2.切っ先が描く色
この身が切り開くものなど、あの忌々しい赤色の何かしか無い。
胸糞悪い気分を残しながら、私は暗闇にずぼずぼと嵌っていくのだ。
でも。
あるいは。
齢14で、既に戦場を駆け回っていた私には血が付き物だ。
当たり前だ。
剣を握っている以上、血に汚れないはずがない。崇高な理念を掲げていたとしても、どれだけ飾りあげたとしても、結局は自分を血で染め上げてるだけだ。
私を幼いのに、と表現する人がいる。
十四なのに、この世の綺麗な所を見てもいいはずだ、と言う人もいる。
かといって、物心付く頃にはもう保護者と呼べる人なんていなかった私には、そんな綺麗な世界とは無縁だ。
保護者の変わり、と言ってもなんだが、傍らに常にあったのは、形見のような大きな剣。物心付いた頃から隣にあったのだから、当然、当時の私の背より遥かにでかかった。
持ちあげるだけで息がきれそうな、でかすぎる剣。それでも、あれを使いまわせなければ、死ぬ環境にいた。
清らかな暮らしなんて言えない。隣に居たのは醜い殺し合いだ。
斬って斬って斬って斬って斬って。
それでも足らない。
無くならない。
尽きる事を知らない。
戦闘ジャンキーでもないのに。
斬って斬って斬って斬って。
そのたびに死体の山が増え、心が冷え切った。
それに反比例するように、金が跳ね上がり、評判が上がっていった。
気がついたときにはもう遅い。
後ろに積まれていたのはm山積みの死体と、自分に注がれる畏怖の目、そして血で染まったごわごわの金髪。ろくなもんじゃない。
あげくのはてには、金色の死神なんていう異名までついた。
大層な名前が付き、傭兵として雇われ、ずっとずっと斬ってきた。これからも斬っていく。それは死ぬまで変わらないだろう。
それが私の生き方だ。
他の生き方なんて知らない。知るわけがないから。
真っ赤に染まった、そして、真っ赤に染めていく死神には、これしか生きていく方法が無い。
自分を血に染め、目の前にいる奴も血に倒れさせる。
けれど。
……ご主人が、ご主人を守るためにやるならば。
いつもよりはマシな気分で生きているけるのかもしれない。
あの、変にまっすぐなご主人の剣になれるなら。
「反吐が出る」
そして今日も私は世界を血で染めていく。