第1話 黒き戦士
巨大大陸モーラス、その大陸では幾つもの国があり何百年前は戦争をしていた。だが、今の大陸モーラスで戦争は起こっていない、何十年と続いた戦争に嫌気が差し全ての国が自ら和平を求めていったのだ。結果戦争は終わりを迎えた。
モーラスには様々な国がありその中には盗賊が治める国、民が自ら王になれる選挙の国、魔法に特化した国、貴族が支配する国、傭兵が治める国、王により支配される国、等様々な国がある。
その内の1つにサークスという国があるそこは傭兵が治める国だ。傭兵の国では強さが全てという絶対的な掟があった。強い奴は上、弱い奴は下のような階級制度。そんな国に青年はいた。
青年の名はライト、ライトがサークスに来たのは11歳。ということになっている、なっているというのは当時のライトを知る者は全員11歳には見えないという感想だった。目には覚悟と復讐心が宿り、体は小さくてもしっかりと鍛えられ、腰には剣が挿してある、年齢は16歳を超えていると見られていた。当時のライトはサークスに来るなりある情報を聞きまわっていた。
盗賊の居場所を知らないか、と。
そしてライトは情報を集めるなりサークスを出て行き何処かへ消えていった。
その1ヶ月後サークスに再び戻って来たライトは傭兵として登録してサークスの住人となった。
巨大大陸の中に国の1つ、リオーネこの国は貴族が支配する国だ、なにをするにしても貴族が先そんな貴族贔屓の国だった。だが国の住人はそんな場所で生きていかなければならない。
その国の領土内の森に1人の青年が居た。青年は全身を黒いマントのような物で覆っていた。外見年齢は20歳に見える。だが青年の年齢は16歳だ。
青年は旅をしていた、このリオーネに来たのもたまたま通りかかったからだ、空は雲で覆われており今にも雨が降りそうだった。そんな時、遠くから大きな音がした、馬の鳴き声と人の叫び声が聞こえた。
青年は目を見開き、その音がする方に凄まじい速さで走り出した。その速さは普通に馬と同じ程だった。
音の近くにやって来た青年は茂みから様子を伺った。そこには血まみれの人が居た。馬車には鉄格子が着いている、それは奴隷を運ぶための馬車だった。そして馬車の周りを囲んでいるのは汚い布で覆われている男達10人。それは盗賊だった。
「ハハハッ!!大量大量、このまま俺達が運べば金は俺達の物だ」
盗賊のリーダーらしき男が笑い声を上げる。それにつられて周りの盗賊も笑い出す。
青年は静かに立ち上がった。そして唐突に雨が降り出した。盗賊のリーダーが笑うのをやめた。
「おい、なんだお前そこから隠れて見てたな、ハハハッ!!そのまま隠れてればよかったのにわざわざ出てきてくれるとは。」
「確認だ、お前達はそこで何をしていた?」
青年は静かに、だがはっきりと告げた。
「見ての通りだよ!奴隷商を襲って奴隷共を奪い俺達が奴隷を売りさばく!お前も売りさばいてやるよ」
「そうか・・・なら次は別れの挨拶だ・・・じゃあな・・・」
青年は突然別れの言葉を言い、姿を消した。次に青年が現れた場所は盗賊のリーダーの目の前。その場所に立ち青年は剣を突き刺す。
一瞬の事で男はなにが起きたかわからなかった。そして結局男はなにをされたかわからないまま地面に倒れた。
周りでは驚きの声が上がり一斉に武器を出す残りの盗賊達、そんな事はお構いなしに再び姿を消す青年、そしてまた盗賊の前に姿を現し盗賊を切りつける。
それが繰り返され1人、また1人と殺していく。そして最後の1人を殺した青年は静かに立ちつくし雨が降る空を見上げる。その状態を数秒続け馬車の方へ歩いて行く。
馬車の後ろの鉄の扉を強引に開け、中を見る。そこにはボロボロの服を着た人間が全部で10人程居た。
「盗賊は死んだ、奴隷商も生きてはいない、もう一度自由になりたいなら出ろ、そうじゃない奴はすきにしろ。」
そう冷たく言い放ち奴隷達の枷を外していく。1人、1人外していくそして最後に青年はある少女の前で手が止まった。その少女は目に光がなく、体も無気力になっていて。目は開いているが、なにも見えていない、まさに心が死んでいる少女。
それを見て青年が思った事は、
(まるで昔の俺だな・・・)
その少女を静かに見つめて、青年は何かを決めたように少女に手を伸ばし少女を抱き上げた。他の奴隷は枷が外れて扉から出て行き、外に出ていた。その中の1人に青年は話掛ける。
「この娘の連れはいないか?」
青年に聞かれた奴隷は首を横に振った、そして擦れた声で聞いた。
「あんたは?」
「俺はライト傭兵都市サークスの№10だ。」