32話 暗黒咆哮・ 2 Form
騒動があってから一週間が経過した。僕は僕とルナの子供のレイナと僕とカミラの子供のノエルと僕とエリナの子供のカイルの四人で食べ歩きしながら軽く買い物に来ていた。
「!」
僕は王都の外から殺気を感じた。殺気は僕だけじゃなく子供達にも向けられた。僕はカイルに娘達を任せ家に帰るように言い、殺気を放つ方へ僕は風魔法で空を飛び向かった。僕の今身に付けている装備は只の鎧であった。何故ならいつも使っている黒い鎧が何処かに行ってしまったから。
「僕等に殺気を放ったのはお前か」
僕は地に着地し、そう言い放った。
「!」
僕は驚いた。僕達に殺気を放った者は見覚えのある人物だったから。
「お前は…、イアなのか?」
僕の目の前に居たのは僕の昔の妻との子であるイアだった。
「………」
イアは僕が呼んでも何も反応しなかった。イアの身体から禍々しい闇のオーラが漂う。
「その装備…」
僕は焦った。イアが今、身につけている装備は僕が砂漠の地下の神殿の隠し部屋に置いた物だ。その装備は四大死宝と呼ばれている。四大死宝とは死を司る四つの宝の事だ。死の聖剣:アロンダイト、死の首飾り:エンリル、死の指輪:アダト、死の首飾り:ヌト、この四つの死の宝を四大死宝と呼ぶ。
「イア。お前、操られているんだな!」
僕は黒竜の姿を解き、人間の姿に戻った。
「父さんがお前を元に戻すからな」
僕はイアに近づいて行った。イアはその場から動かなかった。
僕の左の目の下の頬に黒い鮫の鰓孔のような模様が刻まれていた。これを僕は死の刻印と呼んだ。僕の角膜は白く透き通り、瞳孔は黒く尖っていた。
「「………」」
僕はイアに十分に近づき、立ち止まった。お互いに顔を合わせた。
「ふふっ…」
ダンッッッ!!
僕は少し笑うと僕は右手の薬指と小指を指を軽く曲げ右手を下から上に勢いよく天に突き上げた。青い六角柱状の巨大な氷の結晶が出現した。
「冬禍冬術:冬景絶対零度」
僕の目の前にいたイアを中心に地面から深い青色をした六角柱状の巨大な氷の塊が数多出現し連なり一つになった。深い青色の水晶のようで美しかった。僕が持っている技の中で一番強く、一番美しい技であった。イアは深い青色の氷の塊に閉じ込められた。
バンッッ!!
イアは自分が捕らわれた青い水晶を力を放出し破壊した。水晶は崩れ落ちた。
「お父さん、酷いなあ。いきなり攻撃するなんて」
イアは剣を鞘から抜いた。
「!」
イアは見えない速度で僕の肩を斬った。
「くっ…」
僕は攻撃を受け、次に来る攻撃を回避するために後ろに移動した。イアは剣を鞘に収めた。そして両手を地面につけ、獣の姿のような姿勢になった。
「これでも喰らえ」
イアは口を大きく開けると周りに黒い閃光が走った。
「古竜固有魔法:究極の死の砲撃」
イアは口から力を放った。黒い力が目の前の全てを破壊し僕に向かって行った。
「古竜固有魔法:究極の冷凍砲撃」
僕も獣のような姿勢になり、口から白い力をイアの放った黒い力に打つけた。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンン!!!!!
黒い力と白い力が打つかり合い、辺り一帯を吹き飛ばした。もの凄い衝撃と音が鳴り響いた。
「「………」」
力と力の打つかり合いで土煙は舞っていたが、消えると互いに睨み合った。
「………」
「!」
イアは人差し指を僕に向けると黒と灰色の混じった球体を作り出した。
「暗黒再臨!!」
僕はイアが出そうとしている技に恐れ、初速と反応速度の速い、黒い竜の姿となった。
「!」
イアは黒と灰色の混じった球体を僕に飛ばした。もの凄いスピードで僕の顔目掛けて飛んできた。僕はそれを避けた。僕の黒い竜の姿でなければ反応出来なく、僕は死んでいた。
「死ぬかと思った」
僕は翼を広げ空を飛んだ。
イアの出したこの技の厄介な所は追尾して来るところだ。僕は追尾してくる球体を避けた。この技は初速はもの凄く早いが、追尾してくる速度はそれほどでも無い。しかしこの球体に打つかると身体の一部が消える。だから絶対に避けなければならない。
「暗黒竜の超新星」
イアは沢山の黒と灰色の混じった球体を何個も作り出した。
「まじかよ…」
僕はイアを見て呟いた。
「ふふっ」
イアは僕の顔を見て少し笑い、そして沢山の球体を飛ばして来た。
「くっっ…」
僕は追尾してくる球体から逃げながら凄いスピードで逃げた。追尾してくる球も僕のスピードには劣るが速い。
「おいおいおい」
イアはまだ球体を作り出していた。
「死ね」
イアは球体を飛ばした。僕は四方八方から来る沢山の球体を避けれず、打つかった。そして球体は爆発した。爆殺したから煙が漂い、イアはヨミが見えなくなった。
「………」
そして煙は消え、ヨミの姿が見えた。
「武装形態:禍津日神」
僕は自分の身体を隠す位、大きく真っ黒な盾を二つ右手と左手に持っていた。僕は先の攻撃をこの大きな黒い盾で防いだ。
「イア、お前にはこの姿を見せた事は無いな。これが僕の最強の形態だ」
「攻守交代だ」
僕はイアを見下ろし、そう告げた。
僕は二つの大きな黒い盾の持ち方を逆手に持ち、盾の上を攻撃に使うように持った。僕はイアに向かってもの凄いスピードで飛んで行った。
(来る!!)
イアは構えた。僕は上空から下へ行き、そして低空飛行し、スピードを上げた。
そしてイアに黒い盾の上の部分を打つけようとした。
「暗黒結界!!」
イアは黒いバリアを張った。
ドーンッ!!!
僕の黒い盾とイアの黒いバリアが打つかり鈍い音がなった。僕はイアのバリアに盾を打つけながら低空飛行した。
ピシッ!
そしてイアのバリアは僕の盾の威力で罅が入った。イアは僕の攻撃を何とか抜け出そうとしたが強い力に抜け出す事は敵わなかった。
「がああああっ!!」
僕はもの凄いスピードで飛行し、イアを石の壁に打つけた。バリアは完全に割れ、イアは血を吐いた。
「効いたかな?」
僕は後ろにジャンプし移動した。
「余り効いてないようだな」
「ほざけ」
イアは血を吐きながら立ち上がった。
「!」
僕は黒い盾二つを魔力として散らし、消した。僕は竜の姿から元の人間の姿に戻った。イアは驚いた。
「ああ、これ?僕が地に着いた時点でもう使い物にならないから消した」
僕はそうイアに教えた。
「造氷人形」
僕は手を組み、氷の人形を二体作り出した。氷の人形はイアに向かって行った。イアは剣を抜き、氷の人形の攻撃を躱し一体の氷の人形の腕を切り落とした。
「ほう」
氷の人形二体に善戦するイアに僕は感心した。
「これはどうかな?氷角錐」
僕は薬指と小指を曲げた左手で人差し指と中指を一緒に少し上に上げるとイアの地面の下から氷の角錐が天を突き上げた。
「!」
イアはそれを避けた。
「やるな。だが甘い!」
「冬ノ霜木ノ蔦」
僕はイアの地面から霜の付いた氷色の木の蔦を出し、イアの身体を拘束した。この技は木属性と氷属性の混合技だ。
「大技出すからしっかり押さえておけよ」
氷の人形二体がイアの身体を両側から押さえると、僕はそう言った。
「森羅万象は始まりを意味する力。今からお前に見せる力は終わりを意味する力。存分に味わうといい」
「冬祟冬術:冬景崩山激流・玉」
僕は掌を合わせると深い青色の氷で出来た二つの龍の頭が僕の両側に現われ、イアに向けて飛んで行った。
「暗黒竜の黒い暴風」
黒い暴風がイアを包み込む。二つの深い青色の氷の龍の頭は黒い暴風に打つかり、イアを包み込む暴風の風の向きで逸らされ、地面に打つかった。
「ふん!」
イアは黒い暴風を解くと氷の人形と氷の木の蔦が割れ地面に崩れ落ちた。
「暴風で氷の龍の攻撃を逸らし、拘束も解いたか。やるじゃないか」
僕は感心した。
「それなら…」
僕はイアから距離を取った。
「白山」
僕は手を組むと僕の後ろに大きな雪の積もった沢山の白い山が現れた。
「何の技が出るのか分かるよなああ!!」
僕の心は高揚していた。久しぶりに本気で戦える相手が現れた事に…。
「古竜化:暗黒竜」
イアは剣を鞘に仕舞い、黒い竜の姿になった。そして二人は…。
「冬崇冬術:冬景崩山激流」
僕は唱え、両手を前に突き出し両手の平ををイアに向けた。白い山から雪崩が押し寄せた。
「暗黒竜の黒い吐息」
黒い大きな竜となったイアは大きく息を吸い、そして黒い炎を吐き出した。
ドオオオオオオオオオオオオンンン!!!
雪崩と黒い炎が打つかり合い、周りに轟音が鳴り響いた。
辺りは黒い炎のせいで雪が斑に積もっていた。
「まさかの互角とはな…」
僕は自分の娘と力が互角だという事に少し驚いた。
「成長したな、イア」
僕はイアを褒めた。
「お父さんが弱くなっただけでしょ」
イアは黒い竜の姿から人の姿に戻った。
「言うようになったじゃないか」
僕とイアは互いに近づいて行った。
「どうやら俺の本気を見せないといけないようだな」
空気中にある無数の膨大な魔力が僕を中心に集まる。僕の身体は少し浮かび、魔力は僕に向かって流れ包み込み、深い赤い渦の球体となった。そして球体は割れ地面に破片が落ちた。僕の宙に浮いていた足は地面に着いた。
「暗黒咆哮・第二形態」
僕の姿は変わり、深い赤色の鎧を身に纏い、深い赤色の見たことの無い古代の文字が刻まれた首輪を身に付けた姿となった。頂点二つが上にくる正六角形の形の胸の鎧の部分にマヤ暦占星術で使われる太陽の紋章の中の一つ『赤い月』の紋章が浮かび上がった。鎧の胸の部分の形は平べったいのでは無く、膨らんでいて前に正六角形の形が出っ張っている形であった。
僕の両眼の角膜の色は赤に変わり、瞳孔は黒く鋭く尖った。僕の目の光りは失われ冷たい目となった。そして両眼の下に黒い刻印が浮かび上がった。その刻印は目の下一センチ空けて、眉毛と平行な直線で鼻の近くから耳の耳介付近に向かって伸びている。そして直線の真ん中から耳垂に向かってて一直線に黒い刻印が伸びている。まるで耳に向かってYの文字の上の部分が横に倒れているかのような刻印だった。
口の中の下顎の両方の第一大臼歯は発達し、硬い物を簡単に貫くかのような上に突き上げた黒い大顎となった。黒い大顎は僕の目の辺りに向かって突き上げた形となり大顎は角張った形をしていた。
手は指先から手首まで禍々しい深い黒色の化け物の手になり、指先の爪はどんな物でも斬り裂く鋭利な爪になった。足は化け物みたいな禍々しい深い黒色の三本鉤爪のみで足の爪の部分に二本、踵に一本の鉤爪だった。人の頭を鷲掴みし、粉砕する事の出来るような大きな爪であった。僕の足の三本鉤爪の先から黒いオーラが煙のように流れ揺らめいていた。僕はその場に佇んでいた。
「やっぱりお父さんは凄いよ」
イアは僕の姿を見てそう言った。イアの僕を見る目は尊敬の眼差しをしていた。
「お父さん、体術も衰えてないよね」
イアは好戦的な姿勢で拳を握る。
「さあ、どうなんだろう。試そうか」
僕はイアの言葉にそう返した。
「暗黒竜拳」
イアの拳に黒い炎風のオーラを纏わせた。
「冬景竜拳」
僕は拳に白い凍風のオーラを纏わせた。
イアと僕は互いに構えた。
イアは僕の方へ飛び込んで来た。そして僕に拳を打つけた。僕は難なく何度も繰り出される拳を完璧に防御した。
「ふふふ。やはり戦いは面白い」
僕はそう言い、イアに何度も拳を打つけた。イアは僕の拳を防御しようと防御の姿勢を取った。
「甘い!」
僕は身体を右に曲げ、左足でイアに蹴りを入れた。僕の蹴りはイアの横腹に入った。僕はイアに蹴りを入れた左足をすぐに戻し、僕は右足を軸にし後ろ回し蹴りを繰り出した。
「うぐっ」
イアの顔の左に僕の左足の後ろ回し蹴りが決まり、イアは倒れた。
「くっ…」
イアは立ち上がった。イアは拳に纏わせた黒い炎の出力を上げた。そして僕に飛び掛かって来た。
「おらああっ!!」
イアは何度も拳を振り、僕に攻撃をしてきた。
「がはああっ…」
イアの左の拳を僕の左前腕で止め、僕は右手でイアの腹に拳を入れた。イアは口から血を吐き出した。
「くっ…」
イアは口から出る血を左腕で拭った。
「イア。昔、教えたろ。戦いにおいて拳にオーラを纏わせる時は薄く纏わせろって。じゃないと攻撃が大味で大雑把になるからって」
僕はそうイアに言った。
「………」
イアは小さく頷くと拳に薄く黒い炎のオーラを纏わせた。
「はあーっ」
イアは集中していた。
(この場の空気が変わった…)
イアの異常な集中にこの場の空気の変化を感じ取った。空気中にある無数の膨大な魔力がイアを中心に集まる。イアの身体は少し浮かび、魔力はイアに向かって流れ包み込み、黒い渦の球体となった。そして球体は割れ地面に破片が落ちた。イアの宙に浮いていた足は地面に着いた。
「|第二形態( セカンドフォーム)」
イアは今の僕と同じ姿となった。
「行くよ、お父さん」
イアは僕の方に飛び込んで来た。そして拳を僕に何度も打つけてきた。僕は防御し様子を見ていた。
「!」
イアは僕の足下を右足で蹴り、僕はバランスを失った。僕はバランスを失い宙に浮いていた数秒をリカバリーするために右足をイアの顔面に当てようとした。
「ごがあっ、ぎいいっ」
イアは左の前腕で僕の右足の攻撃を防ぎ、バランスを崩した僕の腹に左膝を曲げ打つけた。 そしてイアの右手の拳が繰り出され、僕の顔面に打つかり僕は吹っ飛んだ。
「やるな…」
僕は地面に這いつくばり血を出し、身体を起き上がらせ口から流れる血を手で拭った。
「負けたよ。父さんの負けだ」
僕は立ち上がり両手を挙げ降参のポーズをとった。イアは構えていたが僕を見てほっとしたのか地面に倒れた。僕とイアの戦いは終わった。




