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4.求める先には

「お前、は。何、を……、求めて、剣、を振っ……て、い、るんだっ!」


 実力差は歴然。

 ご主人に剣を向けてきたから、切り捨てた、ただそれだけだ。

 だがしぶとかったらしい。剣を支えにして、よろめきながらも、なお膝を付かない。見上げた根性だが、質問の内容が良く分からない。


「どう言う事だ?」


 剣を振り回すことに何か理由が、求めるものが必要なのか?

 無いことは無いが、それこそ愚問だと思う。生き残るためだ。聞くまでも無い質問ではないか。

 しかし、彼はそれをダメだと言う。


「お前は、信念、を、持っ、ていないのか?」


「信念? そんなもの考えながら戦ってるのか? それこそ阿呆の極まりだな。雑念ばっかり乗せてるから私に勝てないんじゃないのか? 

それとも? 私にお前が納得できるほどの高尚な信念とやらを考えながら戦ってるとでも言ってほしいのか? ……ここはお前が考えてるほどあまっちょろくないんだよ」


 王に剣を捧げた? それがどうした。捧げてどうするんだ? 大人しく首を切られるつもりなのか?

 人を守るために?

 テメェの命一つ守れなくて、何が他人を守るだ。笑わせる。

 素人の考えなんて聞いても、胸糞悪いだけだ。


「素人がいても邪魔なだけだ。さっさと帰れ」


「素人だ、とっ! 俺たちは、騎士だ」


「だから? 都でちやほらされていたボンクラ共など、私から見たら素人だ。一人前に扱って欲しかったら、剣一つまともに使えるようになってからだ。――信念どうこう言う前に出直して来い」


 軽蔑の色を隠さずに首で促せば、若い騎士は明らか悔しそうな表情を浮かべ、それでも背を向けて去っていった。

 その背を無言で見送り、勢いよく剣を振って血糊を落としていると、後ろからご主人から声を掛けられる。


「珍しい」


「? 何が」


「お前があんなにも饒舌に喋るなんて、珍しいじゃないか」


 それには苦笑いを返すしかない。

 自分でもらしくないと思っているのだから。

 戦いの最中にあんなにも喋っているなんて、何て怠慢だ。


「……すまん、ご主人……」


「? 何が。理由は薄々分かるから良い。けど、意外だっただけだよ」


 本気で意外らしいご主人は、少し困った様子だ。


「俺には、お前にも信念はあると思うんだけどなー」


「そりゃあ」


 あるに決まってる。無かったら、ただの狂人だ。……あの若造が言っていたような、見上げたものなんかじゃないけど。

 ただ、満足に扱えない奴が、高尚な理念を上げろと言ってきたからムカついただけだ。


「生きるために振るうだけじゃ、何が納得できないんだろう? 俺は、普通に有りだと思うけど」


「ご主人。奴は騎士。自分みたいに、褒め称えられるような理念じゃないとムカつく野郎なんだ」


「でもな、剣は傷つける物だろ? まず守ろうとする道具にする考えが分からない。あ、いや、人を傷つける行為をした上で、って話なら分るんだけどさ」


「……そこは考えの相違としか言いようが無い」


「うーん、俺には理解不能って事か」


「というよりは、前提条件がまず違うから、議論にもならない。食い違って終わりだ」


「でも、まぁ、いいや。お前だって、理解されたいと思っていったわけじゃないんだろ?」


「勿論。あの手は、言葉でずたずたにしてやらないと引き下がらないから」


 無駄に血を浴びることは避けたい。浴びたら、浴びただけ臭くなるし、切れ味も悪くなる。帰還までに距離があるのに、どうしてあんな奴を斬って、後の危険を増やさなければならないんだ。


「おーい、眉間の皴がやばいぞー」


「しょうがないだろ……。今まではあんな奴、遭遇しなかった」


「親父も本気って事かー」


「論点が違う……」


「ん? あ、分かってる。お前が心の底から毛嫌いしてる騎士なんていう存在は、今まで会わなかったもんな。あー、だから、なんだ、……親父も本格的に動き始めたんだなー、と」


 一応聞いていたってわけか。


「あの程度を出してきてもどうにもならない。あれで騎士を名乗ってるなら、雇い主は首を掻っ切って欲しいな」


「まぁーな。お前一人で大丈夫だろ?」


「愚問。あの程度なら、何人来てもご主人には触らせない」


「頼もしい限りだよ」


 穢れなど、今までたくさん見てきただろうに、まっすぐな笑み。

 この人の剣として、目の前の敵をぶったおすのが、私の理念だ。



論点がずれた気がします……。反省。

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