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真相

 いつものように幸せ…。そしていつも変わらぬ日常。そんなのは普通に存在すると思うんだよね。俺は。

「ってか、お前そんなに食べるんじゃねぇ!それは俺の分のプリンだ!!」

「いいじゃ~ん♪名前書いてなかったんだからさ~」

「言いながら更に食ってんじゃねぇよ!香澄!」

 こんな風にプリンを取り合うような平和な日常。こんな平和が続いてることが、何よりの証拠じゃないか?

 そんな風に思っていた。…あの日までは。



「ただいま~っと、香澄~。お前の好きなプリン買ってきたぜ~」

 俺は昨日、少し落ち込んでいた妹のためにプリンを買って帰ってきた。

「えっ!?ホント?お兄ちゃん!!」

 それを聞くと妹はまるで小学生みたいにはしゃぐ。もう中2なんだから少しは女の子らしく落ち着いてほしいな…という思いもあるが、この天真爛漫さがいつまでも続いて…元気なやつでいてほしい…という兄としての思いもあった。


「ホントに仲がいいわよね~あなたたち兄妹は」

 そんな姿をみて母さんはニコニコしている。うん、やっぱり平和だ。

「このプリン、家族全員分買ってきたから、御飯が終ったらみんなで食べような?」

 うちの家族は、いつも一緒にご飯を食べるという決まりがあった。だから、父さんが帰ってきて、御飯を食べた後に皆で食べる…そう考えたんだ。

「うんうん!!」

 香澄もそれに賛成して喜んでくれてるしな。



「「「「ごちそうさま~」」」」

 ご飯を食べ終わるやいなや、香澄は「プリンプリン~♪」と言いながら冷蔵庫へ向かっていく。

「香澄~、その前に食器を片付けような?」

 俺はやんわりと香澄に言う。

「ぶ~…」

 それに対して香澄はぶーたれる。家族の笑い声が満ちる。間違いなく幸せな家族の絵…だろ?香澄は、早く食べたいからか、食器を持ってキッチンの流し台に急いで置きに行く。しかし…食器を置いた瞬間、止まる。

「…香澄~?」

 俺はちょっと不思議で椅子に座ったまま声をかける。…返事はない。

「どうしたんだ、香澄」

 父さんも心配になったのだろう。父は香澄のいるキッチンに進んでゆく。

「おい、香澄?」

 父さんがそう言って香澄の肩に手を置いた瞬間…。




 父さんの胸に包丁が突き刺さった。



「…え?」

 父さんは…いや、父さんだけじゃない。俺も、母さんも何が起こっているのか分からなかった。しかし、理解できなくても時間は進んでゆく。香澄は父の胸から包丁を抜き取ると、今度は腹部に突き刺した。

「ぐがぁっ!?」

 ここでようやく父さんは声をあげる。そして、俺も…状況がわかってきた。


 あぁ…香澄が、父さんを刺してるんだ。理由なんてわからない。ただ、遠目から見える香澄の姿がいつもとは全然違う…狂気に満ちた表情なのは感じられた。

「香澄…何してる…の?」

 ただ一人、母さんだけは意味が分からず、虚ろな目をしながらキッチンにいる父さんに歩み寄ってゆく。

「母さん!行っちゃだめだ!!」

 俺はとっさに声をあげるが遅かった。その時既に、母さんの首筋からは血が吹き出していた。見るだけで致死量と分かるほどの血を吹き出しながら、倒れこむ。そして、その中で香澄は…血まみれになりながら…


「アヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」



 嗤った。



 その嗤い声はとても、俺の知っている香澄のものとはかけ離れていた。目の瞳孔が開き、顔を支配した笑みも、さっきまで一緒に食卓を囲んで笑っていた香澄とは全く別物で…。

「香澄…どうしちまったんだよ。お前。」

 そう口にしても、香澄は何も答えない。一体何が起こったのかは、情景だけはわかる。ただ、認めたくもないし、理由もわからない。そして、ひとしきり嗤った後、香澄は突然倒れてしまった。

「香澄っ!!」

 俺は、慌てて香澄へと近づく。香澄の顔は、父さんと母さんの返り血で血まみれだったが、さっきまでの発狂したような表情ではなく…いつものかわいい…俺の大事な妹の顔だった。

「…なあ、香澄。お前、さっき飯食ってる時に俺の分のプリンも食べるって言ってたじゃんか。これじゃ、せっかく買ってきたプリン…食べれないじゃんか」

 俺は、香澄を抱きかかえて独り呟いた。そして…しばらく、妹を抱きしめて泣いた。そして、思った…俺は、こいつを守らなきゃ…と。



 俺は………香澄を…………









『ニュースをお伝えします。昨夜未明、東京都●●区で、一家が殺害されるという事件が起こりました。殺害されたのは、【萩原和夫はぎわらかずお】氏とその妻【和子かずこ】さんです。犯人は、その息子【萩原紀一のりかず】容疑者で、先ほど、逮捕されました。尚、犯人は容疑を認めておる模様。動機などは一切不明で、精神的におかしな点が見られるところから、発狂して容疑に及んだと思われます。尚、一緒に住んでいた妹の香澄さんは事件のショックで、意識不明――』

どうも、遊部です。


どうだったでしょうか?

今回は短めに、二部だけの連載小説で作ってみました。


香澄がいきなり発狂したことについては、未だ謎です。

こちらで説明する機会は恐らくないので迷宮入りです。


余談ですが、ここに投稿する前に友人に見せたら

「お前の作品にしては珍しく不完全燃焼だな」

と言われました。やっぱそうですかね。



感想お待ちしております。


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