第10話 処分
ライトとシェニミアは上に向かうエレベーターのような物に乗った。仕組みを聞いたシェニミアの目はまたしてもキラキラと輝いていた。仕組みは魔力を利用したものでクラストが開発した物らしい。
最上階に着いたライトとシェニミアは廊下を歩きある部屋の前まで来た。
「で、では私はここで待っていますので。」
「何言ってんだ?シェニミアも入るんだよ。」
「ええぇー!!、無理です!!嫌です!!怖いです!!」
大きな声で叫びだすシェニミア、それを何とか宥めるライト。
「くそじじいにお礼くらい言っとけば出世のチャンスだぞ。」
「そ、そそそそ、そんな事言ったって怖いものは怖いし・・・。」
依然怯えたままのシェニミア。
「わかったから俺の後ろに居れば大丈夫だから、な?」
「ううう、わかりました・・・。」
何とか承諾したシェニミア、ライトは安心したような顔をして扉を開いた。
「ようくそじじい、本日は最悪の顔を見て嫌な日になりそうで。」
ライトは入るなりいきなり悪態をついた。それに返答したのは真っ白と言うより白銀の髪をしたライトとそう変わらない歳のように見える、青年だった。
「ようくそガキ、こちらも朝から最悪な顔を見て不愉快な一日になりそうだ。」
お互いに悪態をついた後ライトは中へ歩きだした。中は豪華なつくりの部屋で中心に10個の椅子が並べられておりそこには、クラストを始めとするガズ等も座っていた。ライトはその内の一つに腰を掛けた。シェニミアはその後ろに依然怯えた様子で立っていた。
「おやちょっとライト、そこの御嬢さんはどちらさま?」
ライトに聞いたのは10個の内の一つに腰かけていた女だった。
「ああファウンド、こいつは俺の弟子だ。・・・手出すなよ・・・」
最後の方はライトの声が少しだけ低くなった。それを聞いていたのか聞いていなかったのか、ファウンドは舌を舐めていた。
「うふふ、とってもかわいらしいわねぇ・・・」
突然寒気を覚えたシェニミアは肩を震わせて周りをキョロキョロした。
「まぁいい、それでは全員集まったことだしさっそく会議を始める。議題はどこぞのくそガキの不始末の件についてだ。」
軽い挨拶のようなものが済み、さっそくクラストが本題に入った。
「まずはその後について説明する。先刻『国を裁く者』(ジャッジマスター)『黒雷』のライトが行った、貴族国リオーネの裁き後、新王レビアンによる市民平等国家建設が最優先に実行されている、平民になった下級貴族達とのいざこざも軽減の一途を辿っている。そして元国王デューレン・ドラミク及び重役貴族は先日ここサークスへ到着、現在は罪人安置所に居る、明日にでも裁きを行う予定だ。」
そこで一旦クラストは言葉を切った。一間を開けて続きを喋り出す。
「そして今回集まってもらった原因である『黒雷』のライトに聞きたい事がある。これらの事をなぜ直前に連絡してきた?」
ライトはリオーネを裁くさい、城に強行突入する直前にクラストへ連絡を入れたのだ。
「あれは~・・・ただ忘れてただけで~・・・・・・」
「ほう、上司に連絡すらできないなんてなぁ。」
ライトは痛い所を突かれてしまい、目を背ける。
「それはもう過ぎた事だが、次は処分について告げる。『黒雷』のライトにはこれより極東の島国に行ってもらう。そこである事を調べて来てもらう。」
いきなり出張の命令をされライトの顔には、面倒、という言葉がはっきりと書かれていた。
「ある事とは、最近極東に多発生している地鳴りの調査だ。資料を後で渡すから目を通しておくように。」
傭兵都市は完全実力社会のためクラストの命令は聞かなくてはならない、その事を一様理解しているライトはしかたなく了解した。
「わかった、んで具体的に極東のどこに行けばいいんだ?」
「具体的にはある山に行ってもらう、そこには古くからの神話があるとされている場所で、神住むとされている。名前は天獄山だ。」
まるで天国と聞こえるその言葉はまちがいで、天国の国は地獄の獄なのだ。
シェニミアはいままでの話を聞いていて、あまり理解ができておらず首を傾げていた。
「わかった、ならすぐに出発させてもらう。ああそれと、くそじじい、こいつがシェニミアだ。」
思い出したかのように唐突に紹介するライト、シェニミアはいきなり前に出されて今にも泣きそうな表情をしている。
「え、えっと、そ、その杖、ありがとうございます、それでこの文字は?」
何とか泣くのを堪えてクラストへお礼の言葉を言うシェニミア、そして杖に書かれている文字の質問をした。
「よろしく、ああ、その文字かそれは古の言葉で意味は『淀みのない真っ白な純白』という意味だ、まさに君にはぴったりだろう。」
「はぁ、ありがとうございます。」
ぺこり、と頭を下げそそくさとライトの後ろへ下がるシェニミア。
その後さっそく出発するために部屋を出て行くライト。残された8人は部屋の椅子に座ったままそれを見届けた。
「そんでクラストよ、あの娘はいったいなんだ、人ではありえない魔力量だぞ。」
いままで黙っていた、ガズがライトとシェニミアが出て行った後に口を開いた。
「わからない、だが少なくともあの杖を持っている限り余程の事は起きないはずだ。」
誤字があり修正しました。すみません。