陽光は目覚める
文才が欲しいorz
半神というものを知っているだろうか。
名の通りその身体の半分が神の体である人間を総称して半神と呼ぶ。
有名なのでいえばヘラクレス、知らない人もいるだろうがクーフーリンなども代表例のひとつだろう。
ヘラクレスはギリシャ神話の最高神であるゼウスの息子。
クーフーリンはケルト神話の太陽神であるルーの息子。
どちらも強く、数々の功績と武勇伝を残している。
「デミ…ゴッド?」
「体の半分が神の身体である人間だ。聞いたことくらいはあるだろ?」
確かに聞いたことはある。が、そんなオカルトが現実世界に存在していた事など考えもしなかった。
しかもその半神であるのが自分だと言うのだから耳を疑う。
だが狙われていることは事実。
現実を受け入れられずに死ぬなどそんな死に方はしたくない。
だからひとまず信じてみることにした。
だが、空輝にはどうしても分からない事があった。
「俺は半神なんだろ?だけど今までなんか能力的なモノも心当たり無いし、身体能力とか頭脳が優れてる訳じゃないぞ?」
男は空輝と向き合うと
「能力は目覚めさせないと発現出来ん。身体能力や頭脳は今お前の神としての力がゼロに等しいからだ。何、能力を目覚めさせれば徐々に身体能力は上がっていくさ。頭脳は能力を発動してる間だけだろうがな」
そう言った。自分が半神と言う事は
「神もいるってことだろ?」
すると男は苦虫を口一杯に含んで噛み潰したような顔になると
「ああ、忌々しい神が一柱いるよ」
忌々しい?どういうことだろうか?
この男は半神である空輝を助けに来たのに神が忌々しい?
空輝にとって明らかな矛盾。
それを聞こうとした瞬間―闇色の炎が迫るのを見る
男もそれに気付いたようで左右に別れて跳ぶ。
跳ぶと言っても空輝のは跳躍などではなくでんぐり返しのようなものだが。
「さてと。そいつを渡してくれないかな?能天使の長カマエル」
銀髪の長い髪を流した青年が言う。
「それはできない相談だよマンモン」
男――いやカマエルはそう言った。
「へぇ、君で僕に勝てるの?四大天使には負けるけど流石に智天使より下の天使に負ける気はしないなぁ」
「だろうな。俺では貴様に手傷を負わせるのが精いっぱいと言った所か。だがな」
カマエルは空輝を横目で見ながら言う
「こいつなら話は別だ。霊格の時点で既に貴様は負けているからな」
霊格。それは神や人、天使にも悪魔にもある霊的な格。
勿論だが神の霊格が一番高く。人が一番低い。
悪魔の霊格は決して低い訳ではないが、半神と比べればその差は歴然。
まず格が違うのだ。と、カマエルはマンモンにそう告げたのだ。
するとマンモンは大きく目を見開くと
「ク、ククククク―ァハハハハハハハハ!!!!」
上を向き大声で笑い出した。
ひとしきり笑い終わり、凄絶な笑みから一転して無表情になると
「大罪の名を冠する悪魔を舐めるなよ?」
マンモンはその言葉の半瞬後に手を掲げる。
するとマンモンの周りの地面はめくれ上がり、大きく隆起した地面から鋭い石つぶてが亜音速で打ち出される。
空輝とカマエルはその石つぶてを何発か喰らい、隆起した地面に巻き上げられると、その勢いのまま壁に叩きつけられた。
「ぐはぁ!!?」
空輝はかろうじて意識を保ち、目をこじ開けると、目の前にはあの闇色の炎。
顔を逸らし、なんとか避けるが悪魔の蹴りが空輝に襲いかかる。
悪魔の蹴りは壁ごと破壊し、空輝を吹き飛ばした
「はあ!!」
裂帛の気合と共に蹴りを放つカマエルだが、マンモンはそれを避けると同時にひじ打ちを繰り出す。
「かはっ!?」
鳩尾に綺麗に決まるひじ打ち。
「終わりかな?」
体勢を崩さずにそのまま仰け反ったカマエルに裏拳を当てる。
カマエルはそれを防いだはずだった。だがダメージは防御を破り、いとも簡単にカマエルを吹き飛ばした。
巻きあがる土煙。それが晴れるとボロボロになった二人の姿があった。
カマエルは意識を保っているが、余り動けそうな傷には見えない。
空輝はぐったりとその身体を地に伏せていた。
「さて、唯一の希望は途絶えてしまっ「待てよ……」まだ意識があったみたいだね。流石は半神かな?」
そう言うとマンモンは空輝に近づいて行く。
「させん…ぞ」
と、カマエルは空輝の前に出て、空輝を庇うように立つ。
それに応じたように空輝はゆっくりと、ひどく緩慢な動作で立ち上がる。
「この世には…魔術があって?悪魔に…天使…神に死神……果てには俺が…デミゴッドだぁ?」
空輝は口元に背筋が凍るような笑みを貼り付けて言った
「笑えねえな…全っ然笑えねえよ!!!」
その言葉に呼応するように空輝の手からまるで陽光のような光が漏れ出す。
カマエルは後ろを振り返ると、驚いた眼をした後に静かに笑う。
そしてカマエルは倒れた。まるで役目を果たしたように。
「この状況で目覚めるなんて……いや、この状況だからこそ目覚めたのかな?」
何事もないかのように言うマンモンだが、端正な横顔から流れる汗は彼の心境を強く表していた。
陽光は激しさを増し、収束された光は空輝の身体に確かな変化を与えた。
その背から噴き出すのは身の丈よりも少し大きい光の翼。
翼にある光が広がる。温かくありながら強い光。
それは爆発的な破壊力を以って広がる。
「何!?」
マンモンは咄嗟に障壁を張ると、魔力をこめ続ける。
破壊の嵐が止み、マンモンが辺りを見渡すと、廃ビルは崩れ、地面にあった瓦礫は塵になっていた。
だがそれだけの威力があったにもかかわらずカマエルには傷一つ付いていない。
選択したものだけを破壊する光。凶悪にも程があった。
マンモンそれを見ると口笛を吹いて
「これは流石に分が悪い。僕は退散させていただくよ」
霧の中にに溶ける様に、景色の中に消えて行くマンモン。
「待ち……やがれ…」
その翼を振るおうとするも、目覚めたばかりなのに力を使い過ぎた事と身体にある裂傷のせいで、体は悲鳴を上げ、翼は動かない。
――――見つけたぞ!あの人だ!
そういや魔術師も追って来てるって言ってたか?と思いながらいると、空輝の翼は急速に力を失い、空輝の身体から力が抜ける。
バタンと地面に倒れこみ、今日一日を改めて振り返る。
変人?と出会い、悪魔に追われ、悪魔と戦い、魔術師に追われる。
こんな非日常な一日を一言で締めくくる。
「全く、笑えねえな」
急展開過ぎますよねww
読者よ――着いてこれるか?
サーセンm(_ _)m