第15話 進軍
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ライトが戻ってくるとシェニミアは安心したような表情をした。
「なんだよ、あれくらいじゃ俺は死なないぞ?」
呆れたような声を出すライト、だがそのままライトは深刻な表情をしてシェニミアに告げた。
「ただちょっと緊急事態でな一刻も早くメリーゼに行く事になった、そこでこの馬を使う。シェニミアは俺の前に乗ってくれ。」
そう言ってさっそくシェニミア持ち上げてを馬に乗せる、ミロスもシェニミアの肩に乗っていたので一緒に乗る形になる、後にライトも乗り手綱を掴み馬を走らせる。
馬に初めて乗ったシェニミアはどうも怖くはないらしいが、速すぎるのか少し顔が歪んでいた。
「くわしい事情は言えないが、簡単に言うと長い平和に終止符を打とうとしているやつらがいる!」
馬を走らせながらシェニミアに大まかな事情を告げる。
「前にも言った通り『国を裁く者』(ジャッジマスター)は平和を守る者でもある、それは何としても防がなきゃいけない!」
物凄いスピードの中で事情の説明をするライト。
「まず向こうに着いたら俺は国王オルテマス・デトミスコに会いに行く、シェニミアは適当に宿を決めておいてくれ。」
一方的な会話になっているがシェニミアは話ができる状態ではなかった、だがなんとか了解の意思を表した。
数分後、遠くに町が見えだした、だが町からは煙が上がっていた。
「ちっ!!」
ライトは舌打ちをして突然馬の走りを止めさせる。ライトは馬から降りてシェニミアに言葉を掛ける。
「シェニミアはここで待っていろ、いざとなったら防御に徹して防ぐんだ。ミロス、シェニミアを頼んだぞ」
(安心しろ)
「師匠・・・?」
シェニミアの顔には不安と困惑の表情で埋まっていた、ライトはシェニミアの頭を撫でるように手を乗せ優しい声音で告げる。
「安心しろ、すぐに終わらせる。」
笑顔で告げ、そして手を下ろすとそこにライトの姿はなかった。
王都ストームフォウスの防壁は見るも無残な事になっていた、所々壁が砕けており上には物見の兵士らしい人が弓の餌食になっていた。門は開けられており、そこから見えるのは火に包まれた家等だった。
一瞬遠い過去の記憶が蘇るライト、それを強引に振り払い気持ちを落ち着かせる。城に続くための道には兵士や一般の人らしき人間だ血だらけで倒れていた、ライトは静かに心を落ち着けた。そしてある魔法の呪文を詠唱した。
「水の象徴にして天の雫、我が命ずるままにその力を降り注げ!!」
詠唱を終えると空には黒い雨雲が現れたそれは王都を囲むように広がりそして、雨を降らせる、その雨は魔力を含んでいるため、みるみる火を消していく、数十秒振り続けた雨は止んだ。王都の火は完璧に消えた。
ライトは剣を取り出し片手で持ち、城に向かって歩き出した。さらに剣を持っていないもう片方の手で指を鳴らし魔法陣を創りだした。前にクラストに連絡をした時と同じだ。
魔法陣にはクラストが映っていた。
『事情は大体わかっている、もうこちらからも戦力を送っている、『赤爆』をとりあえず送っておいた、お前は王都ストームフォウスの城、ドラスト城へ向かえ、そこに王も居るはずだ。それじゃあ検討を祈る、ああ、あと実行犯に関しては『青氷』を送ったから心配はいらない。』
一方的に告げたがライトは気にしていなかった、再びライトはドラスト城へ向けて足を運んだ。
ドラスト城には様々は死体が転がっていた、一つはメリーゼの鎧を着る人、二つは真っ黒に染めた鎧を着る人、三つは人間ではなくゴブリンが倒れていた。
ライトはメリーゼの鎧を着る者に近づいた、その人はほんの少しだけ息があった。
「おい・・・国王オルテマス・デトミスコはどこにいる・・・?」
声は沈んでいたがはっきりしている声音で質問をするライト。
ライトの顔を見て『国を裁く者』(ジャッジマスター)を知っているのか、その兵士はライトが『黒雷』であること確認した。
「『国を裁く者』(ジャッジマスター)・・・来て、くれたのか・・・・・。国王・・・は、ドラスト城の最上階に居るはずだ・・・、どうか、守ってくれ・・・俺達の、最高の王様だ・・・。」
兵士は言うだけ言うと、静かに息を引き取った。
「・・・・・・」
ライトは沈黙し、静かに顔に布を掛ける。
そして立ち上がりドラスト城へと足を踏み入れた。
城内は静かなものだった、廊下は血で染まっており所々人やゴブリンが倒れている。
階段を登り最上階へ向かって行く際使用人らしき女が廊下の端で震えていた。
「おい、どうした?」
その人に駆け寄り、事情を聴く。
どうやら彼女は運良く助かったらしいが、周りが死体だらけで腰が向けてしまったらしい。ライトはとりあえず城から出るように言い、魔法による防壁をしてその場を後にした。一緒に居て、と言わんばかりの顔をしていたがライトはそれを振り払い、最上階へ向かった。
次に出会ったのは真っ黒な鎧を着た兵士だった、剣を持っておりそれは赤で染まりきっていた。
「まだ、生きているやつがいたのか。」
兜をしていて顔は見えないがどうやら笑っているようだった。ライトは静かに剣を構え一瞬で決着をつけた、ガシャン!!、という鎧が当たる音がした。
「お前みたいなのが一番胸くそが悪い・・・。」
吐き捨てるように言い、再び最上階へ歩いていった。
その後も何回か戦闘になったが、ライトはほとんど一瞬で片づけていった。
そして最上階への最後の階段を登る、登り切った先には大きな扉がありそれは堅く閉ざされていた。それを壊すために丸太を何回も叩き付けている兵士が20人程居た。
ライトはそれを見て手を掲げ詠唱をした。
「我が手に炎、敵を焼きつくし、灰となりちりとせよ!!」
詠唱後、ライトの手には炎が渦巻きそれを前方に繰り出すために構える。そしてそれを発射させる。
「業火の一撃!!」
それは物凄いスピードで飛んでいき、前方の20人に直撃した。爆発音がして、扉ものとも吹き飛ばす。
廊下や元扉があった場所には火が付き燃え盛っている。それをライトは再び魔法を使い消す。
ライトは火を消し終えると扉の奥へ入っていく。そこには10人程の兵士と奥に王族と思われる人間が立っていた。兵士は突然の爆発に驚きを示していたが、次は真っ黒な姿をした男が入って来たことにより警戒し、剣を構えていた。
「傭兵都市№10『国を裁く者』(ジャッジマスター)『黒雷』のライトだ。王への謁見を求めたい。」
短くまとめた言葉を告げる。『国を裁く者』(ジャッジマスター)と聞いた兵士はざわざわ、と騒ぎだした。
「私がメリーゼ国王オルテマス・デトミスコだ、『黒雷』のライトと言ったな、助かったありがとう。」
後ろから前へ出てきた男はライトに向け紹介と礼を言った。
「さっそくだが、敵の本隊はどこに行った?」
ライトは本題と言わんばかりに質問をする。
「敵・・・ゾドラスの本隊は城を制圧すると少しの戦力を置いて消えた・・・」
ゾドラスとはメリーゼの隣国にある国だ。今回突然ゾドラスの兵とゴブリンの混合兵が現れ町を襲いだしたらしい。
「目的が今だに理解できないのだ・・・。」
オルテマスは疑問の声を上げる、ライトはその言葉に答えるようにオルテマスへ告げる。
「それについては俺が説明する。まあ簡単に言っちまうと領土だな、だがやっかいにもどうやらゾドラスには闇ギルドがついている。」
闇ギルドとは盗みから暗殺まで様々な仕事を行うギルドだ、そこには法なんてものはなく殺人に躊躇がない者ばかりだ。
「闇ギルド・・・。」
「それに関しては安心していい、暗殺ギルドには他の『国を裁く者』(ジャッジマスター)が向かってる、そろそろ潰されているはずだ。そしてゾドラスにも『国を裁く者』(ジャッジマスター)が行っているはずだ。俺の仕事は今からあんた達を守ることと、残存勢力の排除だ、とりあえず城の中の奴等は一通り潰した。というわけで俺はこれから町の掃討に行く。ここはそこの兵士に任せても大丈夫だな?」
ライトの説明を聞きその場に居た全ての人間が唖然としていた。闇ギルドを潰すという言葉、ゾドラスに国を裁ける唯一の存在が向かうという言葉、たった1人で城の残存勢力を潰したという言葉、その全てがもう彼らの常識では追いつけない場所にあった。
無言でいるオルテマス達を見てライトは困ったような表情をした。
「あ、ああ。」
やがてやっと返事をしたオルテマス、それを聞いたライトは満足した顔をした。だがすぐにその表情は真剣なものへと変わる、その理由はライトの後ろに絶大な魔力を感じたのだ。
「中々面白い所ですねぇこの世界は。」
ライトが振り返るとそこには時空を無理矢理歪め穴を開け、黒い靄の奥から1人の男が喋りながら歩いて来た。
「おやおや、ここにも楽しそうなが人間が1人。」
男はにやにや笑いながらライトへと近づいていく、ライトは警戒しながら王達を下がらせる。
「やる気かい?いいよ、こちらとしても大歓迎だ。」