第32話 ドラゴン
ドラゴン、太古より存在している怪物、地域によっては神であり、悪の対象でもある。今では数が減ったが目撃情報がなくなることはなく、そのたびに国が大々的に動く。
「良いだろう、そのドラゴン俺が殺す」
ライトは今までゴブリンから追われていた男に向かってそう言った。
それから村の位置を聞きだすと男がなにか言う前にさっさと馬に乗り出発してしまった。
「でも師匠、予定は良いんですか?」
ドラゴンと闘おうとしていることよりも、これからの予定を心配するシェニミアは自分が思っているより、思考がおかしくなっているのかもしれない。
「どうせなんかあると思ってイレギュラーなことも予定に入ってんだ、ドラゴンを倒すくらいなんてことない」
ライトは馬を全力で走らせながらそう答える、ライトの目にはすでに煙が見えていた。
遮る物がない草原を走っているので、シェニミアにも見えているかもしれないがそれ以上に殺気が肌で感じられた。
「俺はちょっと掃除してからドラゴンの所に行く、シェニミアはどうする?戦ってもいいがあまりおすすめはしないぞ」
攻撃魔法を使えたとしてもシェニミアはまだ本当の戦いを知らないのだ。
「私は治療に専念します、ミロちゃんも居ますし」
(それでいいだろう、私もそろそろ寝るのも飽きた)
その言葉にライトは本気で殴ろうかと思ったが、次の瞬間激しい殺気を帯びた声が響き回った。
「おでましか・・・」
ライトはそこで馬を止めたシェニミアを下ろすと、ライトはメメントモリに手をかける。
「俺はここでドラゴンの相手をする、シェニミアはできるだけ戦闘からは逃げろよ」
メメントモリは構え高速で飛んでくるドラゴンを迎え撃とうとするライト、シェニミアはというとミロスが九尾の姿になりそれに乗って村の方へ向かった。
「ドラゴンと戦うのは3年ぶりか・・・」
全長はライトの20倍はある巨体がライトに向かってくる、ブレスをしようといているのか口から炎が見て取れた。
「我が名の元に答えろ!!メメントモリ!!」
メメントモリは輝きだした、それと同時にドラゴンがブレスを吐き出す。
ブレスは真っ直ぐライトに向かって飛んできた、もはや逃げられるタイミングを完璧に逃している。だが、ライトは避ける動作をまったく出さずに、縦にメメントモリを振り下ろした。
ブレスとメメントモリが激しくぶつかり合い、凄まじい音を出す。さらに爆発を起こし辺りは煙で包まれた。
「3年前じゃこれはできないな・・・」
煙の中からライトの声が響く、無傷ではないもののそこまでの怪我はなく真っ直ぐドラゴンを睨む。
それを見たドラゴンは空中を旋回し始めた。さらに再び口元には炎が見て取れた。
「空に居る限りそちらに勝ち目はない・・・とでも言いたいのか?」
口元に笑みを浮かべライトはドラゴンを見ていた。そして吐き捨てるように言い放つ。
「舐めるなよ・・・」
次の瞬間ライトが行ったことは単純だ、ドラゴンとの距離を一瞬でつめる。
いきなり目の前にライトが現れたので、ドラゴンは翼を正常に動かすことができなくなり落下を始めた。
だがライトは地面までの隙を逃さない。ライトは風の影響を受けない魔法を予めしてあり、落下しているのにも関わらずライトは剣を構える、その構えは剣先を頭に突き刺すものだった。
「俺は忘れないぞ・・・・・・・」
そしてライトは迷わずメメントモリを突き刺す、遅れて地面に落ち辺りは再び煙で包まれた。
(ふん)
ミロスは近くのゴブリンを吹き飛ばしていた、村に着くなりゴブリンはミロスに攻撃を始めて、その隙にシェニミアはけが人の回復を行っていた。
「これで大丈夫ですよ、立てますか?」
足から血が出ていた大人を再生魔法で治し、うまく回復できたかを聞く。
「あ、ああしかしあんたたちいったい・・・」
「えっと私は傭兵都市サークスの傭兵で、『黒雷』のライトの弟子です、今師匠はドラゴンと戦っていますが、すぐに来るでしょう」
その話を聞きシェニミアの目の前にいる男は目を見開いていた。
「サークスが助けてくれたのか?」
「助けたというより通りかかっただけなんですが・・・」
そうしている内にミロスはゴブリンを片づけてしまった。
「あの他の人たちは?」
「村には非常時に逃げるための洞窟があるんだそこに隠れているはずなんだが、場所は村の一番奥の村長の家の裏だ」
そう言って男は立ち上がり歩き出した。
「わかりました、では私は師匠を待ちます安全が確認でき次第そちらまで行きますので、それまでは隠れていてください」
「助かるよ・・・」
男は礼を言い急いで洞窟へ向かって行った。
「ミロちゃん、この辺りにまだゴブリンはいますか?」
(今のところはもういないな、だがこの規模の村を襲うゴブリンはそんなにいないんだが、大方ドラゴンが襲った後を狙って来たんだろうな)
村の家らしきものは何件か燃えていた、死体はほとんどがゴブリンだが中には黒こげになっている人間らしきものもあった。
「終わってるか~」
そこでライトの声が聞こえた、シェニミアが声のした方を向くと手を振りながら馬に乗るライトが居た。
「村人は洞窟まで避難しているようです」
馬に乗って近づいてくるライト、ふ~んと答えるがどこか浮かない顔をしていた。
「どうかしましたか?」
「いや、なんだちょっと急な仕事が入ってな・・・どうやらこの村に死霊術師の反応があるみたいなんだ・・・」




