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エピローグ・【世界で最も美しい風景】

そしてゆう太は――編です。

よろしくお願いします。

 202×年△月15日。

 退院から3日後。ゆう太は近所の土手を歩いていた。1日2回30分のウォーキング。要はリハビリである。

 この1歩は社会復帰に向けての1歩。まさに1歩1歩、進む。と。


 すたすたすた!


「……!?」


 ゆう太は彼自身よりも倍近い年齢であろう、お年寄りにあっさりと追い抜かれてしまった。

 いかにリハビリ中とはいえ、さすがにショックを受けたようである。が。


(道は長いんだから……!)


 それでも1歩1歩、進まなければならない。焦って転んでは集中治療室に逆戻りである。

 双六(すごろく)で言うところの振出しに戻る(・・・・・・)になりかねない。


(それは絶対に嫌だ)


 治療に携わってくださった方々の労力に懸けて。

 なによりも――ゆう太は目も眩むほど輝く太陽を見上げた。そして。


 ざあああ……!


 爽やかな風が吹き付け、ゆう太は視線を眼下へと向けた。

 夏の川原は草がぼうぼうに生い茂り、川面は陽光を反射してぎらぎらと眩しい。

 川を挟んだ反対側は一面の水田。背丈が伸び始めた稲が緑色の絨毯のごとく繁茂しており、爽やかな風を受けて一斉になびく。その光景はまるで海のようである。


 これらはあそこ(・・・)にいては絶対に見ることができない。日常という、もっとも美しい光景――彼の脳裏に、LEDの照明を背にした渡辺看護師の影に沈んだ笑顔が鮮明によみがえる。さらに。


 ぴりりりりりん♪


(2度とごめんだ!)


 地獄の集中治療室はどれだけ住もうと、都にはなりえないのだから――ゆう太は力強くさらなる1歩を踏み出した。

お疲れさまでした。

次が最後です。

あと少しだけお付き合いいただけましたら幸いです。

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