二人の彼との物語
私の名前は三枝りんご。
髪も普通の黒、身長も高いっていうわけでもない。ほんとに平均的、なんの変哲もないただの女子高生だ。
そんな私は……今、恋をしている。
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「はぁぁぁ……氷上せんぱぁい……今日もカッコイイなぁ」
私の恋した相手は、この学校の図書委員長を勤める氷上冬彦先輩。
小柄な体型にシミ一つない肌。
雪のような真っ白な髪にすべてを暖かく見守るような瞳。
成績優秀、スポーツ万能、完全完璧な男子である。
今日も先輩は、図書室の窓際の席で本を読んでいる。
そして、そんな先輩を、私は教室の窓から眺めていた。
「声かけたい……でも……恥ずかしいよー」
いつもそう言っているが、結局声をかけれず、かれこれ一ヶ月になる。
そして、間近で見ることも恥ずかしいので、毎日こうやって教室から先輩を眺める事が、私の幸せなのだ。
「でも、もっと幸せになりたい。先輩とお話したいと思うのだった」
「そうなのよ……はぁ……氷上せんぱ……って!わぁぁぁ!」
そうしていると、急に後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには、見覚えのある男子がいた。
「……そんなに驚かなくても……」
「うざいからそんな顔するな!キモいから近寄るな!汚れるから触るな!」
彼は柿栗晃。
焦げ茶のスポーツ刈りが似合う、私のクラスメートだ。
すこし高い背に、肌も日に焼けている。
着崩したカッターシャツの上からブレザーを羽織っている、いかにもカッコイイ系の人だ。
だけど……私はこいつがだいっきらいだ。
なぜかというと……
「あきら、もういこうよー」
「あぁ、わりぃわりぃ。じゃあね、りんごちゃん」
そう、こいつはものすごく女たらしなのだ。
常に一人以上の女の子を連れ歩いて、気がつくと別の女の子を連れている。
こいつと付き合ったっていう子も、今までに何人いるか……
「……全く、氷上先輩の爪の垢でも飲んでろ、ばーか」
私はそう吐き捨てて、また氷上先輩を見つめるのだった。
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そうこうしていると、いつの間にか辺りは暗くなっていた。
もう秋なので、日が落ちるのも早くなってきている。
「さて……帰ろっと」
私は荷物を鞄にいれて、今日も幸せでした、と呟きながら教室を出ていった。
帰り際、もう一度図書室の方を見てみると、氷上先輩はまだ本を読んでいた。
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秋の日はつるべ落とし、というだけあって、いつの間にか辺りは真っ暗になっていた。
「……なんか怖いなぁ」
最近、このあたりで変質者がでるっていう噂も聞いている。
実際、他のクラスの子が襲われたらしい。
世の中怖いことだらけである。
そう思っていると、前から黒いマントを羽織った男がフラフラしながら歩いてきた。
おかしいな、と思って見ていると、その男は、私のほうに向かって歩いてくる。
……もしかして…………
「おおおお嬢ちゃん……ぱぱぱパンツななな何色かなぁぁぁ?」
「きゃぁぁぁぁ!」
言った側から出てきやがった。
なんつータイミング……じゃなくて!
「たすけてー」
私は悲鳴をあげながらその場を離れようとした。
しかし、腰が抜けて走るどころか、立つことすらできない。
「うへへへお嬢ちゃん、こここ怖がらなくてもいいいいいよ」
そして変質者は徐々に私に近づいてきた。
「いや……いや……やめ……」
悲鳴を上げようとするが、それさえもでない。
あともう一歩で変質者が目の前にくる……そうなったら……
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
とにかく精一杯叫んだ。
すると……
「消えろ、変質者」
ゴツッと何かを殴ったような音と誰かの声が聞こえ、目の前にいた変質者が派手に飛んでいった。
「だだだ誰だ!ぼぼぼ僕のじじ邪魔をするのののは」
「もう一度言う。消えろ」
この声は……
この透き通ったような声は……
「ひ、氷上先輩!?」
「大丈夫かい?」
「は、はひっ!らいじょうぶです!」
なんと、氷上先輩だった。
これは夢なのでは!?変質者が目の前にいたと思ったら、今度は氷上先輩が目の前に!?
「くくくくそ!おお覚えとけよ!」
すると変質者は逃げるように走っていった。
でも今はそんなこと関係ない。
だって氷上先輩がこんなに近くにいて、手を差し出してくれているから。
恐る恐るその手を取ると、先輩は優しい笑顔を浮かべ、私の手を引っ張ってくれた。
「怪我はないようだね」
「あ、ありがとうございます!助けていただいて!」
「いえいえ、こんな可愛い女の子が襲われたんだ。そりゃ助けるよ」
かかか可愛い!?今先輩が私の事可愛いって!?
あぁ、もう死んでもいい……幸せすぎる……
しかしよく見てみると、先輩の手がすこし赤い。
「あ……先輩、血が……」
「……あぁ、かすり傷だよ。このくらい大丈夫」
でも私のせいで先輩に傷をおわせてしまった……
私は持っていたハンカチで先輩の血を拭った。
「……汚れるよ」
「いいんです。ほんとにありがとうございました」
そう言って私はハンカチをポケットにしまった。
……もう洗わずに飾っとこうかな。
って私、なに変態発言してるの!?
「……また襲われるかもしれないから、送ってあげようか?」
「ええぇ!いいんですか!?」
「立てる?」
「は、はい!」
……ほんとに、もう、幸せだ……
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翌日の朝。
私は幸せウキウキで学校に登校した。
「えへ、えへへ」
朝起きた時から頬が緩みっぱなしだ。
あのあと、先輩に送ってもらって、しかも暗いからって言って手を握ろうとしてくれたし……
さすがに恥ずかしいから遠慮したけどね。
でも……勿体ない事したかなぁ……
「そりゃ勿体ないでしょ。あの憧れの氷上先輩の手を握るなんて、もうないかもしれないよ」
「そうよねー……ってまたお前かぁ!」
「はははっ、りんごちゃん、リアクション面白すぎ!」
いつの間にか、晃がいた。
てか、なんでこいつは私の心が読めるのか……
「だって、顔に書いてあるもん。失敗したなぁ、握りたかったなぁ、って」
「だからなんで読めるのよ!」
ほんと、こいつは苦手だ。
「それより、変質者に襲われたんだって!?大丈夫!?」
「なんで知ってるのよ」
「そりゃ、オレの情報網の……」
「はいはい分かったわよ。確かに怖かったけど、氷上先輩に助けて貰ったから大丈夫よ」
「そっか。よかったぁ……」
そう言って晃は胸を撫で下ろす。
心配……してくれたのかなぁ……
「そりゃ心配するよ!可愛いりんごちゃんが襲われたって聞いたら!」
「だから人の心を読むなぁ!」
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放課後。
いつものように図書室を教室から覗く。
「氷上せんぱいっ、今日もいるかなぁ」
妙なリズムに乗せながらそう歌う。
おかしいと思うでしょ。でも今は機嫌がいいからなんでも歌っちゃう。
「でも今日は委員会でいないんだよっ、ヘイッ」
「うわっ!」
すると後ろから私が歌っていたリズムにあわせて、誰かが歌った。
「恥ずかしいね、りんごちゃん。聞かれてるよ、オレに」
「………………死ね」
「ひどい!」
こいつは神出鬼没なのか。物音一つ起てずに後ろに立つなんて……
「はははっ、それほどでも」
「褒めてない!」
でも、情報はありがたく頂いておこう。
「そっか、委員会か……」
そうなると今日は図書室には来ないかな。
それに会議室は窓がないから覗く事ができないし……
「じゃあ一緒に帰ろうか」
「その《じゃあ》はなんなのよ。てかあんたと帰るなんて嫌よ」
「別にいいけどさ……また変質者に襲われても知らないよ」
「うっ……」
それは困る……また氷上先輩が助けてくれるとは限らないし……
「だから一緒に帰ってあげる」
「……まぁ……ちゃんとしてくれるなら……」
「大丈夫、りんごちゃんに寄り付く害虫共は一ひねりだよ!だから……ご褒美にチューでも……」
「お前が一番害虫だ!」
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「半径85cm以内に入ってこないでよ」
「……それ歌詞間違ってるよ。正しくは、半径85cmがこの手の届く距離、だからね」
「そのあと振り回してるでしょうが。入ってきたらダブルラリアットきめるわよ」
「言っちゃった!?」
帰り道。
私はこいつとそんな会話をしながら歩いていた。
「……てかこの前一緒にいた女の子と帰らなくていいの?」
「えっ?……あぁ、あいつか。あいつならもうフッたから大丈夫」
「うわ……サイテー」
「仕方ないって、一緒にいたらなんか疲れる、というか……」
そう言って晃はため息をついた。
「……でも、あんたからコクったんじゃないの?それをフるって……」
「オレ、自分からコクった事なんかないよ。今まで付き合った奴らはみんな向こうからコクってきたんだよ」
「えっ?私はてっきり、あんたからだと……」
「好きでもない相手にコクったりなんかしないって。ただでさえ本命いるのに」
「嘘つけ、女たらしが」
「あ、バレた?」
「ほらやっぱり」
「はははっ、でも自分からはほんとにコクった事ないよ」
「へぇ……」
こいつがコクらない……か……
もしほんとなら、私はこいつの事を勘違いしてたのかも……
それに……本命がいるって……
なんか寂しいな……
「って!私は何を考えてるんだ!」
「どうしたの、りんごちゃん?」
「ふぇっ!?ななななんでもない!」
なんとかごまかした。
こいつ、人の心読んでくるから……今のは危なかったなぁ……
「……てかさ、りんごちゃん」
すると晃は真剣な顔つきで私の方を見た。
「……あの氷上っていう先輩と、付き合いたいの?」
(ガランガラン!)
いきなりそんな事を言われ、私は自販機の横に置いてあるごみ箱に激突した。
「大丈夫?」
「なななっ、なにそんなこといきなり言ってんにょよ!ビックリしたわ!」
動揺を隠しきれず、うまく舌も回っていない……
「えっ、だっていっつも見てるからさぁ、好きなんでしょ」
「ちょ!ちょ!ちょ!す!好きだなんて、付き合いたいなんて!付き合いたいけど私には不釣り合いだとか見てるだけでいいとかそんな勇気ないとか」
考えがまとまらない……
しかも自分でなに言ってるか分からない……
「……あー、つまり、付き合いたいけどそんな勇気ない、と?」
「ま、まぁそんなところ……そもそも、付き合いたいけど私には勿体ないというか……」
「分かった分かった。そういう事にしとくよ」
そう言って晃は手を振った。
「……なんかバカにしたでしょ」
「してないしてない、ただリアクションが面白いなぁって」
「やっぱりバカにしてるじゃないかぁ!」
やっぱりこいつは苦手だ。
「苦労してんな……でも、この調子だと、オレにもチャンスはあるかもな」
そして、何か晃が呟いた気がしたが、私には聞こえなかった。
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翌朝。
いつものように学校に行くと、校門に氷上先輩がいた。
何をしているのかな、と思うと、どうやら委員会で行っている、朝の挨拶運動みたいだ。
「あっ」
すると氷上先輩は私に気付いたようで、手を振ってくれた。
「せ、先輩!おおおはようございます!」
「あぁ、おはよう。あれから大丈夫かい?」
「はい!先輩のおかげで。ありがとうございました」
「いえいえ、君、可愛いんだから気をつけてね」
「ははははい!」
また可愛いって言われちゃった、きゃーー!
「よかったね、りんごちゃん。片思いなうの先輩に可愛いなんて言われて」
「もう幸せよ、ってまたかよ!」
「やほ、おはよ」
またいつの間にかあいつがいた。
いきなり出てくるのは勘弁してほしい……
「ところで……なぁ、氷上先輩」
「……なに?」
「ふぅん……」
そう言うと晃は氷上先輩をまじまじと見た。
なんか、ヤンキーがガン飛ばすみたいな絡み方だ。
「……ふふっ、そんなとろとろしてたら……取っちゃうよ」
なんか、訳の分からない事を氷上先輩に言って、そのまま昇降口の方へ歩いていった。
どういう事だと思って氷上先輩を見ると、なんだか悔しそうな顔をしていた。
「あの……氷上先輩?」
「えっ、あぁ……ゴメンね……ほ、ほら、もうチャイムなるよ。早く教室に行きな」
「え、あ、はい」
なんだか氷上先輩が動揺しているように見えたけど……
あいつ、氷上先輩になにを……後で殴っとこう。
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授業も終わり、放課後いつものように教室から氷上先輩を見ていた。
「……でも、朝のあれ……なんだったんだろ」
晃にああ言われて、ものすごく悔しそうな顔をしてたけど……
取っちゃうよ、って……一体なにを……
そう思っていると教室のドアが開いた。
晃が入ってきたのだ。
「りんごちゃん、また見てるの?」
「うるさい、はよ帰れ」
「いやいや、今日はりんごちゃんに用があってきたんだよ」
「私に?」
そう言うと晃は頷いて、私の隣に座った。
「……で、話ってなに?」
「あー……その……うわ、これキツイな……」
なんだかぶつぶつ言いながら、私の顔をチラチラ見てくる。
心なしか、顔が赤いような気がした。
「なによ」
「…………よしっ!言うぞ」
すると今度は私の方を真っすぐ見つめ、真剣な顔つきになった。
うわ、こいつ近くで見ると氷上先輩に劣らずイケメンだなぁ……
って!なにを考えてるんだ私!
「……りんごちゃん」
「な……なに」
「……オレ、りんごちゃんの事が……好きです」
えっ……えぇぇぇぇぇ!
「今までいろんな奴と付き合ってきたけど……こんな気持ちになったの、りんごちゃんだけなんだ。んで、こうやってコクったのはりんごちゃんが初めて」
「えっ、えっ?」
「だから……オレと付き合ってほしい」
ちょちょちょ!?ちょっと待って!えっ!?付き合ってって!あの付き合う!?
「……やっぱり、氷上先輩の方がいいの」
「えっ、あ……」
「確かに、りんごちゃんがあいつの事どう思ってるかは知ってる。でも……オレはあいつよりも、りんごちゃんの事を幸せにしてやる。大切にする」
「え……そんな……いわれても……」
恥ずかしさから晃の顔が見れない。
いつもおちゃらけて私をからかってくる晃が、こんな真面目な顔で告白してくるなんて!
「返事……今聞きたい」
「えっ……あ……」
「りんごちゃん」
「えっ……あ……の……」
確かに、こいつといれば面白い。だいっきらいって言ってるけど……実は楽しかったりする。それから付き合うとなったら、もっと楽しくなるだろう。
「私は……」
どうしよう……
氷上先輩と付き合いたい、という自分と、こいつと付き合いたいっていう自分がいる。
返事しないと……でも……
「分からないよぉ……どうしたいのか、分からないよぉ……」
「……そっか。それがりんごちゃんの答えなんだね」
「………………」
黙ってしまう。
こいつに悪いことしたかな……
「りんごちゃん、最後に……本当に氷上先輩が好きなの?」
「えっ?」
「勘違いしてないかなって……もしかしたら……りんごちゃんは氷上先輩の事を尊敬していて、それを好き、って勘違いしてるのかもって……」
「それは……ちが……う……」
「ほんとに?そう言い切れる?」
「………………」
「それに助けてもらった時、吊橋効果ってやつで……」
「もうやめて!」
大声が出た。自分でも驚くほどの大声が。
「そんなことない!私はずっと氷上先輩を見てきた!ずっと好きだった!それが勘違いなんて嫌!」
「………………」
「晃の事も……嫌いじゃない!こうやって告白されて嬉しいよ!でも……それ以上に氷上先輩の事が大好きなの!この気持ちは変わらない!」
思う事を精一杯言葉にして言った。
「……そっか」
すると晃はそう呟き、おもむろに携帯を取り出すとどこかに電話をかけた。
「……あぁ、オレ。ちょっと話があるから屋上来て。……うん、今すぐ」
少し話して、すぐに仕舞うと、今度は私の手を取った。
「えっ!?」
「さて、行くよ!」
そして私を連れて歩きだした。
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連れて来られたのは、屋上だった。
「……どういう事?」
「まぁ見れば分かるよ」
そう言うと晃は屋上の扉に手をかけた。
「……ここからはりんごちゃんだけの方がいいかな」
「だからなんなのよ」
「……いい、りんごちゃん。今の気持ち、包み隠さず伝えな」
なにがなんだか分からない。
そう思っていると、扉が開いた。
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秋の夕日が綺麗に輝いている。
もうすぐで地平線へ沈もうとしているその先に、人影が見えた。
「えっ、え!?」
そこにいたのは……氷上先輩だった。
「えっ三枝さん!?…………あいつ……こういう事か……」
一体どういう事、っと晃に聞こうと思ったけど、いつの間にかあいつはその場から姿を消していた。
「今の気持ち、包み隠さず伝えな」
……それって…………氷上先輩に告白しろってこと!?
てかあいつなんで!?
そう思っていると、不意に氷上先輩が近づいてきた。
「……三枝りんごさん、だよね」
「は、はい!?」
「……サンキュー晃」
なぜか先輩は、あいつに礼を言ってから私の前に立った。
「あ……あの……」
「……なんか、いきなりすっ飛ばしてこんなシチュエーションだから、混乱してるかな?」
「え、あの……どういう……」
「うーん……まぁ……いっか。君、いつも僕が本読んでる時、窓から覗いてるよね」
「ふえっ、えぇぇ!?」
ヤバイ、バレテル……バレテルヨ……
「別に怒ってるわけじゃないよ。でも……ずっと気になっててね。どんな娘なんだろって……それでこの前、後を付けてみたんだ。それがあの襲われた日」
「そ、そうだったんですか」
「うん……それでね、この娘は僕に好意を持ってくれてる。でも危ない目にあわせられない。……それに……可愛いから……」
「……えっ?」
今、可愛いって……?
すると氷上先輩は私に向かって、頭をさげた。
「…………僕は君を守ってみせる。だから付き合ってくれないか?」
…………突然の展開すぎて頭がパンクしそうだ。あの氷上先輩が私に告白してくれた、してくれた。
……でも……なんか違う……
「今の気持ち、包み隠さず伝えな」
不意にあいつの声が聞こえた。
……そっか、そうなんだ、そういう事だったんだ。
「あの、先輩……私からもいいですか」
「……どうぞ」
「……先輩。私も、先輩の事が大好きです。付き合いたいです……でも、今の告白は、あまり好きではありません」
「えっ」
「なんだか……今の聞いてたら義理堅いっていうか……しょうがないからって気がしました」
「………………」
「だから……私から言います」
……落ち着け私。
包み隠さず……今の気持ちを……
「先輩。私、あなたの事をずっと見てきました。かっこよくて、親切で、私を助けてくれたあなたが大好きです。大好きっていうこの気持ちがこんなに膨らんで……あなたに伝えます」
言える……言う……言ってやる!
私は一回深呼吸をして、先輩に言った。
「氷上先輩、私と、付き合ってください」
「………………」
言った!言ったよ!
「……ぷっ、くそ……僕の告白は失敗か……」
先輩はそう呟いて、そして私に向かって、
「あなたの、恋人になります」
そう言ってくれた。
「は……はひぃ……」
幸せすぎだ……
幸せすぎで……私はにやけ顔のまま、倒れてしまった。
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夕日が沈む校舎。その中から二人の男子が出てきた。
一人は背中に女子を背負っている。
「……あのへたれの冬彦がりんごちゃんに告白するなんて」
「お前がくれたチャンスだ。無駄にできないっておもってね」
「そのせいでりんごちゃん失神しちゃってるよ」
「あはは……でも、僕の告白は失敗しちゃったよ」
「ドンマイ、冬彦」
「うるせー、晃」
出てきたのは氷上先輩と晃だった。
そして私は氷上先輩におぶられていた。
「……ふゃ」
「あっ、目が覚めた?」
「えっ……あー…………」
少しキョロキョロして、そして今までの事を思い出して、トドメに氷上先輩におんぶしてもらっている。
私はビックリして、顔を赤らめた。
「わっわっわ!えっ!?」
「おはよ、りんごちゃん」
「えっ!?どうなってるの!?てか氷上先輩!?」
「やぁ、君の彼氏の氷上冬彦だよ」
彼氏……
そっか……私……
「キャーー!」
「うわっ!?暴れないで!?」
「あっすいません…………下ろしてもいいですよ」
「いや、このままでいいよ。軽いし」
「あっ、すいません……」
ご好意に甘え、私は氷上先輩の背中にしがみついた。
「てかあんた!?氷上先輩とどういう事!?」
「おっと、矛先がこっち向いた」
「いきなりコクりにきて、私がフッたら氷上先輩がいる屋上に連れていって、しかも電話!あれ相手、氷上先輩だったんでしょ!」
「あーわかったわかった、説明してやんよ」
「やんよ言うな!」
そう言って晃は話してくれた。
「オレと冬彦は従兄弟なんだよ」
「えっ!?そうなの!?」
「そうそう。んで、なかなか一歩が踏み出せないりんごちゃんと、へたれの冬彦の背中を、ちょいっと押させてもらったんだよ」
「へたれ言うな」
「わりぃわりぃ、でもこれでカップル成立、よかったね、りんごちゃん」
「……そ……そ……」
「えっ、なに?」
「ムカつくてめぇ!殴ってやる!そこになおれ!」
「わわっ、三枝さん暴れないで!」
つまり、恋のキューピッドだぜオレは、ってことか!
「はははっ、でもね……」
笑いながら、晃は私と氷上先輩の前に立った。
「言っとくけど……あの告白は本気だから」
そう言って振り返り、手を振りながら走っていった。
「冬彦に飽きたら、いつでもオレんとこ来いよー」
「………………」
「………………」
……えっ、マジで?
「……ライバル発言されちゃったな……」
「そうみたい……ですね」
「……負けてられるか」
「えっ?」
先輩がなにか呟いたかと思うと、今度は私に聞こえる声で言ってくれた。
「……三枝さん。……いや、りんご。必ず、幸せにしてやるからな」
「ひゃわは!?」
不意打ちすぎるよー。
先輩からの告白に、嬉しすぎと驚きで、私はまた気を失った。
ども、おはこんばんちわ、植木鉢です。
この度は《二人の彼との物語》を読んでいただき、ありがとなのです。
恋愛なんて初めて書いたよ……
なんか、下手な少女漫画みたいにwwwww
……言っとくけど!私、男よ!
っとまぁ、余談はこのあたりにして……「ドロドロ三角関係」を書こうと思っていたのですが、出来上がったのはちょっと複雑な三角関係。
ドロドロどこ行ったwwwww
なんか……もっと少女漫画のトキメキを読み込むべきかなぁ……
と、なんでもオールおKな植木鉢は呟いてみたり!
ではでは……
これ、続編書きたいなぁ……うん、筆遅のオレの事だからいつになることやら……
ということで最後になりましたが……
リクエストをしてくれた桜さん。
恋愛ビギナーのオレに、少女がときめくってどんな時?を教えてくれた腐女子の皆さん←おいwwwww
ありがとーござましました。←変な日本語使うなしwwwww
では、以上、植木鉢でしたノシ