番外編1:ITSUREN武勇伝 ―Heidi&Clara―
「……え、」
少女――穂波紅楽々は、今言われたことが理解できず、ただ呆然として、目の前にいる少年を見つめた。
理解できないと言っても、言葉の意味が理解できなかった訳ではない。むしろそれはとてもシンプルな――『愛の告白』だった。
「……悪い、変なこと言っちまった」
「え……反町くん……」
「あの、な……いきなり映画なんかに誘って、何言ってんだと思うかもしれねえけど……俺、穂波が好き……だ」
「…………」
告白が嬉しくないのではない。小学校の時も何度か告白されたことはあるが、少なくとも言われて気分が悪くなるものではなかった。だが……目の前の少年――反町高次は、つい1週間前に出逢ったばかりの、ただのクラスメートだったのだ。まだ好きか嫌いかも判別できるほど親しいわけではない。
「ま、まあ、いきなり言われてもあれだよな」
「……え、えっと……」
「返事はもう少し、俺のこと知ってからでいいからさ……今すぐフってくれてもそれはそれでいい。でも、その、だな」
「……反町くん」
「……何だ?」
紅楽々はしっかりと、高次の目を見つめた。
ただのクラスメート……だったはずなのだ。だが、今気がついた。自分もこの1週間、花園学院に入学して高次と同じクラスになった時から、ずっと彼を目で追っていたことに。
「こっち、来て」
「…………?」
高次は顔を赤くしつつ、紅楽々に近づく。紅楽々は高次を少ししゃがませ、自分も背伸びして、耳に口を近づけ、
「――――……」
小さな声で、囁いた。
その瞬間、高次の顔は一気に赤くなり、バッとものすごい勢いで紅楽々から離れた。
「……い、今の……」
「……うん」
「…………」
2人とも顔を赤くし、俯いた。
まあ、よろしく、なんて高次が呟いて。紅楽々は勇気を出して、よろしく、高次くん……と名前を呼んでみた。
……この初々しい告白のシーンを、陰からこっそりと、高次の悪友と無理やり連れてこられた少年、そしてその双子の姉が見ていたことなど、その時の彼らは知る由もなかった。