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2-2

 ようやく待ちに待った大型連休が始まった。向陽は昨日帰宅してすぐに明日の準備を整え、早々に眠ってしまった。起きてからもサクサクと準備をし、学校に行く時間より少し遅い時間に家を出た。

 今回の大型連休は三日と四日の併せて七日の休みだ。途中一度学校に行かなければならないのが残念だが、向陽の通う高校では特別な休みになるわけではないので、教員の方も愚痴愚痴となにか言っていたのを向陽は思い出した。それと同様に、向陽は親の説得だ。しかしそれは森野商店のおばあちゃんの所で、休み期間住み込んで手伝って欲しい事があると言われたと話をすると、簡単に承諾が取れてしまった。後顧の憂いも無くした向陽は、堂々とトーラのいるマンションに行く事が、ジュボネの世界に行く事が出来るようになった。

 ルンルン気分で自宅を出て、トーラのマンションに着いた。先日、森野辰からマンションの合鍵を頂いた向陽は、それを使ってオートロックを解除すると、入口正面にあるエレベーターに乗り、トーラの部屋がある十階のボタンを押した。

 そしてここ最近日課のように通っている部屋のインターホンを押す。いつものように「いらっしゃい」と言ってくれることを期待していた向陽に向けて、扉を開けて出てきたトーラは開口一番。

「お前は何を連れてきたんだ?」

 向陽は身に覚えのない言葉に驚いた。しかしそれでも言葉は続く。

「そこの、その階段の所にいるだろう。いいから出てきてこっち来い」

 トーラが声を張る。その声はとても力強く向陽も思わず及び腰になった。



 え?なんでバレたの?秋吉は素直にそう思った。どこからバレていたのか?どうしてバレたのか?そんな事がぐるぐると頭の中で回り続ける。

「どうして顔出さないんだ?」

 身体が動かない本当に金縛りってあるんだなと知った。秋吉は目の前から聞こえた声が、突然自分の背後から聞こえた。そんなオカルトあってたまるかと思う一方、どうやってこの一瞬できたのか?という事を知りたいとも思った。

「おい答えろ」

 うずくまっていた背中を蹴られ、階段の踊り場部分から通路の方に転がされた。

「聞こえているのか?お前は誰で、何の為に向陽の後をつけていたいた?」

 自分を見下ろしているのは女性のはずなのに、低く重たい声。身に纏っているオーラみたいなのもビシビシ伝わってくる気がする。秋吉がこの先どうなるんだろと思った時、

「おま…秋吉!?お前何してんだよ!?」

 この時ばかりは向陽の声が神にも思えた秋吉だった。



(あれ?なんであんなとこにトーラさんが?)

 向陽が気付いた時には、玄関先にいたはずのトーラが二十メートルは先にある階段のところへと移動していた。ただしそれは向陽が視認する事が出来る速度ではない。トーラが何か叫び階段の出口に押し出されるように、何者かが姿を現すのが見えた。

(きっと蹴られたんだろうな)

 背中をドンって思いっきりなんて、追跡犯に同情したが、自分をつけていた人間だしいいかと割り切る。しかしその気持ちも、

「おま…秋吉!?お前何してんだよ!?」

 自分の知人であれば話は変わってくる。倒れている秋吉にすぐさま近寄る。秋吉の顔は蒼白、多分トーラの気当たりが原因だろうなと考えた。

「ちょっとトーラさん!こいつ一応俺の知り合い何です!だからそのおっそろしいものしまって下さい!」

 これまでの特訓の成果か、トーラから叩き込まれた気配の読み方で覚えたトーラの発しているものは、今までの中で一番激しいものだ。ともかく何も分からないはずの秋吉が固まってします程の殺意やら敵意やらを何とかするのが優先される。向陽の声がトーラに届いているかは分らないが、このままだと秋吉が瀕死にされてしまう。親友というまで仲が深いとは思っていないけども、トーラがこのバカをぐちゃぐちゃにするというは止めて欲しい。

「トーラさん!とりあえずコイツは俺のクラスのクラスメイトです!基本的に怪しい変な奴です!だけど悪い奴ではないはずでんです。だからミンチとかにするのちょっと待って下さい!」

「……向陽、それはそいつをフォローしているのかしていないのかどちらか分からんぞ」

 向陽の物言いに毒気が抜かれてしまったようで、剥き出しになっていた敵意が霧散していた。

「おい秋吉!とりあえずお前立て。トーラさんとりあえずここで話すのって厳しいと思うのです。中に入ってもいいですか?」

「それは問題ないが……」

「何かあったらトーラさんがぶっ飛ばしてもいいですよ」

「そうかそれなら入ったらいい」

 家主の許可が下りた。トーラはゆっくりと二人の横を通り過ぎると玄関のドアを開けて中へと招く。

「ほら秋吉。お前なんでそんな恰好してるんか知らないけど、とりあえず中に行くぞ。歩けるよな?」

 コクンと頷く。向陽の手を借りてゆっくりと立ち上がると、向陽の肩を借りて何とか玄関をくぐって行った。

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