38話 父さんとの約束
朝になると父さんは仕事に行き、僕は母さんに起こされて朝食を取った。
僕はお母さんがやっている内職の仕事を手伝い、終わると家を出て街を一人で散歩に出かけた。
「よお、クソガキ」
僕は街中でロボンに声を掛けられた。その後、僕がどうなるのか身を以て知る事になる。
「ただいま」
父さんは仕事が終わり、家に帰ってきた。
「お帰りなさい、父さん」
「ご飯出来ているから一緒に食べよう」
僕は父にそう言った。
「ああ…」
父さんは母さんが何も声を発さないから僕の母であるミリーを見た。
「………」
ミリーは声を殺しながら涙を流していた。
ポタ…。ポタ……。
「………」
僕の身体から地面に血が流れ落ちていたのを見て父さんは言葉を失った。
「ウル…、背中を見せなさい」
父さんは声を震わせながら僕にそう言った。
「嫌だ…」
「見せるんだ!!」
父さんは思わず声を荒げる。
「………グスン」
僕は涙を流しながら父さんに背中を見せた。僕の身体には包帯が巻かれており背中の部分の包帯が真っ赤な血が染まっていた。
僕はロボンとあった後、背中を鞭打ちされた。何故、逃げなかったというとロボンに逃げると家族に危害を加えると脅されたからだ。僕は何度も鞭打ちされ耐えた後、家に帰り、母さんに包帯を巻いて貰った。
「ロボンにやられたんだな」
父さんは拳を強く握りしめ、家を出ようとした。
「父さん、駄目だって。父さん!!」
父さんの表情を見て僕は止めないといけないと思ったので僕は父さんが家を出ないように父さんの身体を抱きつき引っ張った。
「離せ、ウル!!」
父さんは自分の息子が傷つけられた怒りで正常な判断が出来ない状態であった。
「母さんも止めて!!」
僕は叫んだ。その場に立ち尽くしていた母さんもこちらに来て父さんを必死に止めた。
「離せ!!俺はアイツを殴らないと気が済まない!!」
父さんは叫んでいた。
「父さん!!」
「貴方!!」
父さんは僕と母さんを振りほどき家を出て行った。
街中にある酒場でロボンと従者は飯を食べて酒を沢山飲んでいた。
「………」
「がああああああっ!!」
父さんは酒場に入りロボンを見つけると父さんはロボンに近づき、勢いよくロボンの頭をテーブルの上にある食事に叩きつけた。食事が載った皿は割れロボンの顔は食事まみれになっていた。
「何だ!!」
ロボンは叫んだ。そして近くにあったお絞りを使い顔に付いた汚れを拭った。
「よお、ロボン」
「へへへ…」
父さんはロボンの胸ぐらを掴み、引きずり出した。
「悪かった!悪かったって!!」
「ごはああっ!ごはっ!!」
ロボンは弁解しようとするが父さんに何度も殴られた。いきなりの出来事に従者達はロボンを眺めていた。
「何をしている。お前達、俺を助けろ!!」
ロボンは従者に助けを求めた。
「ああっ」
従者達はロボンにそう言われ、父さんを止めるが父さんの怒りの前では無力であった。
「父さん!!」
僕と母さんは父さんを見つけ止めようと父さんを引っ張った。
「父さん、もういいって。もういいんだよ!!」
ロボンを何度も殴る父さんを必死に止めた。父さんは殴るのを止めた。
大事になり父さんは連行された。
次の日の昼間…。
「母さん。父さんは大丈夫だよね」
家にいた僕は母さんに聞いた。
「分からない」
椅子に座っていた母は涙を流していた。
「!」
外から騒がしい声が聞こえたので僕らは家を出た。
「昨日、貴族を殴った奴の処罰が決定したらしいぞ」
「見に行こう」
街の住民は足早に向かって行った。
「行こう、母さん」
僕と母さんは向かった。
父さんのいる広場に辿り着いた。広場には沢山の人が集まっていた。僕と母さんは人を掻き分け前に進んだ。
「昨日、大衆酒場にて貴族であるアルミナード・ロボンを何度も殴り瀕死の状態にした。これは間違いないな?ロボン伯爵」
「はい、間違いはありません。その男は部下と食事中であった私をいきなり殴り、屈辱を味わされました」
「裁判官!その男は卑怯で下劣な奴です。即刻死刑を求めます!!」
ロボンはそう言い放った。
「うむ。何か反論のある者はいるか?」
裁判官は街の人に問いかけた。
「無いなら…」
「待ってください!!」
裁判官が言葉を紡ごうとしたのを僕は止めた。
「誰だね?君は。名乗りなさい」
「僕の名前はウル・ベンデント。そこにいる男、クロム・ベンデントの息子です」
僕は答えた。
「そうかこの男の息子か…。君の言い分を聞こう」
裁判官は僕にそう言った。
「僕はそこにいるロボンに何度も鞭打ちされました。それでそれを知った父さんが激高しロボンを殴ったというのが今回の経緯です。ロボンには鞭打ちから逃げると家族に危害を加えると脅されました」
「ぐぬぬぬぬ…」
僕は服を脱ぎ、血だらけの包帯を解き上半身を曝け出した。僕の背中は生々しかった。皆、僕の背中に注目した。
「なんと酷い…」
裁判官は言葉を発した。
「何て酷い奴なんだ」
「最低。子供相手に鞭打ちするなんて…」
周りにいた人々も僕の背中を見て騒めいた。
「黙れえええええええええええええええええ!!」
ロボンは叫んだ。ロボンが叫ぶと辺りは静まり返った。
「このガキの言い分なんてどうでも良いんだよ。さっさと此奴を死刑にしろ。」
「俺様に逆らうとどうなるか分かっているのか?逆らうのならお前らの大切な物を壊れるまで犯すからな!!」
「「………」」
ロボンの発言を聞きみんな黙った。
「お前らに聞く!この俺様が悪いと思う奴、手を上げろ」
「「………」」
皆、誰も手を上げなかった。
「俺を殴り半殺しにした男、クロム・ベンデントを処刑した方が良いと思う奴手を上げろ」
「そんな…」
街の人達は皆ゆっくりと手を上げた。
「待ってくれよ、皆!!」
「父さんは何も悪くないんだよ。俺の為にちょっと手を出しただけ」
僕は皆にそう言うが街の人々は俯いたまま手を上げていた。
「手を下げてよろしい。裁判官判決を。分かっているよな?あ?」
ロボンは裁判官を威圧した。
「判決を言い渡す。主文、被告人を死刑に処する」
「そんな…」
僕は両膝を地面に突き絶望した。ロボンは僕らを嘲笑った表情を見せた。
「被告人は現時点を以て即刻この場での処刑を致す」
裁判官はそう言い放つと、父さんは断頭台の窪みに固定され頭が動かないようにされた。
「父さん!!」
「離せ!離せよ!!」
僕は父さんを助けようと前に進もうとしたが周りにいた大人が僕に何もさせぬよう必死に止めた。僕は地面に伏せされた。
「良いのかお前ら、こんな事を許したらお前らの大切な人も何時か傷つく事になるんだぞ!!」
「「………」」
周りの大人は何も言わず、僕から目を背けた。
「お前ら顔、覚えたからな。殺してやる!お前ら全員殺してやる!!」
僕は叫んだ。
(ウルよ。何て顔をしてるんだ)
僕が叫んでいるのを父さんはただ眺めていた。
「ウル!!」
父さんは大声で僕の名を呼んだ。僕は父さんの言葉を聞こうと動きを止めた。
「母さんを頼んだぞ!!」
父さんは僕にそう叫ぶと僕は涙を流しながら頷いた。すると父さんは安心した表情を見せた。
僕は過去に父さんとした約束を思い出した。
「なあ、ウルよ」
「何?父さん」
「もし俺が居なくなっても、ちゃんと母さんを守るんだぞ」
「お父さん、居なくなるの?」
「いや、居なくなりはしないけど。未来では何が起きるか分からないだからお前は母さんを守るんだ」
「うん。分かった。僕、母さんをちゃんと守るよ」
「言ったな。じゃあ、男と男の約束だ」
「うん」
父さんと僕は手を握り合った。
僕の頭の中にある父さんと母さんと僕の思い出が駆け巡り僕は涙を流した。
(なあ、ウルよ…。人を恨むのはもう止めるんだ。人を愛せ…)
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
僕は叫んだ。そして上からギロチンの刃が落ち、首が切れた。父さんは死んだ。
「ああ、あああっ!!」
僕は自分の力の無さを知り、咽び泣いた。僕はこの後の記憶は無い。僕は母さんに背負って貰い家に着いた。
「父さん、分かっているよ…」
僕は父さんの最後の言葉を理解した。僕は母が亡くなるまでロボンや街の人々に復讐をするのを思い留まった。俺が今しないといけない事は母さんを守る事だ。僕は父さんとの約束を守った。
過去の回想は終わる…。
「お前、名前は何という?」
僕は父を鎖に繋ぎ私物化している人物に聞いた。
「私はラルカード・ロボン。貴方が最も恨む一族の一人だあ」
男は答えた。
「ロオオオオボオオオンンンンンンンン!!!」
僕は怒り狂い叫んだ。過去の記憶が蘇った。俺は母さんが死んだ後、ロボンの一族を皆殺しにした。どうやらその子孫は密かに生き延びていたらしい。
「殺してやる。今すぐに!!」
黒い大嵐が僕を包む。僕は黒い鎧と四大死宝と文字が刻まれた黒い首輪を身につけた。
「ロボン、死ねえええええ!!」
僕は鋭い鉤爪をロボンに向かって行き、刺して殺そうとした。
「!」
僕の父さんが僕の攻撃を手で止めた。
「離せ!」
「何でだよ…。何で父さんが止めるんだよ」
僕の手首をしっかりと父さんは握り、僕の動きを止めた。
「其奴は俺たち家族を滅茶苦茶にした奴の子孫なんだぞ!」
「なあ、父さん離してくれよ。離してよ!!」
僕は涙を流して膝を落とした。
「おい、一発キツいのお見舞いしろ」
「!!」
ロボンはそう呟くと、父さんは僕の腹に勢いよく蹴りを打つけた。僕は吹っ飛んだ。
「があああっ!!」
僕は地面に手を突き、血を吐いた。凄く重い攻撃だった。
「おい、クロム。街を破壊しろ」
ロボンは僕の父、クロムに命令するとクロムは街を破壊し始めた。
「やめろ…。やめてくれ…」
(俺は全ての生き物の命の尊さを、家族の大切さを。父さん、貴方から全て教わった。だから人を傷つけるのは止めてくれ)
僕の父が街を破壊すると街の人々は逃げ惑った。僕はその光景を見て言葉を紡いだ。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!」
僕は大きな火の球体を父さんに向けて放った。父さんは火の球体を避けた。
「!」
「避けろ!!」
火の球体を放った先に小さな子供がいた。僕は危ないと思い叫んだ。
「!」
ドオン!!
僕の父は物凄い速さで小さな子供所まで走り、子供を包み込む体勢になり、僕の攻撃を身を挺して防いだ。
「………」
父さんは小さな子供を守った。父さんの背中は火の球体の所為で黒くなっていた。
俺は思い出したあの言葉を…。
(ウル、お前は他人を守れる男になれ)
「ううううっ…」
僕は膝を突きながら泣いた。自分の力の無さに…。父さんはどんな姿になっても自分の信念を貫いたんだ。
「お母さあああん」
小さな子供は自分の母を見つけ走って行ってしまった。
僕は過去を思い出した。
あれは家族でピクニックに行った時の事だ。
僕と父さんと母さんは草木が生い茂る森を抜けた開けた場所で布を広げ僕を真ん中に座り、母さんの手作りのサンドイッチを食べた。
「ウル。サンドイッチは美味しい?」
「うん。とても美味しいよ、母さん。お父さんはどう?」
僕は父さんに聞いた。
「ああ、とても美味しい」
「良かった」
母さんは父さんの言葉にとても嬉しそうだった。
食事を食べ終え、三人は景色を見ていた。
「なあ、ウルよ。お前は成長したらどんな人間に成りたい?」
「どうしたの?父さん唐突に…」
「何となく聞いてみたかっただけだ」
父さんはそう言った。
「うーん。僕は父さんみたいに成りたいな。父さんが僕と母さんを守るために一生懸命働いて守っているように僕も大人になったら自分の嫁と子供を守れる人間になりたい」
「家族を守るのも大切だが、他人も優しくする事も大切だ。お前は他人を守れる男になれ」
「うん」
「じゃあ、父さんと約束だ」
僕と父さんは手を握って誓った。
「父さん…」
「何だ?」
「いつも家族の為に働いてくれてありがとう」
「ああ」
「母さん」
「ん?」
「いつも美味しい料理を作ってくれてありがとう」
「うんっ」
「父さんと母さんは僕の誇りだ。僕は父さんと母さんの元で生まれて来て良かった」
僕は感謝を伝えた。
「「ウル!!」」
「お前は…、俺達の…、誇りだ!」
「ウル。愛してるわ」
父さんと母さんは涙を流していた。そういう僕も涙が止まる事はなかった。
僕は現実に戻された。
「父さん。今、楽にしてあげるね」
「暗黒の尖い爪!!」
僕は獣のような姿勢になり、右手を横に伸ばし爪を立てた。僕の両手の指先から黒いオーラが煙のように上に上がる。
「クロム!」
ロボンがそう言うと、父さんはこちらに向き、手を広げ動くのを止めた。
「何をしている!!アイツを倒せ!!」
ロボンはそう言うが父さんは動かなかった。
「役立たずめ。ええい、仕様が無い、少しばかり早いが此奴を召喚する」
ロボンは召喚の魔法陣を展開した。
「直線斬り!!」
右手の尖った爪を父さんに向かって突き刺そうとした。
「!」
僕の突きが剣で止められた。
「召喚☆成功。私の最強の持ち駒、ランスロット!!」
ロボンは声高らかに言った。
「ランスロット、お前まで…」
「!」
僕が動揺している時に風が吹き、僕は手を顔に近づけた。その一瞬に剣を取られた。
「隠蔽召喚、風の盗賊」
ロボンは密かに持ち駒を召喚していたそうだ。召喚に気付かなかった。
「遂に揃った。死の剣:アロンダイトに円卓の騎士の中で最強と呼ばれた男:ランスロット!!」
「ランスロット、受け取れ!」
ロボンは風の盗賊から渡された死の剣:アロンダイトをランスロットに投げて渡した。
「ヨミを殺せええええええ」
ロボンは意気揚々に命令した。
「………」
ランスロットは何も言わず僕の方へ歩いてくる。
「!」
「これは貴方の剣です」
ランスロットは片膝を地に突き、頭を下げ、両手の掌に剣を乗せ、僕に向けて差し出した。
「ランスロット、何をしているうううう!!」
ロボンはランスロットの行動に驚いた。
「………」
僕はランスロットが差し出した剣を受け取った。
僕はランスロットを見ずに横に立ち止まった。
「ランスロット。あの時、お前が選んだ選択は間違って無かったと俺は思う。お前は自分の意思を貫き通したんだろ。俺はお前を誇りに思うよ」
「ううううっ…」
僕がランスロットに対してそう言うと、ランスロットは静かに泣いた。
「先生…、ありがとうございます」
ランスロットはそう言い残し消え去った。
「さて後片付けをしようか」
「死の剣、能力顕現!」
「く、来るな」
ロボンは最強の持ち駒を失い、負けを確信した。
「風の盗賊、行けええ!!」
風の盗賊は両手に短剣を持ち構え、僕の方へ斬り掛かって来た。
「斬り裂け」
僕は剣を横に振り払うと黒く荒い風の斬撃を繰り出した。
「ぐぐっ!!」
風の盗賊は斬撃により後ろに飛んで行った。斬撃により風の盗賊は再起不能になった。
「………」
僕はロボンの方へ殺気を放ちながら近づいて行った。
「た、助けて」
ロボンは腰が抜け地面に尻を突けた。ロボンは僕に背を向け、這い這いしながら何とか逃げようとした。僕はロボンの所まで行った。
「おい、ロボン。そんな遅い動きじゃ逃げれないぞ」
僕はロボンの肩に手を置き言った。
「み、見逃して下さい」
ロボンは声が震えていた。
「見逃す訳、無いだろ」
「があああっ!!」
僕は剣をロボンの背中に刺した。血が噴き出した。痛いようだ。
「許して」
「死んだ人を生き返らせて道具扱いする奴が許される訳、無いよなあ」
「………」
「そうか。俺もロボンと同じ事をしたんだな…。人を蘇らせて、人の心を踏みにじる行為を…」
僕は剣を仕舞い。ロボンの胸ぐらを掴み、ロボンを持ち上げた。
「歯ぁ食いしばれ!」
「オラアアアアアアアアッッ!!!」
僕は力を込めてロボンの顔面を殴り飛ばした。勢いよく殴ったんだ顔の骨が砕けているだろう。ロボンとの決着はついた。
僕は父さんの目の前に立った。父さんは手を広げたまま、立ち尽くしていた。
「父さん、終わったよ」
僕は父さんを抱き締めた。
「!」
そうすると父さんは広げていた手で僕を抱き締め返した。
「父さん…」
僕は涙を流し、強く父さんを抱き締めた。そして父さんは消え去った。
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