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ウォーカー  作者: 麒麟
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第29話 議論戦争

(置いていくか・・・果たしてそれを主が黙って許すかな?)

 ライトは痛い所を突かれたように顔をしかめた。

「そこなんだよな~」

(ふむ、まぁこれだけは言っておくが先ほどお主がいた場所、まだ呪いが蔓延るその場に居てもなお、まず血だらけのお主を助けようとした)

 ライトはシェニミアを見た、手にはライトの血がかなりついていた。

「どうりでなんか腹に違和感があると思った、明らかに普通の治癒魔法とは違うこれは再生魔法だ、普通に傷を塞ぐだけなら傷跡に薄い膜が貼られるようなものなのに、これは新たな細胞まで形成して傷口を塞いである、どんだけテンパってんだよ・・・」

 ライトは腹の傷を見てそう呟いた、治癒魔法はシェニミアに教えてあるのだが、それを使わずに口頭だけでは到底できないくらい高度な魔法を使ったのだ。才能を開花させるくらい混乱していたのが伺える。

(たしかにあの時は再生魔法を使っていたが・・・おそらく主は再生魔法などまったく考えていなかったはずだ、ただお主を助けたかったそれだけだ)

 ミロスはあくまでシェニミアに味方するらしく説得をしていたがそこで話題を変えた。

(ところでお主あの剣はどうなった?)

「ああ・・・メメントモリ」

 ライトはそう呟くと目の前に剣が現れた、浮遊していた剣はやがてライトの目の前にゆっくり落ちた。(ふむ、メメントモリか・・・)

 古代文字の意味を知っているミロスは細い目をしたが、それ以上追及はしてこなかった。

「この剣は俺の記憶と経験をそのまま受け継いでいるからな、これほど俺に合った剣はないぞ」

 ライトは呪いの剣を手に取り刀身を見た、白銀の刀身からはどこか禍々しい感情が映っているようだった。

(その剣・・・まだ呪いが解けておらんな?だがこれは・・・)

 ミロスは刀身からでる微かな呪いの波動を感じ取った。

「わかるか?確かにこの剣は呪いがあるだがな呪いの根源は人間の意思だ、この剣の前任の持ち主はだれだか知らないがその前任者はこの剣を持ってなんらかの負の意思に染まりきった、俺はその負の意思を完璧に断ち切った、今のこの呪いは俺の意思を映した呪い、俺の負の意思を感じ取り呪いが蓄積されている、俺だけが操ることができる剣だ」

 確かにミロスはこの剣の呪いを感じ取ったとき、普通の負の感情ではないと思った、暗くはあるものの強い意思で決して闇に堕ちることはない意思、それはミロスにはライトそのものにも見えていた。

 そこに別の声が乱入した、元気過ぎるとでも表現すればいいのかとにかく底抜けの元気さが売りのココだった。

「やぁやぁ、無事でなによりだ君が血だらけの時は驚いたがやっぱり生きていたね」

 手を振りながら依然白装束で身を纏っているココは、やっぱりと言うべきか笑いながら歩いて来た。

「俺がそう簡単に死ぬか」

「いやいや実際危なかったよ~、あの場にその娘が居なかったら今頃相当危険だったね」

 ココはシェニミアを見ながら言った、依然寝たままのシェニミアはスゥスゥと寝息を立てて寝ていた。「ふん、ところで下級神のお前に聞くがシェニミアになにか感じるか?」

「莫大な魔力量を持つ人間、丁度おもしろいことになっているから見てみるかい?」

 心底楽しそうに言うココ、ライトは何を言っているかわからなかったが、とりあえずシェニミアを起こさないようにベッドから降りた。

「うっ・・・」

 ライトは軽く腹に痛みを覚えたがやがて普通に立ち上がった。

「さっこっちだ~」

 手に旗を持ち案内し始めるココ、ミロスは興味がないのかベッドの上で寝ていた。

 ココに着いて行くとライトの耳になにか怒鳴るような声が聞こえた。

「なんだ?」

「いや~あの娘に興味を持った下級神達が互いの意見を立てて議論しているんだよ」

 そして歩いて行くとその先には幾つもの椅子がある場所に出た。真ん中にはテーブルと黒板のようなものがありそこには様々な資料が貼られていた。

「・・・・・・・、つまりあの魔力量の源は異世界の何らかな力が関わっているはずだ!」

「バカが!異世界などいくらでもあるがそのどこにもこんな事例はないんだぞ!そんなわけがあるか!」「次は俺の番だな!俺はあの魔法陣に着目した!結論を言おう・・・あの現象は、最上級神の気まぐれだッ!!」

 あらゆる過程をすっ飛ばして結論にいきなりいった、下級神はさっそくバッシングを浴びた。

「・・・なんだあれは?」

 ライトは呆れた様子で見ていた、ライトの目にはおよそ100以上の下級神がいたのだ。

「最初は『なぜ人間にあれほどの魔力量があるのか?』っていう疑問から始まったんだけどね、今では議論戦争まで発展してるね~」

「それに最上級神まで出て来てるぞ。大丈夫か下級神?」

 前にミロスは下級神を世界そのものと説明していたが、これを世界そのものなんて言われても納得がいかなった。

「それでお前の意見はどうなんだ?」

「そうだね~ここじゃ少し騒がしいからね場所を移そうか」

 再びココは歩きだし騒がしい部屋を後にした。

 そしてしばらく歩きやがて本が所狭しと並べられている場所に来た。

「そこの椅子に座るといいよ、気にしなくていいここは僕の部屋だからね」

 言われた通りライトは近くにあった椅子に腰かけた、ココも机の所にあった椅子に腰かけた。

「さてこれはあくまで僕の推論だが、あの娘は悪魔、魔人、神格、どれかの生まれ変わりだね」

「生まれ変わり、か・・・」

 実際ライトはシェニミアに古代文字を見せた時、見覚えがあると言っていたのを覚えている。

「生まれ変わりと言ってもあれほどの魔力量だ、悪魔の上級レベル以上でもないとあそこまではいかないよ、もちろんいままでそんな事例はない、ましてや神格となると生まれ変わる依然に死んだ事例も少ないし、ここは魔人の生まれ変わりっていうのがあたりかもしれないね、実際魔人の死亡件数は少なくないしね」

「だが魔人は魔界の住人のはずだ魂がこっちの世界に来ることがあるのか?」

「そこまでいくと世界を超えてしまうけど、魂は基本的一ヶ所に集められるよ輪廻転生とでも言うのかな、魔界であろうがなんだろうが魂は等しい価値があるからね、どこに行っても不思議じゃない」

 ここでココは指を立てた。

「だけどここには疑問が残る。魂の審判が行われればその者が居たという存在以外は消えてなくなるはずなのに、あの娘にはあの魔力量が残っている、それはなぜなのか?」 

「生まれ変わりじゃないとすれば・・・憑りついたか」

 ライトは確信に近づいたような気がした、たしかに生まれ変わりじゃなければ記憶の一部がシェニミアにあってもおかしくはない、さらにあの魔力量も納得がいくのだ。

「憑りついたか・・・いい線行ってるかもしれないね、でもあくまで推論だこれが正解とは限らない「師匠ッー!!!!!」・・・よ」

 突然叫び声にも聞こえるような声が乱入した、声の主はシェニミアだろうどうやら目が覚めたらしい。

「行くか・・・」

 ライトは椅子から立ち上がり入ってきたドアを目指して歩き出した。

「・・・・・・・最後に言っておくがどんな結果になろうが、もしシェニミアに危害が加えられそうになったら・・・下級神だろうがなんだろうが関係ねぇ1人残らず殺す・・・それを忘れるなよ」

 莫大な殺気があふれ出して場の空気が一気に重くなった。ライトはそれだけ言うと部屋を後にして続くように殺気も消えた。

(1人残らず殺すか・・・その言葉に揺らぎはないようだね)



 

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