ。

「普通あそこはこことは別の場所なんだ。仮にあの場所の存在について…あそこに住まう人達についてここにいる人間の、性根の悪い奴がいたらどうする?なにをやると思う?個人や組織程度なら私程度で何とかなるかもしれない。特にここで籠城戦となれば負けない自信はある。だが、コレが国単位というなれば話は変わる。お前はまだあの場所の一端しか見ていないから分からないだろうが、見る奴が見れば目の色を変えて、どんな手段に訴えてでもあの場所を強奪しにくる。そんな輩がでてきてもおかしくはないんだよ。そして……コイツはそんな輩の手先かもしれないんだよ!」

 秋吉を指差しスパイ疑惑を投げる。向陽からすればとんだ冗談にしか聞こえない。だけどトーラの顔を見れば真剣そのもの。なんの偽りもなく、ただこのジュボネへの扉の番人としての務め、そして辰に任されているという責任がここまで突き動かしているのではと向陽は考えた。

「とりあえずトーラさん。コイツただの頭のいい馬鹿です。そして行動力がある馬鹿です。面倒事を起こしやすトラブルメイカーの馬鹿です。馬鹿の馬鹿で変態です。変態の馬鹿です。何が言いたいかというと、こいつは馬鹿で変態の上、行動力があるから事件を起こすもしくは巻き込まれやすい馬鹿です。だから今回もそんな感じだと思う訳です。つまりですね」

 向陽は秋吉の方に向き直る。

「おい馬鹿秋吉。お前はなんで俺に付き纏った?秋吉馬鹿お前今回は何が目的だ?馬鹿結局何がしたかったのさ?馬鹿なんでお前は馬鹿なんだ。どうして馬鹿なことしかできない馬鹿。馬鹿が馬鹿やっても馬鹿のまんまだぞ馬鹿、どうすんだ馬鹿、なんか言え馬鹿、オイ馬鹿聞いてるのか馬鹿」

「そんな馬鹿馬鹿言うなよ~。俺だって心ってもんが――」

「黙れ馬鹿。さっさと質問に答えろ馬鹿。それとも馬鹿には俺の質問が分からないのか?馬鹿。学校の成績はあんなに良いのになんで馬鹿なんだ。馬鹿」

「遮ってまで言うの!言っちゃうの!?」

「言うわ馬鹿。早く理由言え馬鹿」

「うぅ…分かったから。だからもう馬鹿馬鹿止めようさ」

「言え馬鹿」

「うぅ……」




「つまりこういう事か」

 ――ここ数日、というか高校に入学してからつまらなそうにしていた向陽が、ある日を境に別人のように活き活きとしていた事が疑問に感じた。それを究明するべく、アレやコレやと計画を練り実行したのが今日だった――。

「阿呆だな」

「いえ馬鹿です」

「人騒がせな奴だ」

「死ねばいいのに」

「害虫と言わんがウザいな」

「さっさと殺した方が世の為ですよ」

「もう止めて―!それ以上は耐えられないから止めてー!」

「本当はドMとかって落ちだろ」

「度し難い変態なんだな」

 そこまで向陽とトーラ言った所で何かが折れる音が聞こえた。いや慟哭を聞いたが正解しれない。

「うわーーーーーー!!!!」

 突然叫びだし正座していた椅子から飛び降り逃げ出そうとした秋吉。

「はいはい手間掛けさせんなー」

 どこから取り出したのか錘と言われるような武器を取り出し、それを秋吉の足元に向かって投げていた。トーラの投げた錘は見事秋吉の両足に絡みついた。

「ギャピ!」

「さて。向陽は何を飲みたい?」

「それじゃあトーラさんのと一緒のでいいですよ」

「そうか分かったよ」

 蹲って泣いている秋吉を放置して、トーラはキッチンの奥へ向陽はカウンターの方に移動した。


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