37話 暗黒天災
「俺の勝ちだあああああああああああ!!」
神威はアリアの首を手で握りしめアリアを持ち上げ、アリアは宙に浮いていた。アリアの身体はボロボロになっていた。
「!」
神威に向かって黒い闇の斬撃が放たれ、神威はアリアを離し斬撃を避けた。
「何だ、父さんか」
僕は立ち上がって地面を見ていた。
「父さん?」
僕の方から大風が吹く、神威はそれを見て神威は異常を感じ取り焦った。
「暗黒天災・第二形態」
僕の姿は変わり、深い赤色の鎧を身に纏い、深い赤色の見たことの無い古代の文字が刻まれた首輪を身に付けた姿となった。鎧の下には黒いコンプレッションウェアを着ていて、臍が見えるような鎧とインナーを身に付けていた。頂点二つが上にくる正六角形の形の胸の鎧の部分にマヤ暦占星術で使われる太陽の紋章の中の一つ『赤い月』の紋章が浮かび上がった。鎧の胸の部分の形は平べったいのでは無く、膨らんでいて前に正六角形の形が出っ張っている形であった。
僕の両眼の角膜の色は赤に変わり、瞳孔は黒く鋭く尖った。僕の目の光りは失われ冷たい目となった。そして両眼の下に黒い刻印が浮かび上がった。その刻印は目の下一センチ空けて、眉毛と平行な直線で鼻の近くから耳の耳介付近に向かって伸びている。そして直線の真ん中から耳垂に向かってて一直線に黒い刻印が伸びている。まるで耳に向かってYの文字の上の部分が横に倒れているかのような刻印だった。
口の中の下顎の両方の第一大臼歯は発達し、硬い物を簡単に貫くかのような上に突き上げた黒い大顎となった。黒い大顎は僕の目の辺りに向かって突き上げた形となり大顎は角張った形をしていた。
手は指先から手首まで禍々しい深い黒色の化け物の手になり、指先の爪はどんな物でも斬り裂く鋭利な爪になった。足は化け物みたいな禍々しい深い黒色の三本鉤爪のみで足の爪の部分に二本、踵に一本の鉤爪だった。人の頭を鷲掴みし、粉砕する事の出来るような大きな爪であった。僕の足の三本鉤爪の先から黒いオーラが煙のように流れ揺らめいていた。僕はその場に佇んでいた。
「………」
僕の後ろの地面の土が黒い文字で書かれた黒色の石版の破片の形となり、黒い石版の欠片が浮かび、パズルのように組み上げられ、何かの古代の文字が書かれた黒色の石版が完成した。黒い石版は禍々しい深く黒いオーラを放っていた。
「おいおいおい、冗談だろ」
神威は焦る。
(今から石版を組み上げても、もう間に合わない。だから既に完成した物を顕現させるしかない)
(出来るのか?そんな荒技を…。やるしかない!!)
神威は手を合わせ、力を込め神威の後ろに既に完成された白い石版を顕現させようとした。
(出来た…)
神威は白い石版を顕現させるのに成功した。
「暗黒火術:火羅万象」
僕は唱えた。僕の周りは黒色の炎で燃えていた。
「古竜固有魔法:白い月の石版!!」
神威も僕と同じタイミングで唱えた。
神威の周りから白い炎が広がった。
黒色の炎と白色の炎が打つかり合った。互角と思いきや、僕の黒色の石版の威力に圧倒され神威の作り出した白色の石版は砕けた。そして神威は後ろに吹き飛ばされた。
「巫山戯んな、初手からブッパなす奴があるかよ」
神威は大ダメージを負ったがまだ生きていた。だがそれに追い打つように黒色の火の刃が身体の内側から出現し、身体から血が飛び散った。
「くそっ!火刃を組み込んでいたのかよ!!」
神威は立上がろうとした所、火刃によるダメージを受け、地面に倒れた。
「死の耳飾り:ヌト。能力顕現:全回復」
僕は唱え、神威の傷を癒やした。
「………」
神威は傷が治り立上がった。
「父さん。何故、俺の傷を治した?」
「………」
僕は神威に向けて構えた。
「自分勝手のクソ野郎」
神威は少し笑い、構えた。
「暗黒双拳」
僕は拳に深く黒いオーラを纏わせた。
「水景双拳」
神威は拳に水を纏わせた。
「親父ィィィィィィィィィィィィ」
神威は僕に向かって行った。
「死ねええええええええええええええ」
神威は拳を大振りした。
「!」
「があああっ!!」
僕は大振りされた拳を躱し神威の身体に拳を二発打つけた。
「くくっ」
「ぐっ!!」
神威は大振りした右手の拳を右に薙ぎ払い僕の顔に打つけ、神威は自分の左足を勢いよく僕の右脇腹に打つけた。
「………」
僕は片膝を突いた。どうやら右脇腹に入ったダメージが思った以上に大きかったのだろう。
「これで止めだ!!」
神威は片膝を突いた僕の頭に向かって左の拳を打つけようとした。
「!」
だがしかし神威の攻撃は僕の生み出した風によって防御された。
「何っ!」
僕は神威の腹に拳を打つけ神威を吹き飛ばした。
「油断した…」
神威は立ち上がり僕を睨んだ。
「暗黒流動」
「ぐっ!」
僕は獣の手のように指と指の間を開けた。そして右手で斜め上に振り払う動作をすると透明の風の刃が神威に向かって行き、打つかった。
「水景結界」
(取り敢えず様子を見よう)
神威は水のバリアを張った。
「はああああっ」
僕は左手を下から上に振り上げ、見えない風の斬撃を飛ばした。
(来るっ!!)
神威は最大出力で水のバリアの強度を上げた。
「なっ!!」
神威の最強強度の水のバリアは容易に斬り裂けた。
(こんな攻撃連発されたら確実に死ぬ)
神威は今の自分の置かれた状況に焦りを感じた。
神威の悪い予感は的中した。
「ヴアアアアアアアアアアアアッッ!!」
僕は咆哮し身体を奇抜に動かし両手で振り払う動作を何度し、見えない無数の風の刃を作り出し神威に放った。見えない風の刃が神威に向かっていく。
「ぐっ!!」
神威は走り水のバリアを張りながら攻撃を避けていた。
神威は僕を中心に回るように走り攻撃の機会を伺った。僕は走る神威を目を離さず、無数の見えない風の斬撃を放った。
「ヴアアアアアアアアアアアアッッ!!」
敏捷い神威に僕は苛立ち咆哮した。僕は攻撃を止めた。
(今だ!!)
神威は僕の隙を狙い首を取ろうとした。だが僕が隙を見せたのは故意であった。
僕は神威を近くまで引きつけた。そして神威が勝ちを確信したその時!!
「黒竜の大嵐」
自分を包み込む黒く冷たい大嵐を作りだした。神威は黒い大嵐に巻き込まれ大ダメージを受け地に伏せた。僕と神威の戦いに決着がついた。
僕は剣を握り戦闘不能の神威に向かって振り下ろそうとした。
「待てよ、親父」
「!」
僕の振り下ろした剣を僕の息子であるケイが剣で受け止めた。
「ケイか…。何故、俺の邪魔をする?此奴はワタルを殺し、俺の嫁を殺そうとした救いようの無い屑人間なんだぞ」
「父さん、ワタルは生きている。俺はワタルに父さんを止めるように頼まれてここに来たんだ」
「そうか…。だが、俺は此奴らを始末しないと気が済まない。此奴らは救いようが無い人間だ」
僕はそう言い放つと僕と敵対していた子供達は悲しそうな表情を見せた。
「馬鹿野郎!!」
ケイは叫んだ。
「親が子供を見捨てるなよ!ちゃんと自分の子供と真正面から向き合えよ!!」
ケイは僕にそう言い、涙を流していた。
「………」
僕は敵である自分の子供の顔を一人一人見た。
「どうやら俺はお前達と向き合えていなかったようだな…」
僕は呟いた。
「お前達が世界を守るため頑張っているのは素晴らしい事だと思う。だがな…、家族よりも世界の秩序を守る方が大切だとは俺は思わない。俺はお前達がした事は絶対に許さない」
僕がそう言い放つと僕の子供達は悲しそうに目を伏せた。
「お前達が少しでも自分の間違いに気付いたとしたら俺の家に来い。俺が家族を大事にする事の大切さを教えてやる」
僕の言葉に子供達は涙を流していた。神威は何も言わず空を見ていた。
ワタルとアリアとカミラの事はケイに任せ、僕はメアの封印されている場所へと向かい辿り着いた。
眠っていたメアは風が頬に当たるのを感じ目を開けた。
「お父さん」
「目が覚めたか。良かった」
メアは僕に抱えられ空を風魔法で飛んでいた。
「お父さん、何処に行くの?」
「父さんの家に行くつもりだが、その前に行かないといけない所がある」
「行こう、母さんが封印されている所に…」
僕は移動スピードを上げ僕の妻であり、メアの母親である栞を迎えに行った。
僕は無事に栞の封印を解いた。栞、メア、ワタル、ケイの四人が僕の家に一緒に住む事になった。
一日後…。
僕は朝早くから目が覚めたのでコップにコーヒーを淹れ外に出て、大きな石の上に腰を下ろした。
「ヨミ、おはよ」
「おはよ」
カミラがこちらに来て僕の隣に座った。
「ヨミ、昨日は私の命を救ってくれてありがとう」
「ああ」
僕は応えた。
「ヨミ。私を救う為に大切な力を失ったって聞いたけど本当?」
「ああ、そうだ」
「………」
僕が答えるとカミラは黙った。
「ヨミ、ごめんね。私の所為で…、ごめんね」
カミラは涙を流していた。
「カミラ…」
僕は手でカミラの涙を拭った。
「力っていうのは誰かを守るために存在しているんだ。俺はカミラを助ける為に力を失って良かったと思う。後悔はしてない」
「だからカミラ、泣かなくていい。力よりもカミラの方が大切だ」
これが僕の精一杯のフォローだった。
「ありがとね、ヨミ」
カミラは笑顔を見せ、朝食を作る為、家の中へ入って行った。
僕がカミラに言った事は本心だ。別に再臨の力を失っても大した事では無い。青い力はアリサから貰った特別な力だ。俺とアリサを結ぶ唯一の繋がりだったから俺はそれを失い自然と涙が溢れた。
「俺は…。俺は」
僕は色んな事が込み上げて来て涙を流した。家の玄関から朝の鍛錬の為に僕の子供達が出てくるため子供達は扉を開けた。子供達は僕が泣いているのを見て空気を読み、扉を閉めた。
僕はその後、朝食を取り一人で家を出て街へと向かった。僕は剣や装飾品の店を何件か回り吟味していた。僕は特に欲しいものが無かったので店を出た。
「こんにちは、ヨミ・レッドフィールド」
僕はそう言われ、声のする方に振り返った。
「誰だ?お前」
見たことの無い顔をした男だったので僕は聞いた。
「これを見たら分かるかな」
男は地面に魔法陣を展開した。そしてそこから一人の鎖で繋がれた大男が現れた。
「そんな…」
僕は鎖で繋がれた大男を見て驚きを隠せなかった。
「父さん、なのか…」
僕が見たのは無残な姿の自分の父親だった。
僕は遠い昔に受肉した時、今目の前にいる大男とその妻に育てられた。
僕は過去を思い出した。
「ただいま!」
「お帰りなさい」
「おお、帰ってきたか」
僕は遠い昔、この世に受肉しこの家の一人息子として育てられた。
「お父さん、お母さん。僕、綺麗な花見つけたよ」
僕は街の外れで綺麗な花を見つけたのでスコップで掘り植木鉢にその花を入れて持って帰った。
「まあ、可愛い花ね」
お母さんはそう言い、僕が持って帰ってきた花をまじまじと見た。
「綺麗な花だな。ウル、その花を取ってきた場所には他の花もあったか?」
ウルというのは僕の名前だ。
「うん。あったよ」
「そうか…」
父さんは悲しそうな表情を見せた。
「ウル、その花は元あった場所に戻しなさい」
「何で?」
僕は聞いた。
「ウルが持って帰ってきた花の周りには別の花があったんだろ。ウルが持ってきた花には兄弟や家族がいたかもしれない」
「家族と引き離すのはウルも望んでいないだろ」
「ごめんなさい。僕、そんなつもりじゃなかった」
僕は取り返しのつかない事をしてしまった。僕は涙を流した。
「良いんだよ。誰でも間違いはあるさ。今日はもう遅いから明日、その花を元に戻そうな」
「うん」
父さんは僕の頭を撫でた。
次の日。
僕と父さんは花を元の場所に戻し、街へ行った。父さんは知り合いと話があるので僕は一人で時間を潰していた。
「止めて下さい!」
「良いじゃないか、私は貴族だぞ。金は幾らでもある。私の物になれ」
「いや、いやあっ!!」
路地から声がするので僕は行くと貴族の男と従者の男三人が一人の少女を執拗に付き纏っていた。
「止めろよ!!」
「ん?何だ??」
男達は声をする方を見た。
「何だ?クソガキ」
貴族の男は僕に近づいてきた。従者の男三人は少女を逃がさぬよう押さえていた。
「嫌がってるじゃないか!」
僕は勇気を出して言った。
「あのなあ、ガキ。女っていうのは最初は嫌がるものなんだ。だが女の喜びを分からせてやれば従順になる。だから邪魔するな」
「ガキはさっさと家に帰りな」
貴族の男は僕の肩に手を置いた。
「があああああああっ!!」
僕は貴族の男の金的を蹴り上げた。
「ああああっ!いだい!!」
「「ロボン様っ!!」」
従者三人は股間を蹴られた貴族に駆け寄る。拘束を解かれた少女は逃げて行った。
「いだい、痛いよおお。母さんん」
従者は貴族を抱えた。
「このガキ、どうします?」
一人の従者が上司と思われる貴族を抱えているもう一人の従者に聞いた。
「放っておけ」
従者はそう言い、この場を去ろうとした。
「少年。君は貴族の恐ろしさを知らない。何れ今日した行いを後悔する事になるだろう」
もう一人の従者は僕にそう言った。
「待て、ライ。俺はそのガキにプライドを傷つけられた。分かるよな」
「そのガキを押さえろ!鞭打ちだ!!」
貴族の男、ロボンは従者に命じた。僕は従者三人に掴まれた。
「可哀想に…」
大衆が集まった。
「………」
僕は上の服を脱がされ背中を貴族に向け四つん這いになった。僕はこれから鞭を打たれる事を想像し僕の身体はガクガクと震えた。
「ガキ、逃げるような真似したらお前の母ちゃんをたっぷり可愛がってやるからな!!」
ロボンは皆に聞こえるように言い放った。
「お前達、よく見ていろ。この俺様に逆らうとこうなる」
ロボンは鞭を僕の背中に目掛けて振り下ろした。
鞭が背中に当たり、音が鳴り響いた。だが僕の背中は痛く無かった。
「!」
大衆や貴族、従者、皆驚いた。
「父ちゃん!!」
僕は後ろを振り向くと僕の父親が自分の身体で僕を守った。
「ははは、お前が父親かあ!息子を守れるか試してやる」
「おらああっ!!」
ロボンは興奮気味になり僕に目掛けて鞭を何度も振り下ろした。僕の父親は僕を抱え込み守った。
「ウル、鞭打ちが終わるまで動くなよ。危ないからな」
「父ちゃん、父ちゃん」
僕の所為で父親が痛めつけられているのを見て涙が溢れた。
「ウル、皆から聞いたよ。お前、少女を守るために貴族相手に勇気を出して止めたんだよな」
「僕、間違っていたよ。見て見ぬ振りをしていればこんな事には…」
「いや、間違っちゃいない。お前はとても勇気のある素晴らしい行動をした。流石、俺の息子だ」
父さんは何度も鞭を打たれた。
「はあはあ…、中々しぶといな」
何度も鞭を振るったロボンは息が上がっていた。
「もう、いい。飽きた」
ロボンは従者と共に帰って行った。
「父ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だ。家に帰ろう」
僕は肩を貸そうと父さんの腕を退かし立上がった。
「父ちゃん!背中がっ!!」
僕が父さんの背中を見ると背中の肉は削がれ血が沢山流れていた。
「大丈夫…だ。ウル、帰るぞ」
父さんは立ち上がり、僕と一緒に家に帰った。
僕と父さんは家に着き、お母さんに父さんの怪我の介抱をして貰った。
「イテテテテテ」
母さんは父さんの身体に包帯を巻き、締めると父さんは痛がった。
「ミリー、もっと優しくしてくれ」
「はいはい」
母さんは父さんの背中を軽く叩いた。
「うがああああっ!!」
父さんは痛みで叫んだ。母さんはくすりと笑った。
僕達は母さんが作った夜ご飯を食べて寝支度をし、三人で同じベッドで眠った。




