23話 戦いの幕は下ろされた
レイジとランスロット卿の戦いは白熱していた。その戦いを近くでエリナは見ていた。
「削れ」
ルークは赤い雷を纏った黒い大剣を振り回すと、纏っていた赤い雷が地面を削り取り、ランスロットに目掛けて赤い雷が来た。
「くっ……」
ランスロットは赤い雷を剣で防いだ。
「あと何回、赤い雷を使えるかな。使えなくなった時がお前の死だ」
ランスロットはそう言った。確かに今、円卓の騎士の中で最強のこの男に互角で戦えるのはこの赤い雷のお陰であった。
(このままだとルークがやられちゃう。誰かルークを助けて)
エリナは藁にも縋る思いで祈った。
「削れ!!」
ルークは赤い雷を纏った黒い大剣を振り回すと、纏っていた赤い雷が地面を削り取った。
しかし、途中で赤い雷は無くなり無防備になった。
「終わりだ」
ルークは黒い大剣をランスロットに弾き飛ばされた。
(だめ…、だめ。助けて、ヨミ!!)
ルークはランスロットに近寄られて、死の恐怖で尻餅ついた。エリナは自分の子供の命が取られる瞬間を今にも見ることになりそうであった。ルークは母の存在に気づきエリナを見た。
「母さん…」
ルークは呟いた。ランスロットは剣をルークに振り下ろそうとした。その瞬間、今、見ている景色が灰色になり時間が止まった。
「どうなってるの?」
エリナは思った。
「今、貴方が見ているのは時間が停止した世界だよ。古代魔法で私が時間を止めた」
エリナに似た女性は言った。
「貴方は誰?」
エリナは聞いた。
「私は貴方のもう一つの人格だよ。私の名前はイシス、よろしくね」
イシスはそう言った。
「貴方が私のもう一つの人格?」
「うん、そうだよ。私は転生魔術で転生したけど何かしらの理由で魂が分裂しちゃって転生前の記憶がない魂、貴方が生まれたんだ。そして私は主人格では無く、貴方の心の中でもう一つの人格として貴方の送る人生を見ていた」
「そうなんだ…。いや、貴方と話している場合じゃなかった。ルークを助けないと」
エリナは焦っていた。
「イシス。貴方、ヨミをここへ呼ぶ事は出来る?」
「悪いけどそれは出来ないよ」
「そんな…」
エリナの唯一の希望は絶たれた。
「イシス、私はどうすればいい?」
エリナは聞いた。
「エリナが私に人格の主導権を譲れば、私があの男と戦い、倒す事が出来るよ」
「どうする?私に主導権を譲ってルークを生かすか、それとも見殺しにするか」
イシスは聞いた。
「貴方に主導権を譲るわ」
エリナは即答した。
「ふーん、根性あるじゃん。流石、もう一人の私」
「これではフェアにならないから、一時的に貴方の身体を借りて戦うから、終わってヨミが来たらどっちがこの身体の主導権を得るか決めて貰いましょ」
イシスは言った。
「それで良いわ。早くルークを助けて」
「うん、分かった。ルークを助けるよ」
ここでエリナの意識は深い所に沈んだ。
「死ね」
ランスロットは剣を振り下ろした。
「!」
ランスロットの剣はイシスに止められ、弾き返した。ランスロットは驚き、後ろに移動した。
「母さん」
「ルーク、貴方はここで待ってて」
「限定世界」
イシスとランスロットは引きずり込まれ、円形闘技場に辿り着いた。
「ここなら思う存分、暴れられるわ」
イシスはそう言った。
「暗黒解放:死と滅亡の運命」
イシスは唱え、イシスの頭の上に黒い天使の輪が現れ、黒い大剣から黒い魔力が漏れ、体の周りからは黒い閃光が光り、そして消えた。
「!」
ランスロットはイシスに向かって来て剣を振り下ろした。
「ぐっ……」
何度も振り下ろされる剣をイシスは受け流した。だがしかし剣での攻撃は止まなかった。
その間にイシスは詠唱を始めた。
「狂気に満ち、揺らめく黒き業火に全てを喰らい尽くす災いを齎す破滅の力。大禍津日神と化す、我が力よ。我が呼び声に応え給え」
「究極魔法:世界を焼き尽くす炎」
黒い炎がイシスの黒い大剣に纏った。黒い大剣に纏っていた黒い炎は膨れ上がり、ランスロットに燃え移りそうになった。
「………」
ランスロットはイシスから距離を取った。
「飛べ」
イシスは黒い大剣を横に振った。そうすると黒い炎の斬撃がランスロットに向かって飛んできた。
「がはっ!」
ランスロットは黒い炎の斬撃を剣で防ぐが、斬撃の重みで吹き飛ばされ、闘技場の壁に打つかり血を吐いた。
「くそがっ!」
ランスロットは膝を突くがすぐに立ち上がった。
「!」
ランスロットはイシスの所に向けて走った。接近戦に持ち込む気だ。
「飛べ!」
イシスは四回、剣を振り、黒い炎の斬撃をランスロットに向けて飛ばした。
「!」
ランスロットはいとも簡単に黒い炎の斬撃を避け、イシスに向かって行った。
「死ね」
イシスは黒い大剣を振り下ろすと目の前が黒い炎で焼き尽くされた。
イシスはランスロットに勝利した。イシスの頭の上にあった黒い天使の輪はひびが入り割れて消えた。イシスは元の世界にゲートで戻った。
「ルーク、大丈夫?」
イシスはルークに聞いた。
「母さん、奴はどうなった?」
「私が殺したよ」
「えっ?」
イシスは答えにルークは驚いた。
「おーい」
ヨミが来た。
「大丈夫か?二人とも」
僕は二人に聞いた。
「敵はどうしたんだ?」
「母さんが倒したよ」
僕が聞くとルークはそう答えた。
「久しぶり、ラプラス」
エリナの身体を借りているイシスは僕にそう言った。
「お前、イシスなのか…?」
「そうだよ」
イシスはそう答える。
「エリナはどうなったんだ?」
「エリナが心配?」
「当たり前だろ」
僕がそう言うとイシスは悲しそうな顔をした。
「エリナは私の心の中にちゃんといるよ」
「それはどういう意味だ、生きているのか?」
「うん。生きているよ」
イシスがそう言うと僕は安心した。
「ラプラス…」
「何だ?」
「私は今、この身体の主人格として生きている。ラプラスはこのままの私と生きていくのかそれともエリナの人格と生きるか。貴方は私とエリナどっちを選びたい?」
「それは…」
僕は急にそう言われ、迷った。
エリナも心の奥底でこの会話を聞いていた。
「俺は、俺は…」
僕はどっちを選べばいいのか分からなかった。
「なーんてね。冗談だよ」
イシスの言葉に僕はポカンとした。
「私はエリナにこの身体の主導権を渡してまた心の奥深くへ戻るよ」
「ごめん」
僕は謝った。
「何で謝るの?泣きたいの我慢してたのに」
イシスは泣いていた。
「本当は嫌だよ。私だってラプラスと一緒に人生を送りたいんだよ」
僕はイシスを抱きしめ髪を撫でた。
「ラプラス…。一つお願いがあるの」
「何だ?」
「私にキスをして」
僕はイシスにそう言われ、イシスにキスをした。
「イシス、もう少しエリナの心の奥底で待っててくれ。俺が何とかしてエリナ、イシスみんな笑顔で暮らせるようにするから」
僕はイシスを抱きしめそう言うとイシスは頷いた。
「待ってるね、ラプラス」
イシスはそう言うと、地面に倒れそうになった。
「イシス!」
僕はエリナの身体を支えた。
「ヨミ…」
エリナは僕の名を呼んだ。そして僕を抱きしめた。
「ルーク、悪いがお前は母さんを連れて家に帰ってくれ」
「分かった」
ルークはエリナを連れ家に帰った。
僕は次の場所に急いで行った。
「がはっ」
「ガレス!」
死闘の末、ガレスはディアナに剣で刺され死んだ。ガレスの名を兄であるアグラヴェインは叫んだ。
「己、よくも我が弟を殺したな」
「許さんぞおおおおおおおおおおおおおおお」」
アグラヴェインは頭にきてキレ、咆哮した。
「死ねええええええええ」
怒り狂ったアグラヴェインの剣撃にディアナは押される。
「お前は最後に殺してやる」
アグラヴェインは攻撃を止め、ゼノに向かって行った。
「ゼノ、逃げて!!」
ディアナは叫ぶ。
「お前も私と同じ痛みを知れえええ」
「召喚魔法:キマイラ」
アグラヴェインはゼノの目の前に召喚獣、キマイラを召喚した。
「あああああああああああ」
ゼノは自分の身を守るために氷魔法でキマイラに氷柱を当てるが傷一つ付かなかった。
「がああっ…」
ゼノはキマイラに身体を噛みつかれた。身体から血が吹き出た。
「ゼノ!」
ディアナはアグラヴェインを力で退け、ゼノの方へ行った。召喚獣のキマイラはゼノを噛みついてたのを離し、役目を終え、消えた。
「ゼノ!ゼノ!!」
「師匠…」
ゼノは掠れゆく声で言った。
「大丈夫。今、傷を治すから」
ディアナはゼノに治癒魔法を掛けた。
「傷を塞いでも僕は助からない、もうダメです」
「ダメなんかじゃない!」
ディアナは焦っていた。
「僕は一生、師匠と何気ない普通の暮らしを送ると思っていた。でもそうはいかなかった」
「もう喋るな、傷口が開く」
「人はいつか死ぬ。僕はそう思っていたから心残りがあるとは思ってもいなかった。僕は師匠が心配だ。貴方は人とは余り関わらず、孤独に生きている。僕がそんな師匠の人生を変え、師匠が皆と笑って暮らせるようにしたかった」
ディアナは涙を流していた。
「師匠、そんな悲しい顔をしないで下さい。僕は師匠が笑った顔が好きだ」
「師匠、笑って」
ゼノがそう言うとディアナはぎこちない笑顔を見せた。
「師匠、僕は貴方に出会えて良かった。ありがとう」
ゼノはそう言うと、目を閉じ、死んだ。
「ダメだ、ゼノ。死ぬな、ゼノ!!」
ディアナはゼノを起こそうとするがゼノは永遠の眠りにつき起きることはなかった。
「んー、泣けるねえ~」
アグラヴェインはゼノとディアナの最後の会話を見守り、ふざけた言い方でディアナに近づいてきた。
「がああっ…」
アグラヴェインは血を吐いた。アグラヴェインを後ろから刺したのはヨミだった。
アグラヴェインは地に伏せ、死んだ。
「大丈夫…、じゃないな…」
僕はゼノを抱きしめ泣くディアナを見てそう言った。
「ヨミ、時の石を私に貸して」
ディアナは僕にそう言った。
「ダメだ、ディアナ。お前、死ぬ気だろ」
「いいから時の石を渡して!!」
「ダメだ、お前を失う訳にはいかない」
僕はディアナをここで失う訳にはいかなかった。
「時の石が欲しいなら力尽くで奪え」
僕はディアナと戦うため距離を取った。そしてお互いに剣を構えた。
「何故、そんなにゼノに拘る」
僕はディアナに聞いた。
「ゼノは…、ゼノは私の全てなんだ」
「死者の安息」
ディアナの右腕は黒い大きな魔力で覆われた。人の命を刈り取るような大きな黒い鉤爪かぎづめ、まるで大きな黒い化け物の腕のようだった。可視化できるほどの黒い魔力が漂った。
「どうやら本気のようだな」
「暗黒解放:死と滅亡の運命・もう一つの力」
僕は剣を持った右腕を横に伸ばし、剣を斜め下に向けた。そして唱え、僕の頭の上に赤い天使の輪が現れ、剣から赤い魔力が漏れ、体の周りからは赤い閃光が光り、そして消えた。
「ゼノを救うのは諦めろ」
僕は黒い大剣に有りっ丈の力を込めた。僕の周りに赤い稲妻が走った。僕の剣の持ち手から刀身にかけて赤い閃光が走る。僕の黒い大剣は赤いオーラが渦みたいに流れた。
「時の石を渡せ!!」
ディアナは叫び、こちらに飛び掛かって来た。
………。
ディアナは必死に戦うがヨミには結局勝てなかった。
「お願いします、時の石を私に貸して下さい。お願いします」
ディアナは地に這いつくばり、僕に縋るように僕の足下の裾を握りって懇願した。
「悪いがお前に死なれちゃ困るんだ」
僕は無残にもそう言い放った。
「二人とも何してるの!」
ルナの声に僕たちはびっくりした。ディアナは立ち上がった。
「…で、ディアナはゼノを蘇らせるためにヨミと戦ったんですね」
ルナは僕とディアナの話を聞き、そう言った。
「ヨミ!貴方は私に約束しましたよね。自分の子供が危険になったら必ず守るって」
「あの約束は嘘だったの?ヨミ」
「それは…」
僕は涙を流し死んだゼノを抱きしめるルナを見て言葉が出なかった。
「ヨミ。ディアナに時の石を渡して」
「分かったよ」
僕はディアナに時の石を渡した。
「お願い、ゼノの命が奪われる前に時間を戻して」
ディアナは時の石を握り、強く願った。そして時間は巻き戻った。
「お前も私と同じ痛みを知れえええ」
「召喚魔法:キマイラ」
アグラヴェインはゼノの目の前に獣を召喚した。
「あああああああああああ」
ゼノは自分の身を守るために氷魔法で獣に氷柱を当てるが傷一つ付かなかった。
「ゼノに私の力を譲渡する!!」
ディアナはゼノの方へ手を伸ばし、白い天使の輪の力をゼノに譲渡した。ゼノは獣に身体を噛みつかれたが傷一つ付かなかった。
「お前、時間を巻き戻したな、じゃあ、お前が死ねえええええええええええ」
アグラヴェインはそう叫び、剣を振り下ろした。
「ふう、間に合った」
ヨミはディアナに振り下ろされた剣を防いだ。
「お前!」
アグラヴェインはヨミが現れたのに驚いた。
「お前に恨みは無いが死ね」
ヨミの黒い大剣でアグラヴェインは刺し殺された。召喚獣は消えた。
「ゼノ!!」
ディアナはゼノの方へ駆け寄った。
「大丈夫?怪我は無い?」
「師匠…」
ディアナはゼノを抱きしめた。
「ゼノ…」
ルナはゲートでここに辿り着き、僕の隣に来てゼノとディアナを見守った。
「ルナ、ディアナとゼノを任せて良いか?」
「ええ」
ルナは答えた。
僕はまだ円卓の騎士と戦っている自分の子供達が心配なのでその場を去り向かった。僕は心配しながら子供達の所に行ったがみんな無事であった。
こうして円卓の騎士との戦いの幕は下ろされた。
円卓の騎士との戦いから二日が経った。
「父さん、ちょっといい?」
僕は自分の娘達とお菓子を食べていたらレオにそう言われた。レオの後ろにはロキがいた。
「で、話は何だ?」
僕とレオとロキは外に出た。
「円卓の騎士との戦いで俺を助けるためにロキは力を失った」
「父さんには悪いけど、ロキに父さんの力の一部を譲渡して欲しい」
レオはそう言った。
(なるほどロキが気が進まないような顔をしていたのはそういう事だったのか…)
「いいよ。ロキお前に僕の力を譲渡するよ」
「円卓の騎士との戦いで僕に戻ってきた力があるからそれをロキ、お前にやるよ」
「ありがとう、父さん」
ロキは僕に礼を言った。
「手を出して」
そう言うとロキは手を出した。僕はロキの手を握った。そして僕の頭の上に灰色の天使の輪を出した。
「ロキに力を譲渡する」
僕の頭の上にあった灰色の天使の輪は無くなり、ロキの頭の上に灰色の天使の輪が現れた。
「ありがとう、父さん。ありがとう兄貴」
ロキは僕らに礼を言った。僕たちは家の中に戻った。
それから数日後…。
その日の早朝、玄関のドアノックをガンガンと叩く音が聞こえ、エリナは家の玄関の扉を開けた。
「あら、リリア。こんな朝早くからどうしたの?」
エリナは聞いた。
「はあ…、はあ…、ヨミを…、呼んで…、早く」
リリアは息を切らしそう言った。リリアは走ってここまで急いで来たようだ。何故、ゲートを使いここまで来なかったのか分からないがリリアはテンパっているようだった。
リリアの徒ならぬ様子にエリナはヨミを急いで呼んで来た。僕はエリナに起こされ、玄関へ辿り着いた。みんな起きて玄関へ集まった。
「あっ、ありがと」
シエラは水をコップに入れリリアに渡し、リリアは一気に水を飲み干した。
「どうしたんだ?リリア」
僕は聞いた。
「イザベラが殺された」
リリアはそう答えた。僕はそれを聞いて驚いた。皆も驚き、静まりかえった。
「どういう事なんだ!」
僕は突然の事で理解出来ず、リリアに聞いた。
「朝になってもイザベラが起きないから私が起こしに行ったらイザベラが血まみれになって死んでいたんです」
「誰が殺したんだ?」
「分からない」
「お前らの仲間に殺されたのか?」
「分からない!」
リリアは何も分からないようだった。
「お前達はこの家から出るな、俺はイザベラの所へ行く」
僕は家族にそう言い、リリアとゲートを使いイザベラの所に行った。
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