3話 ギルド
エリナが家に来てから何日か経った。僕は上からの命令で森にある遺跡の調査に来ていた。
遺跡には特になにも異常は無かったので戻ろうとしたが誰かに僕は後をつけられているようだ。
「出るなら出てこい」
僕は僕の後をつけている奴に言った。
そう言うとぞろぞろと人が十人ほど出てきた。
「何のつもりだ?」
「お前を拘束する」
僕は大人数の人間に囲まれそう言われた。
「魔力固定」
僕は右手を横に向けた。右手の全指先から黒い魔力が黒い炎のように燃え、手を覆った。右手に黒い大剣を出現させ黒い大剣を握った。空気中に漂う魔力を集め、自分の魔力を混ぜ合わせることで大剣を作った。そうすると相手は僕を警戒した。
「警戒しても、もう遅い」
僕は殺気を放った。相手は禍々しい僕の殺気に敵は戦意喪失した。
「残ったのは二人か…」
僕の殺気に戦意喪失するものがいたが敵の二人は大丈夫なようだ。
「貴様!」
一人の年老いた男が僕にそう言った。
「くっくっく」
僕は不気味な笑いをした。
老いた男は僕に剣で切り込んできた。僕はそれを黒い大剣で受け止めた。
「ジジイの癖に早いじゃないか」
僕はそう言った。
「ほら、どうした」
僕はそう言い、相手を殺すほどの殺気を帯びた大剣で男に何回も振り下ろした。老いた男はぎりぎり受け流すので精一杯だ。
「弱え」
僕の斬撃で老いた男の隙ができたところで左手で老いた男の顔面を殴った。老いた男は吹き飛ばされて意識は無くなり、動かなくなった。
意識のあったもう一人は、棒立ちで僕の方を見て震えていた。
「おい、お前はどうする?」
僕はもう一人の奴に聞いた。僕は其奴に近づくと全身に力が入らなくなったのか、へたり込んでしまった。
「なぜ、お前は大丈夫だった?」
僕はそいつに聞いた。
「お守りで…」
そいつは手を震えながらお守りを見せてきた。
「ああ、そういう事か…」
「お前は僕と戦う気はあるのか?」
僕が聞いたら首をぶんぶん振って無いと答えた。だから僕は逃げて良いよと言ったが腰を抜かして立ち上げれなくなってしまったらしい。
「まだ、お前には聞きたい事がある」
僕はそいつの首根っこをもって遺跡の近くにある石段まで引っ張っていった。
急に後ろから気配がしたので僕は振り返った。そうすると金髪の長い髪をした女が勢いよく走ってきて大剣を僕に振りかざしてきたので僕は黒い大剣で受け止めた。
「誰だ?お前」
僕は聞いた。
「私の名はシエラ・ハワード」
僕に剣を振りかざしてきた女は答えた。
僕は攻撃を受け止めた剣に力を入れ、女と剣を吹き飛ばした。
「お前も僕を拘束するのか?」
「ええ、あなたには私たちの城に来て貰うわ」
「嫌と言ったら?」
「無理矢理でも付いて来てもらうわ」
女は僕に刃をむけ、僕に向かってきた。
「………っ」
女は重い斬撃を連続で繰り出した。
いくら重い斬撃を連続で繰り出してもその内いくらでも隙は生じる。
「お前、その内、死ぬタイプだな」
僕は女にそう言った。
「どういう意味ですか?」
女はそう言った。
「そのままの意味だよ。お前の剣は真っ直ぐすぎる」
「死ね」
僕は女の大剣を弾き、隙をついて女を黒い大剣で切り裂こうとしたそのとき、地面から黒い鎖が突き出て僕の右腕の動きを止め僕の身体に鎖が巻き付き、僕を拘束した。
「間に合いましたね」
眼鏡をかけた女が安堵した様子でそう言った。
「リリア来たのね。助かったわ」
金髪の女はそう言い大剣を下に下げた。
「何だ、この鎖」
僕が魔力で無理矢理外そうとしても鎖は外れなかった。
「その鎖、外れないでしょ」
「その鎖、あなたの魔力を吸ってあなたを縛り上げてるの。貴方にはその鎖はは外せないわ」
眼鏡をかけた女は僕に言った。
「何のこれしき」
僕は全魔力を注ぎ込んで鎖を壊そうとしたが、鎖は外せなかった。僕は魔力を失い、意識を失った。
「目、覚めた?」
聞き覚えのある声で僕に問いかけてきた。先の金髪の女だ。僕はどうやら意識を失いこの独房まで連れてこられたようだ。僕の手には手錠が掛けられていた。この手錠には何かしらの魔法が掛けられているのか僕の魔力を吸い取り、僕が手錠を壊せなくしてあった。
「食事よ」
金髪の女は独房に入ってきて持ってきたトレーを僕の足下に置いた。トレーの上にはパン二つとシチューを入れた皿が置かれていた。
僕は食事を取り始めた。
「旨い」
僕はパンを齧り、シチューをスプーンで掬い口に運んだ。僕は無性に腹が減っていたので無我夢中で食べた。
「そんなに美味しい?」
金髪の女は聞いてきた。
「ああ、旨いさ」
僕はそう答えた。
「御代わり持って来て上げる」
女はそう言い、僕が浚えた食事のトレーを持って行った。
「はい」
女がご飯の御代わりを持ってきた。僕はそれを受け取るとまた無我夢中で食べた。
「食べ終わったね。貴方にはこれから私に付いて来て貰うわ」
僕は食事を食べ終え、女に連れられ大ボスの部屋へ案内された。
「貴方が黒十字騎士の一人、ヨミ・レッドフィールドね」
体型はでっぷりとしていて魔女のような格好をしている女が僕にそう言った。
「ああそうだ」
僕は聞かれたのでそう答えた。
「貴方には、私たちと一緒に生活してもらうわ」
周囲の者はその発言に動揺を隠せなかった。
「マザー、これは一体どういう事ですか。この男は危険です。今は私の魔法でこの男を無力化しているから良いものを!」
眼鏡を掛けた女はそう言った。
「私は最初からこの男をこのギルドに入れるつもりだったよ」
マザーと呼ばれている女は諭すように言った。
「まだ、名前を聞いていなかったな」
僕は女に言った。
「私の名前はイザベラ。このギルドのギルドマスターをしている。気軽にマザーとでも呼んでくれ」
イザベラはそう言った。
「僕をギルドに入れてどうする?」
僕は何の目的か聞いた。
「どうもしないさ。ただ、お前は予言で世界に破滅をもたらすと言われているから監視するだけだよ」
「僕が世界に破滅をもたらす? 馬鹿な話だ」
「信じたくないならそれで良いさ」
「シエラ、ヨミに部屋を案内しろ」
イザベラにそう言われシエラは僕と一緒に部屋を出た。僕は自分の部屋に案内された。独房よりはましなので安心した。
「貴方、あの時、手加減したでしょ」
シエラは僕にそう言った。
「何の事だ?」
「貴方が私を殺そうとした時、仲間が私を助ける事を知ってて剣を振り下ろそうとしたでしょ」
「何だ、バレてたのか」
僕はそう言いベッドに座った。
「貴方、何の目的でここに来たの?」
僕はシエラに問い詰められた。
「別に目的は無いさ。暇だったから捕まってみた。それだけだ」
「本当に?」
疑いの目を僕に向けてきた。
「本当だよ」
僕はそう言った。
「怪しい…。まあ、いいわ」
「何か困ったことがあれば私に言って」
シエラはそう言い部屋から出ようとした。
「待ってくれ」
僕はそう言った。
「何?」
「名前。僕もシエラって呼んでいいか?」
「お好きにどうぞ」
彼女はそう言い、部屋を出た。
あれから何時間経った。僕は特に何かをする訳でもなく、ベッドで寝そべり、ぼーっと天井を見ていた。
「入るわよ」
シエラが再び部屋に入ってきた。
「何?」
「ご飯の時間よ。付いて来て」
僕はシエラと一緒に部屋を出た。
僕は城の回廊を通り大部屋に入った。中には大きな長テーブルが二つあり、席には大勢の人
が座っていた。テーブルには豪勢な食事が置かれていた。
「…………」
僕が部屋の中に入ると辺りは静まり返った。気まずい空気だ。僕とシエラは空いている席へと向かい座った。席の近くにはイザベラが座っていた。
「ヨミ、アンタには明日からシエラと一緒に行動してもらう。分かったね」
イザベラは僕にそう言った。
「分かったよ。それより、これ外してくれないか」
僕は手錠をイザベラに見せてそう言った。
「リリアが外さない限り、手錠は外れないわ」
イザベラはそう言い、食事をしていた。
「リリア、僕の手錠外してくれないか」
僕の近くにリリアが居たのでそう言った。
「気安く呼び捨てにしないでください。手錠は外しません」
僕は眼鏡の女にきっぱりと断られた。だが後で手錠を外して貰える事になった。
「シエラ、明日、どこに行くんだ?」
僕は食事をしながらシエラに聞いた。
「明日は王都の近くにある村に行きます」
シエラは答えた。
僕は食事を取り終えたので自分の部屋に戻り、部屋のベッドで寝そべっていた。
「風呂でも入るか」
数時間後、僕はやることが無いので風呂に向かった。城の中は広く、風呂の場所がわからなくて道に迷っていたがやっと見つけた。
「あー、極楽極楽」
僕は身体を洗い湯船に浸かった。ここの城の風呂はものすごく広い。
僕がお風呂に浸かっていたら脱衣所から物音がした。
「………」
シエラが扉を引き、入ってきた。
「何であなたがここに居るんですか!」
シエラは僕を見てそう言った。
「風呂に入ろうと思って、ここって混浴か?」
「ここは女風呂です」
僕がそう聞くと、シエラは呆れながらそう言った。
「まあ、いいじゃん」
僕はそう言い、風呂に浸かっていた。
シエラは体を洗い、湯船に入ってきた。
何も話すことが無くて風呂には静寂が漂っていた。
「シエラって肌きれいだよな」
「何言ってんですか、この変態!」
僕が唐突にそう言うとシエラは赤面しながらそう言った。
「「………」」
二十分ぐらい話すことが無くて二人とも沈黙していた。
「僕、もう上がるよ」
僕はそう言い、風呂から上がろうとしたら脱衣所から複数の女の人の話声が聞こえた。
僕は構わず、脱衣所の扉を引いて中に入った。当然、女の人の悲鳴が上がった。
僕が脱衣所から逃げた後、女たちは風呂に入った。
「シエラ、男と入ってたの!?」
シエラは女達に問い詰められた。僕はその後の事はシエラに任せた。
翌日になった。僕とシエラとリリアその他五人で王都の近くにある村に訪れていた。
「勇者様だ」
「ああ、勇者様」
村人達はそう言い、シエラの元に駆け寄ってきた。
リリアに聞くと、シエラはこの村に多額のお金を寄付しているらしい。シエラは子供の未来のために学校を作ったりもしているそうだ。
僕たちは村の子供と遊んだ後、城へ戻った。
外はあっという間に暗くなり、夜中になった。
「シエラ、入っていいか?」
僕はシエラの部屋の扉をノックした。
「良いですよ」
シエラがそう言ったので部屋の中に入った。部屋にはランタンの明かりだけが灯っていた。
「シエラ、今日行った村に多額の寄付をしているらしいな」
僕はそう言い、シエラと一緒にベットの上に座った。
「リリアに聞いたんですか?」
「ああ、聞いた」
僕はそう答えた。
「村への寄付は偽善だと私を軽蔑しますか?」
「いや、軽蔑はしないよ。シエラのお金だからどう使おうとシエラの自由だ」
「そうですか…」
シエラは安堵した。
「シエラ、お前勇者は辞めた方がいい。向いていないよ」
僕はシエラにそう言った。
「どういう意味ですか?」
シエラは聞いた。
「勇者っていうのは自己犠牲の象徴だ」
僕はそう言った。
「シエラは勇者になって色んな人から頼られたり、命を狙われたり、損な役回りばかりしてきただろ」
「私はそれで後悔したことは無いです」
シエラはきっぱりと答えた。
「シエラは周りを幸せにしてきたけど、シエラの幸せはどうなるんだ?」
「…………」
「シエラが今までやってきたことは立派なことだと思う。でもシエラにも幸せになる権利がある。シエラにも幸せになる権利があるんだ」
僕がそう言うと、シエラは涙を流していた。シエラは少しずつ話し始めた。シエラは昔から両親から冷たくされていたそうだ。勇者に選ばれてからは手の平を返したように接してきてそれでもシエラは嬉しかったそうだ。
「シエラ、そんなに泣かないでくれ」
僕はそう言い、手でシエラの涙を拭った。
「シエラ、僕がお前を守ってやる。僕がシエラを幸せにする」
僕がそう言いシエラを抱きしめるとシエラは幸せそうに微笑んだ。
僕はシエラにキスをした。
そのまま、僕はシエラの初めてを奪った。
あれから十日が過ぎた。僕も大分ここの暮らしに慣れた。僕とシエラはここのギルドを抜けて、僕と一緒に暮らすことにしたのでイザベラに話そうとイザベラの部屋に来た。
「何の話だい?」
イザベラは椅子に腰掛け、パイプ煙草を吸っていた。
「僕とシエラはこのギルドを抜ける」
僕はイザベラにそう言った。
「いつか二人がギルドを辞めると話す時が来ると思っていたわ」
イザベラは煙草の煙を吐いた。
「やっぱり駄目か?」
「ギルドを抜けて良いわよ」
僕がそう言うとイザベラはそう答えた。
「良いのか?」
イザベラの意外な返答に驚いた。
「ヨミ、私はね、お前を警戒していた」
イザベラはそう言うと、パイプ煙草の煙を吐いた。
「それって僕がこの世界を滅ぼすからか?」
「そうだ」
「一体誰が占ったんだ。僕はそんな面倒なことはしないぞ」
「占ったのは私だ」
僕がそう言うとイザベラは言った。
「イザベラが占ったのか?」
「ええ」
「占い当たるのか?」
「当たる」
僕が恐る恐る聞くととイザベラは答えた。
「だけどね、未来ってものは変わるものだよ。安心しな」
僕はイザベラにそう言われ安心した。
「もしかして僕が悪いことをしないように最初からシエラと僕をくっつけようと画策してたんじゃないんだろうな?」
僕がそう言うとイザベラは大笑いした。
イザベラにギルド脱退の旨を伝えたので、僕とシエラは自分の部屋に戻った。
翌日、僕とシエラはギルドのみんなに別れを言って城から去った。シエラは勇者を辞めた。
「ただいま」
僕とシエラは僕の家に着いたので、扉を開けそう言った。
「お帰りなさい」
エリナが出迎えてくれた。
「腹減った。ご飯はあるか?」
僕はそう言い逸らかそうとしたが駄目だった。
「ご飯よりもあんた、ずっとどこ行ってたのよ」
エリナに問い詰められた。
「あと、その子誰なの?」
「誰って、んー、難しいな。僕の彼女かな」
「はーっ」
僕がそう言うとエリナは深い溜め息をついた。
「まあ、いいわ。中に入って話しましょ。じっくりとね」
エリナは含みのある言い方で僕にそう言った。
僕とシエラは家に入った。
僕、シエラ、エリナ、アリア、地主神、僕の息子は部屋にあるソファーに座り話を始めた。
「で、貴方は女を引っかけてのこのこと帰って来たと」
エリナは僕から問いだした後に棘のある言葉で僕にそう言った。
「ああ、まあそうだ」
僕は答えた。
「シエラはこの男が結婚してたの知ってた?」
「いえ、知りませんでした」
シエラの目は僕をゴミを見る目で見てきた。
「まあ、この国は一夫多妻制だし大丈夫」
僕はそう言った。
「なーにが大丈夫よ。本当最低」
エリナは相当怒ってるようだ。
「まあ、この話はこの辺で終わりにしよう」
僕がそう言うとエリナはまだ話し足りなさそうな顔をしていた。
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