第36話 殺意
「おやおや、随分と暴れていますね~、ククッコラードもあの人間が気に入ってしまったようだ」
「なんでもいい、どちらにしろこちらに負けはない、それより準備はどうなっている?」
「問題ありませんよ、あとは時を待つだけ・・・」
洞窟は激しい爆発で満ちていた、空気の震えどころではない、何重にも重なったような爆音が轟き続ける。
ガラッ、という音がした爆発の衝撃で崩れ落ちた壁が持ち上げられた音だ。
「ふ~、危ねぇ」
メメントモリで体を支えながら立ち上がる。
そこで咳をする音が追加される。
「ゲホッゲホッ、まったく無茶をしてくれる・・・」
コラードもまた瓦礫に押しつぶされて仰向けになり横たわっていた。
「知るか、それより時間がないんだよさっさとテメェらの目的を吐きやがれ」
「フッ、そのために殺さなかったのか・・・いいだろう今は気分がいい」
コラードは笑みを浮かべライトを見た。
「我ら魔人はこの村に大規模魔界門を召喚させるためにここに来た」
「大規模魔界門だぁ!?」
思わずライトは大きな声を上げた、あまりに驚いたせいで体のバランスがうまくとれなくなったほどだ。
「そうだ、知っているだろうが魔界門には大量の魔力と生贄、そして魔人だけが使える呪文が必要だ、今回ここにいる魔人の数は3人、私、クロディウスそして、メディストだ。・・・そして大量の魔力の源それには・・・」
そこでライトの顔に緊張が走った、コラードが言いたいことがわかったのだ。
「・・・シェニミアか・・・?」
「その娘は考えられないほどの魔力を持っている、魔人ですら考えられないほどのな・・・」
コラードは説明を続けているが、ライトはそんな話は聞いていなかった。ただ段々と殺気の量が膨れ上がっていた。
「魔界門の製造には時間も影響する、あと1時間もあれば時は満ち魔界門は製造される」
「そんなことはどうでもいい・・・、残りの魔人の場所とシェニミアが居る場所を教えろ・・・・・・・」
ライトの目、それはさきほどとはまったく違う殺気に満ちた目だ、コラードは思わず鳥肌が立っていた。
「・・・この先に残りの魔人はいるだろう、娘は最奥部の儀式上に居るはずだ」
それだけ聞くとライトはメメントモリを腰に戻した。
「・・・俺の邪魔をするなら今度は殺すぞ・・・・・・・」
それだけ言うとライトは目にも止まらぬ速さでその場を立ち去った、そして残されたコラードは生まれて初めて死の危険を感じた。
「我らはとんでもないものを呼び起こしたぞ、最強にして最高の魔人、この言葉は覆されかねんものを・・・」
「まさかコラード・・・やられましたか・・・」
「クロディウス、侵入者の排除をしてこい儀式の邪魔はさせん」
「・・・わかりました、フフフ、楽しみですよまたあなたと戦えるとは・・・」
ライトはノンストップで洞窟を突き進んでいた、怪我ののことなど気にせずただ走り続ける、目には闘志ではなく殺意だけが灯されている。その姿を見た者はまちがいなく恐怖を抱くだろう。
手にはメメントモリが握られているがその刀身には血が滴っていた。
そして数秒後ライトは走るのをやめた、この先に敵が居るのがわかったからだ。
前方を睨むように進むライト、そこに突然声が乱入する。
「おや?随分傷を負ってますね・・・これで私と戦おうと?」
「!?」
ライトの頭上から突然声がし、そこを見るライトそこには空中に浮くクロディウスがいた。
「もう一度問いましょうか、これで私と戦うと?」
空中に浮いているクロディウスはライトを見ながら、少し笑みを浮かべながら言った。
「・・・・・殺す・・・・・」
ライトは本当に小さな声で言ったためクロディウスは聞き取れなかった、もう一度聞こうと思った矢先、突然メメントモリが目の前にあった。
「おっと」
クロディウスは虚空から剣を掴むと真っ向からメメントモリを受け止めた。
「これが君の答えかい?」
さっきとはちがい笑ってはいないが、余裕のある声で問いかける。
「・・・・・・・・・」
ライトは何も言わず再び攻撃を加える。
今度は常人では目に追えない速度の攻撃だった、だがクロディウスはまたしてもその剣を受け止める、そして剣を弾き今度はクロディウスが攻撃をしようとする。
だがクロディウスの攻撃はライトに当たる前にクロディウス自身が止めた、そして浮くのを止め足を付ける。
「まさか・・・・・」
クロディウスはライトを信じられないように見た。
「君、その剣は救済神の神殿にあるはずの剣じゃないかい?」
今度のクロディウスの声には余裕の意はなかった。
「・・・だからどうした・・・」
メメントモリを構え、依然としてクロディウスを睨んだまま答える。
「やはり・・・なら少し事情が変わりました・・・・・・・遊ぶ余裕はなさそうだ、全力でいかせてもらいます」
クロディウスは虚空から新たにもう一本剣を掴んだ。
同時に2人は動いた、一瞬、ライトとクロディウスはほんの一瞬の間に5回の打ち合いをした。
1回目はクロディウスが2本の剣で受け止め、ライトはメメントモリを両手で持ちお互いに叩き付けあう、2回目は同時に互いの首を落とすために剣を動かし互いに弾かれた、3、4回目もまた確実に息の根を止めるために攻撃をするがどれも弾かれあった。
音は一番最初の打ち合いで生じた音で全て掻き消され、さらにライトとクロディウスの間には衝撃波による爆風が吹き荒れる。
そして5回目ではお互いに拮抗した状態で止まっていた。
だが次はクロディウスが先に動いた、しかし攻撃を加えるわけではなくライトが元来た道を引き返し始めたのだ。
それを何の迷いもなく追うライト、今のライトの目に映っているのは魔人ではないただの殺害対象だ、そんな状態では正しい選択ができるわけがない。
移動している間にも戦闘は続いている、クロディウスの方が前を進んでいるがライトの攻撃を受けるために、ほぼ後ろ向きで移動していた。
「君はもしかしてその剣のことを知らないのですか?」
片方の剣でメメントモリの攻撃を防いだ時にクロディウスはライトにそう問いかけた。
ライトは何も言わず攻撃を続けたがやがて動きを止めた。クロディウスもまた動きを止め両方の剣を降ろし話を続けた。
「どうやら知らないようですね、なら教えてあげましょうその剣が魔人にとってどういう物か・・・」
次回更新もまた少し遅れ気味になるかもしれません、3月に入るまでには何とか更新したいと思いますが最低でも3月3日までには更新させてもらいます。
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