第24話 下級神ココ
長らく更新せずに申し訳ありませんでした
ライトの殺気に当てられてか、それとも正体不明の殺気にあてられたのか、アンデットは姿を消していた。なにもない狭い道を歩いて行くと、広い場所に出た。
「・・・てめぇか、鬱陶しい殺気振りまいてる奴は・・・」
ライトの目の前には何本もの触手がある魔物だった、その魔物には目が幾つもありその全てがライトの方を向き次の瞬間、奇声を上げ辺りが一斉に震えだした。
「・・・今俺はちょっとばかしイライラしてんだよ、その憂さ晴らしに付き合ってもらうぞッ!!」
ライトが吠え剣を構え一気に前方の塊へと距離を詰めていく、魔物は触手を使いライトへと攻撃を加える、だがその触手をいとも簡単に切り伏せ、ますます距離を詰める。そして目の前まで行くとライトは剣を横へと薙ぎ魔物を斬りつけた。だが、
「なんだ!?」
魔物は確かに真っ二つになっていた、だがそれでも一向に殺気が途絶える気配はない、ライトは一瞬の判断で魔物からの距離をとる。
「なんだこいつ!?」
ライトは疑問の声を上げるがすぐに次の行動へと移った、さらに距離を取り魔法を唱え始める。
「我が手に炎、敵を焼きつくし、灰となり塵とせよ!!業火の一撃!!」
魔法は凄まじい勢いで魔物へと飛んで行ったが、魔法は突如として消え去った、いや正確には吸い込まれた。
そして魔物は吸い込んだ魔法をそのままライトに吐き出して来た。
「ちッ!!」
ライトはシールドを張りその魔法を真っ向から挑んだ、だがその魔法はライトが創りだした者であり、それとまったく同じの魔力のシールドをぶつけても互角なのは目に見えている。さらに吐き出したのと同時に触手まで動かして攻撃をしてきた。
「このやろ!」
ライトはシールドの魔法を解き一瞬でその場から姿を消した。そして元居た場所から離れた所にライトは姿を現した。
「くそったれ、余計イライラして来た」
吐き捨てるように言うと空間魔法の倉庫から新たな剣をもう一本取り出した。二刀流の構えをしてライトは再び魔物へと突進していった。
突進している間にも触手が飛んできたが、微かな残像を残してライトは高速で触手を避けて行った。
そして繰り出される剣舞、もはや目で追える速さではない剣は面白いように魔物を切り刻んでいった、触手は全て切られていき、ボトボトと不気味な音を立てて落ちていくやがて魔物は全てが切られ跡形もなく消えた、だが、
「・・・くそ気持ちわりぃな、くそったれ、こんなんになってもまだ殺気振りまくるのかよ・・・」
そしてライトによって切り刻まれた肉片は再び集まりだし、元の形へと戻った。
それを見たライトは少し考えた後に一旦後ろに下がり、掌を魔物に向けて魔法の詠唱を開始した。
「万物、時の狭間の扉を開け全てを無に帰す役割となせ!!」
詠唱を終えると魔物の周囲は真っ黒の靄が現れた、それは次第に魔物を囲むように広がりやがて魔物は見えなくなった。
「黒の扉・・・」
そう呟いた瞬間魔物は黒い靄と共に跡形もなくその場から消え去った。
そしてライトはその場に膝を着き軽く息切れした形になった。
「・・・はぁ、はぁ、はぁ、くそッこんなことでばてるなんて・・・」
魔力の大量消費により一時的に体力が激減したのだ、これによりライトはしばらくその場から動けなかった。
「いやはや、お見事だ。まさか時空を飛ばすなんて並大抵のことじゃない」
暗闇から突然声がしてライトは、魔力が急激に消費した体をほぼ無理矢理動かして、声のした方に剣を向けた。
「おっと、疲れてるんだから無理は禁物だよ、それになにも僕は君に危害を加えるつもりはない」
依然にして暗闇から出てくる気配はなく、ただ声が聞こえてくるだけだった。
「誰だお前・・・」
ライトはできるだけ疲れている事を隠すような喋り方で聞いた。
「うんうん、それが妥当な疑問だろうまあでも君の事だ大体の予想はできているんだろう?」
見透かすような喋り方をする声の主に、ライトは軽く笑うように言い返した。
「下級神だな・・・」
「大正解だ、僕は下級神ココ。この洞窟の監視と神殿の管理が仕事かな」
無駄に元気な奴だな、とライトは心の中で思った。
「監視ね・・・それで俺の評価はどうなんだ?」
ライトは見透かしたような笑顔で聞いた、下級神ココも嬉しそうに言った。
「鋭いねぇ、確かにあの魔物をここに呼びだしたのは僕だよ、これから神殿に向かう君の評価をつけなきゃいけないのも僕の仕事でね、さて結果だったね・・・まぁ初めて君がここに来た時からわかってたことだからね、合格だよ文句なしだね」
だがココの話はそれだけでは終わらなかった。
「でもねこれから先は君一人で行かなくちゃならない、他の一人と一匹は少し待ってもらう、ああ心配しないでね安全は保障する、それにあの九尾までいるんだ関わりたくもないね」
「そうかなら行く前に戻って話をしてこよう」
そう言ってライトは疲れている体を無理やり動かすように元の道を引き返して行った。ココはというとその場から消えていた。
「・・・というわけだ、ここから先は俺一人で行くからお前等はこのままここに居るも良し、先に洞窟から出てても良いぞ、どうする?」
恐ろしく適当な説明をして寝起きのシェニミアに理解させるライト、説明が単刀直入過ぎて理解が追いついていないシェニミア、興味なさそうに聞いているミロス。
(私はどっちでもかまわんぞ)
真っ先にミロスがそう言い判断はシェニミアに任された。
「えっと・・・師匠はこれからどのくらいで戻ってくるんでしょうか?」
「早ければ1日掛からず戻ってこれるはずだ」
即答、さらに続けて言葉を口にする。
「そこでシェニミアに宿題を出しておく」
「?、宿題?」
首を傾げているシェニミア、ライトは満足そうな顔をしてその宿題を教える。
「空間魔法の習得と攻撃魔法の習得、さらにオリジナル魔法の開発だ」
「???」
ますます意味が理解できなくなったシェニミア、辛うじて理解できたのは魔法を練習しろとの事だった。
だがそんな事だけを理解していても話は進まないのでライトはその魔法について説明を始めた。
「空間魔法は最初に設定した空間を如何に正確かつ崇高に創り上げることだ、つまり最初が肝心だな、攻撃魔法はそうだな~まずは炎の球体を創るところから始めてみると良い、オリジナル魔法はそのまんまだ自分だけの魔法を考えれば良い」
「は、はぁ?」
(わたしも魔法についてはある程度知っているつもりだ、わからないことはわたしに聞いてもかまわんぞ)
「ああ、それでもいいな」
勝手に話が進んでいるがシェニミアはまったく理解が追いついていなかった。
「と、とりあえず宿題の件についてはわかりました・・・ですが師匠は本当に帰ってくるのですか?」
シェニミアの目には不安が見て取れた。
それを間近で見てライトは初めての感覚が湧いてきた。それは不安だ。
ライトは修行時代でも不安という感情を知ることがなかった、命は何度も落としそうになったがそれでも不安になることはなく、いつでも自分に自信を持っていた、だがシェニミアが不安を感じてるのを見て初めて自分の自信というのもが揺らいだのだ。
「俺は、嘘はつかないさ、すぐに帰って来てやる」
言葉には本当に薄く震えがあった、シェニミアはそこに気付くことはなかったが、ミロスにはわかったらしく目を少し細めていた。
「・・・わかりました、待ってます」
ライトはシェニミアの頭を撫でると魔法をシェニミアにかけた。
「俺が今できる最強の防御魔法だ、魔力の持続時間は3日間だがもし俺になにかあれば魔法は解ける、だがこれは俺が帰ってくるための目印だ、俺は必ず帰ってくる」
それを言うとライトは静かに元来た道を歩いて行った。
その姿をシェニミアは見ていた、その目には薄らと涙があった。
(あやつはそう簡単には死なん男だ安心して待ってればひょっこり帰ってくる)
「はい・・・」