6話 アリサの死の真実
数日後…、僕は家に戻り平穏な生活を送っていた。僕は寂しいと皆に伝えたら平日もアリア達は家に帰ってくるようになった。今日は皆が家に戻っていた。僕と一緒に買い物に行くため身支度をし玄関の扉を開け、外に出た。エリナも外に出た。
外に出ると黒い魔導服を着た黒髪の女が家の敷地内に入ってきた。
「何だ、お前は?」
「御機嫌よう。ヨミ・レッドフィールド。私の名前はカナエ」
「早速で悪いけど、貴方には死んでもらうわ」
僕がそう言うと黒い魔導服を着た女は僕にそう言った。
「家に入ってろ、エリナ」
「分かった」
僕がそう言うとエリナは家に入った。
「魔力固定」
僕は右手を横に向けた。右手の全指先から黒い魔力が黒い炎のように燃え、浸食するように手を覆った。右手に黒い大剣を出現させ黒い大剣を握った。空気中に漂う魔力を集め、自分の魔力を混ぜ合わせることで大剣を作った。
「………」
僕は黒い魔導服を着た女を睨みつける。
「あら嫌だ。怖い」
黒い魔導服を着た女はそう言い、笑った。
(先手必勝)
僕は黒い魔導服を着た女に向かって走った。
「黒い雨」
黒い魔導服を着た女は手を上に向けた。空に無数の黒い水玉が現れ、それが弾け地上に降り注いだ。
僕は風魔法で降り注ぐ黒い雨を防いだ。
だがしかし、僕を包んでいた風は黒い雨に打ち消された。
「ハーードバリア」
僕を中心に円形の防御バリアを作り出した。僕は黒い雨を防いだ。
雨は降り終わった。
「これはどうかな?」
カナエは手をこちらに向けると無数の黒い水で作られた手裏剣が出現し、こちらに飛んできた。
「………」
僕は風魔法で水の手裏剣と苦内を弾いた。
「へえー、やるじゃん」
黒い魔導服の女は感心していた。
「………」
僕は黒い魔導服の女に向けて剣を振り下ろした。
「どはっ!」
女は僕の振り下ろした剣を避け、僕の胸に拳が来て僕は後ろに突き飛ばされた。
「驚いた?私には武道の心得があるの」
黒い魔導服を着た女は得意げにそう言った。
パッパッパッ。
僕は殴り飛ばされ家にぶつかり、石片が服に付いたのでそれを払った。
「パチン」
黒い魔導服の女は指を鳴らすと地上に黒い水玉が無数に出現した。
「うあああああああ」
僕は雄叫びをあげ、黒い魔導服を着た女に向かって行った。
「無駄なんだよ」
黒い魔導服を着た女は僕に焦点を当てると開いた手を握りしめた。そうすると黒い水玉が僕の方へ集まり僕を蜂の巣にしようとした。
「んなっ…」
僕は風でゲートを作り、黒い魔導服の女の数メートル近くまで移動した。
「終わりだ」
僕は黒い魔導服の女に剣で斬ろうとした。
「甘いわね」
黒い魔導服の女は魔方陣を横に出し、そこから剣を出した。
「私に剣を出させるとは思わなかった」
僕の斬撃を受け止め、力で僕を遠くまで弾き飛ばした。
女は魔方陣をまた出し、剣をしまった。
「ヨミィ、アンタ強いねェ。アタシの全力で殺してあげる」
「究極魔法:黒い渦」
黒い魔導服を着た女は手を上に向けると、女の頭上に大きな黒い水の球体の渦を作った。
「死ねえええええええええええ」
女はそう叫び、両手を前に出した。黒い大量の水がこちらに押し寄せた。
(これを防がないと皆、死ぬ)
僕は風で空間を斬り大きなゲートを作り、黒い大量の水を飲み込んだ。
「うああああああああああああ」
僕の手は震えていた。ゲートを作ったがすべてを飲み込むには不可能であった。だがすべての力を使い、ゲートで黒い水を飲み干した。
僕の体はもうボロボロだった。両手から血が出ていた。
僕は力尽き、両膝をついた。
「私の全力…、防がれちゃった…」
「もう力、出ないでしょ」
黒い魔導服を着た女は僕の薄れゆく意識の中でそう言った。
「さようなら。ヨミ・レッドフィールド」
黒い魔導服を着た女は僕の黒い大剣を手に取り、僕の首を切ろうとした。
僕はもうだめだと思った。女が振り下ろした剣が僕の首元に当たろうとした、その瞬間。
「………」
僕の首は取れてなかった。誰かが僕の首元に当たる前に刀で防いだ。
黒い魔導服を着た女は後ろに下がった。
「大丈夫か?ヨミ」
僕の背後に着物を着た男が立っていた。
「お前は誰だ?」
「私はお前の本当の父親だ」
僕が聞くと男はそう答えた。
「ずっと待ってました。お父さん」
着物の男を見て黒い魔導服の女は泣きそうな声でそう言った。
「誰だ?お前」
着物を着た男は聞いた。
「カナエです。東雲楓の娘です」
「知らないな。人違いじゃないのか」
「これです。これで本当の父である、貴方を知りました」
黒い魔導服の女は魔方陣で本を取り出しそう言った。
「これは深淵の書。自分はどこから生まれたか知ることの出来る魔導書」
「私の事、覚えていませんか?お父さん」
黒い魔導服の女は涙を流しながら訴え掛けた。
ああ、この女も俺と同じく幼少期辛い思いをしたんだと僕は思った。黒い魔導服の女、カナエはヨミの推察の通り悲しい経験をしていた。カナエは幼少期から現在に至るまで義理の父に暴力を振るわれていた。毎日、義父から暴力を受け実の母に助けて貰える訳無かった。
「血は繋がっていたとして、それがどうなんだ。俺は妻の子でなければ自分の子として認めない」
着物の男は切り捨てるようにそう言った。
「………」
カナエは目を開いたまま、涙を流した。着物の男が言ってることが理解できなかった。
「ヨミ、お前は別だぞ。可愛い俺の妻、レイカの子だからな」
「ずっとお前のこと見ていたよ」
着物の男はそう言うと、僕を抱きしめた。
「もう、お前はいいよ」
着物の男はカナエにそう言った。
「そんな、お父さん。お父さああああああ」
着物の男はカナエに手の平を向けると、カナエは徐々に下から石化していった。
完全に石化しカナエの声は消えた。
「あーもう、どうなっとるんじゃ」
僕の家の玄関の扉が開かれ、水月が出てきた。どうやらエリナが止めていたらしいが、我慢の限界だったようだ。
「久しいな水月」
「シスイか…」
着物の男がそう言うと、地主神である水月は身が縮んだような声でそう言った。
「ヨミも立派に成長したなあ。藤井アリサを殺して正解だったなあ」
着物の男がそう言った。僕はそれを言われた瞬間、時が止まったような気がした。
「どういう…意味だ…?」
僕は驚き、辿々しく言葉を発した。
「まだ言ってなかったのか、水月」
着物の男は水月に向けてそう言った。
「ヨミ。これは理由があってだな…」
「ヨミは私とシスイが元々住んでいる世界で生まれたんじゃ。だがお主はその世界の空気が体に合わなくて死にそうになったから、泣く泣くお前が幼少期送った世界で育てたんじゃ」
「それでも余命を伸ばしただけ。藤井アリサを殺したのはヨミ、お前にストレスを与える事で新たな力を発現させる為だったんじゃ」
「結果、お主は力を得て生き延びることが出来た。ごめんなヨミ、別に隠そうとした訳じゃ無くてだなあ、言いづらかったんじゃ」
水月は僕に泣きながら弁明した。
「何だよ、それ…」
僕は棒立ちのまま、涙を流した。
「ははは…」
俺のせいでアリサは死んだのか。僕は涙を流し、空笑いした。
「ヨミ、帰るぞ。本当の母さんがお前を待ってる」
着物の男は僕の肩に手を置きそう言った。
「触るな!」
僕は着物の男の手を払い除けた。
「おい、水月。ヨミが泣き終わったらこっちの世界に連れて来い」
着物の男は水月にそう言い残し、ゲートを開け立ち去ろうとした。
「おい…、待てよ。待てよ!!」
ゲートを開け立ち去ろうとしているシスイに僕は言葉を発し引き留めた。
「………」
着物の男は立ち止まり振り返った。
「お前は僕の大切な人を殺して心を痛まなかったのか?」
僕は着物の男に聞いた。
「心が痛む?そんな訳ねーだろ」
着物の男はそう答えた。
「僕は愛していたんだ。アリサを…。僕の全てだったんだ」
僕はそう訴えた。
「だから何だというのだ」
着物の男は無残にもそう言った。僕は言葉を無くし、シスイを睨んだ。
僕は黒い大剣を手に取り着物の男に向けて剣で切り裂こうとした。
「どういうつもりだ?」
着物の男は刀で僕の剣を受け止めた。
「どういうつもりだじゃ無え、殺してやる。死んでアリサに懺悔しろ!」
僕がそう言うと着物の男は溜め息を吐き、ゲートを閉じた。
「お父さんにそんな口を利くのか」
「お前が父親かどうか何てどうでも良い!」
僕はそう言った。
「死ねえぇぇぇ」
僕は剣を振り、着物の男は僕の剣を受け止める。
「折れろおおおおおおおおおおおおおおお」
「ハードバースト!」
僕はそう叫び、僕の全身を包んでいた魔力を黒い大剣に流すことで黒い大剣の斬撃の威力を上げた。黒い大剣からは黒い魔力が漏れ、剣から黒い魔力が漂った。
「うわあああああああああ!!」
着物の男の刀は折れ、着物の男に斬撃を浴びせた。
「くっ、糞がああああああああ!!」
「俺はお前の父親だぞおおおおおおおおおお!!」
着物の男から血が噴き出し着物の男はそう叫んだ。
「がっ…」
僕は着物男に近づき顔面を殴り飛ばした。
「覚えていろ、ヨミ」
着物の男はゲートを作りそこを通り逃げようとした。僕のそのゲートに入り、着物の男の手を掴んだ。
ゲートの間には次元の狭間がある。ゲートをつなげるには出口と入り口に道を作らなければならない。そうしなければ次元の狭間に流される事になる。
僕は着物の男、シスイが出口に行かないように次元の狭間へ引っ張った。
「お前、死ぬ気か?離せ、ヨミ」
「道連れだ」
僕はそう言い、僕とシスイは次元の狭間に流された。
「ここはどこだ」
僕は次元の狭間で流されその後の記憶が無い。僕は道端に倒れていた。
周りには緑が生い茂る田んぼがあり、空は美しいほどに雲一つ無い快晴だった。
「………」
僕は目の前に続く道を歩いていた。歩いている途中に家があり、ふと目を遣ると着物を着た美しい長い黒髪の女性が布団を干していた。
「「………」」
僕と着物を着た女性は目が合う。女の人は僕の顔を見て泣きそうになり、僕の目の前まで走ってきた。
「ヨミ、ヨミなのね」
着物を着た女は僕を抱きしめた。
「貴方は誰ですか?」
「貴方の本当の母よ」
僕が聞くと着物を着た女はそう言い、僕をぎゅっと抱きしめた。
「写真で貴方のことずっと見ていたからすぐ分かった」
着物を着た女は顔を上げ、僕の目を見た。
「………」
僕は本当の母に抱きしめられ黙った。
「何で僕を別の世界に捨てたんだよ」
僕は言葉を紡いだ。僕はこの人が僕の本当のお母さんだと知り、自然と涙がこみ上げた。
「家族から冷たくされて、ずっと苦しかった」
「お母さんに甘えたかったんだよ…」
僕の素直な気持ちを伝えた。
「ごめんね。ごめんね」
着物を着た女は泣きながら僕の頭を撫でた。
「疲れたでしょ。家に上がって」
着物を着た女はそう言い、僕は家に上がった。
僕は縁側の近くの部屋の畳に座り、外の景色を見ながらご飯を食べた。
冷たい麦茶を飲み、寛いでいた。
「………」
僕は縁側に移動し、外に足を出し外の景色をぼーっと見ていた。
「膝枕してあげる」
着物の女は縁側に来て座り、僕にそう言った。僕はお言葉に甘えて着物の女の膝に頭を乗せ、足を伸ばした。僕は横向きになり、外の景色を見ていた。
僕は着物の女と話した。名前はレイカと言うらしい。僕は小さい頃から今までに至るすべてを話した。僕の本当の父であるシスイが僕を生かすためにアリサを殺した事を。僕がアリサをどんなに愛していたかアリサがどんな風に殺されたかレイカを責めるつもりはないが伝えた。僕を初めから見殺しにしとけば良かったんだと伝えるとレイカは泣いていた。僕はなんだか申し訳のない気持ちになった。
日も暗くなったので僕はお風呂に入る事にした。僕は体を洗い、湯船に浸かった。今までの疲れが取れるようだった。僕は一時間、湯船に浸かり風呂を上がった。僕の服はなかったため父親、シスイの浴衣を着ることになった。僕は畳の部屋で涼んでいた。
そうしてると食事が出来た。今日の晩ご飯は天ぷらだ。僕はレイカと食事を取ることにした。天ぷらのタレに付け、僕は口の中に天ぷらをいれ頬張った。旨い。僕は味変で醤油につけて食べた。塩も付け食べた。旨いがやっぱり天ぷらのタレで食ったほうが旨かった。天ぷらは濡らして食べるのが僕は好きだった。
僕は食事を取り終え、寝る支度をし、布団を引いて寝た。僕とレイカは布団を隣に引き、寝た。次の朝、僕は相変わらず縁側で母さんに膝枕をされ外の景色を見ていた。
あっという間に僕はここに来てから一週間が過ぎていた。僕は長くここに居すぎたので元の世界に戻ろうと靴を履いた。
「帰るの?」
母は僕にそう聞いた。
「うん、帰る。待っている人が居るんだ」
「そう…」
母は落ち込んだような顔を一瞬見せた。
「また、ここに帰るよ。妻と息子も連れて来るよ」
「分かったわ。気をつけて帰るのよ」
母は僕を抱きしめ、僕は母と別れた。
「ヨミは帰ったか」
外に隠れていたヨミの父シスイは出てきた。
「最低」
レイカはシスイの頬を平手打ちした。レイカは今までの中で一番怒っていた。後でシスイはこっぴどく叱られたのは言うまでも無い。
僕は母がいる世界、三の世界からアリアがいる世界、五の世界へと四の世界を経由してゲートを通り家に戻った。
「ただいま」
僕は家の玄関の扉を開けそう言った。
アリア、エリナ、シエラ、ルナ、地主神の水月、僕とアリアの子のレオが僕の元に来た。
「おかえり」
みんなは僕にそう言った。
僕は自然と涙が出た。
過去にどんなに辛いことがあっても、僕たちは生きていくんだ。
守るんだ。もう二度と大切な物が失われないように…。
ここまで読んで下さりありがとうございます。「面白い」「続きが気になる」と思ったら、感想やブックマーク、広告の下にある☆☆☆☆☆を押して応援していただけると嬉しいです!読者様の声が聞きたいので感想を沢山書いてくれるととても嬉しいです。全ての感想に必ず返信いたします。皆様の評価が励みになりますので、何卒よろしくお願いいたします<(_ _)>