17話 僕の可愛い娘達
「暗黒咆哮」
僕は呟いた。空気中にある無数の膨大な魔力が僕を中心に集まる。僕の身体は少し浮かび、魔力は僕に向かって流れ、包み込み、美しい深い黒色の渦の球体となった。
そして球体は割れ地面に破片が落ちた。僕の宙に浮いていた足は地面に着いた。僕の姿は変わり、黒い鎧を身に纏い、四大死宝と深い黒色の見たことの無い文字が刻まれた首輪を身に付けた姿となった。僕の眼の角膜の色は赤に変わり、瞳孔は黒く鋭く尖り、僕の目の光りは失われ冷たい目となった。そして僕の左の頬には真っ直ぐ縦に抉られた三本の黒い鮫のエラ孔のような物が現れた。
手は指先から手首まで禍々しい深い黒色をしており、指先の爪はどんな物でも斬り裂く鋭利な爪であった。足は化け物みたいな禍々しい黒い三本鉤爪のみで足の爪の部分に二本、踵に一本の鉤爪だった。足の鉤爪が地面に突き刺さっており、鉤爪のみで身体を支えていた。鉤爪は人の頭を鷲掴みし、粉砕する事の出来るような禍々しい大きな爪であった。僕の両手足の全部の指先から黒いオーラが煙のように上に上がった。先までの力とは別の次元の力となっているのを誰が見ても言える位、異質な力であった。
「行くぞ、レイス!!」
「ああ。来い、ヨミ!!」
僕とレイスは構えた。
「暗黒流動!!」
僕は目に見えない風の斬撃を飛ばした。重い風の斬撃にレイスは遠くに飛ばされる。
「グラアアッ!!」
僕はレイスに向かって手を右上から左下に振り下ろした。すると荒い風の斬撃が物凄い音を立ながらレイスに向かって行った。
「………」
レイスは風の斬撃を避け、僕を中心に周りを走り始めた。
「グラアッ!グラ!グラアッ!!」
僕の周りを走るレイスに僕は風の斬撃を飛ばす動きをし無数の風の斬撃を飛ばした。斬撃は音を立てながらレイスを追うがレイスは全力で走り、回避した。
「直線斬り!!」
レイスは僕に向かって死角から飛び込んできた。
「なっ!!」
「ゴホッ!」
僕は後ろに振り向き、レイスの右手の手刀を左手で受け止め、僕は右足でレイスの腹を蹴り上げた。
「くっ!!」
レイスはその衝撃で後ろに吹き飛んだ。
「クソが…」
僕は攻撃の手を緩めず、レイスに向かって行った。
「暗黒竜拳!!」
僕は深い黒色のオーラを拳に纏わせた。
「真白竜拳!!」
レイスは拳に白色のオーラを纏わせた。
「レイスウウウウウウウウウウウ!!」
「ヨミイイイイイイイイイイイイ!!」
僕とレイスは互いに拳を振るう。
「くっ……」
レイスは僕の大振りの拳を防御する。
「オラオラオラアッ!!」
僕は両拳で連続攻撃を繰り出した。レイスは的確に防御する。
「!」
レイスも攻撃に転じ、僕とレイスは殴り合った。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
レイスは重い一発の拳を僕の頬に打つけた。
「んぐっ!!」
僕は今の攻撃で遠くまで弾き飛ばされた。僕は口から流れ出る血を腕で拭った。
「死ねええええええええええええ」
僕はレイスの元ま走り、レイスの顔に目掛けて鋭い足の鉤爪で打つけようとした。
「真白結界」
レイスは白いバリアを張り鉤爪の攻撃を防いだ。
「馬鹿な!」
僕はバリアを破壊しようと力を込めるとレイスのバリアに罅が入った。
「ぐっ!!」
僕はバリアを土台に蹴り、後ろに一回転した。僕は地面を手の爪で削り取り勢いを殺した。
「ガアアアアッッ!!」
そして地面を強く蹴り、レイスに向かって物凄いスピードで蹴りを入れた。
バリンッ!!
バリアは破壊され破片が地面に散らばった。
「がああっ!!」
レイスの顔面に僕の鋭い鉤爪の右足が入った。そしてレイスは勢いよく後ろ頭を地面に強打した。
「終わった…」
僕はポツリと言葉を発し、元の姿に戻った。レイスに奪われた力が自分の所に戻ってくるのを感じた。
「やった、やったぞ。父さんがレイスを倒したぞ」
クロスはそう叫んだ。みんなほっとした。
「カナエ!カナエ!」
レイジは未だにカナエを摩り名前を呼んでいた。
だがしかしカナエを何度も摩っても目を覚まさなかった。
「東雲…。お前…、死ぬのか?」
「俺はもうすぐ死ぬ。だから最後の俺の力を振り絞りお前の命を救う」
レイスは朦朧とした意識の中でカナエに手を向けた。レイスの手から煌めく光がカナエの方に向かって行き、カナエの身体に入っていった。
「レイジ…」
カナエは目を覚まし、レイジの名前を呼んだ。
「カナエ!」
レイジは抱きしめた。レイスはカナエが目を覚ました様子を見て安堵した。
(昔の事だから君はもう僕の事を忘れているだろう。君が幸せなら君が他の男と結ばれてもいい。俺は君を救った、それだけで十分だ)
レイスはそう思いながらカナエに向けていた手を元の位置に戻した。レイスの目はだんだん虚ろな目になっていった。もうすぐ死ぬようだ…。
「………」
カナエはレイスの側まで歩いて来た。
「私を救ったのは貴方ですよね。ありが…」
カナエは驚き言葉が途切れた。レイスの顔を見て誰なのか思い出した。
「佐藤くん…」
そうレイスの正体はカナエの学生時代のクラスメイトの佐藤くんであった。
「佐藤くん、どうして…」
「はは、僕の事、覚えてくれてたんだ」
カナエは側に駆け寄り佐藤の手を握った。
「何でどうして?」
「僕が君の代わりに復讐してやろうと思ったから…」
「そんなの頼んでない!!」
カナエは声を震わせた。
「もう直ぐ俺は死ぬ。だから僕の手を俺が死ぬまで離さないでくれ」
「うん」
カナエは頷いた。
「ありがとう…」
レイスと名乗っていた佐藤は深い眠りに就き死んだ。
「佐藤くん!」
カナエは佐藤の身体を揺さぶるが佐藤は目を覚まさなかった。佐藤は安らかな表情をしていた。
「ヨミくん…」
「何だ?」
カナエが僕の名前を呼ぶんで聞いた。
「佐藤くんをちゃんとした場所に埋めて上げたい」
「ああ、分かった」
僕はそう答え、佐藤を空間魔法でここから移動させた。
「お父さん」
アリスは僕のことを呼んだ。
「分かってるよ、アリス…」
僕はアリスに左手を向けた。
「ギィッ」
ルークは僕に剣を振り下ろした。僕は右手に持っている黒い大剣で防いだ。
「どういうつもりだ?」
僕はルークに聞いた。
「どういうつもりだ?じゃ無え。俺はさせねえぞ、アリス姉を過去に送るなんて。俺はこれを阻止するために修行をして強くなったんだ!」
ルークの強い意志を感じた。
「ルーク!!」
アリスはルークに叫んだ。
「いいの、ルーク。私が過去にいかないとせっかくレイスを倒したのに全てが台無しになる。だから私を過去に送って、お父さん」
ルークは涙を流した。
「いいのかよ、過去に行ったら元に戻れる保証は無いんだぞ」
ルークは言った。
「本当は過去に行くのは逃げ出したくなるくらい、怖いよ。でもお父さんなら何とかしてくれるって信じてるから」
アリスは涙を流しながら、精一杯の笑顔を見せた。
「………、やっぱり出来ない」
僕はアリスを過去に送ろうとしたがやめた。
「お父さん!」
「アリス、今現在、何も特に変わったことは無いからお前は過去に行かなくても大丈夫だ」
「ダメ、お父さん。私を過去に送らないと全てが変わってしまう」
アリスは僕にそう言った。
「ぐっ、何だ?」
僕の左手が勝手に動き、アリスへ手を向けた。そしてアリスの足下に魔方陣が現れた。
「良いよ、お父さん。それでいいの」
「違う、俺の意志じゃない!糞がああっ」
僕は黒い大剣を地面に落とし、空間魔法でナイフを取り出し、自分の左腕をナイフで刺した。
「お父さん、やめて!」
「止めろおおおおおおおおおおおおおおおお」
僕は力一杯ナイフで腕を刺すが魔方陣は消えなかった。
「行ってくるね。お父さん」
「そんな…」
アリスは消えた。アリスは過去に行った。僕は力が抜け、両膝を地面に付いた。
「父さん…」
ルークは僕の左腕を回復魔法で治してくれた。
「ルーク、お前はみんなの介抱をしなさい。僕はやらなければいけない事がある」
僕はそう言い残し、その場から去った。
(ヨミ、お前がやらなければいけない事は分かっているな)
(ああ、分かっているさ)
僕は自問自答し、人が座れる大きな岩を見つけ、僕はそこに腰を下した。
「アリス、アリス!」
僕は手を組み念じた。
「ダメ、お父さん。私を過去に送らないと全てが変わってしまう」
アリスの声が聞こえた。
「ぐっ、何だ?」
僕は念じ、過去の僕の左手を動かしアリスへ手を向けさせた。そしてアリスの足下に魔方陣を展開した。
「良いよ、お父さん。それでいいの」
アリスの声が聞こえた。
(ごめん、アリス。ごめん)
僕は涙を流しアリスの名を呼んだ。
そしてアリスは過去へ行った。
(お父さん、いるの?)
アリスが過去に送られている間、アリスは僕にそう言った。
(ああ、いるよ)
(何で?)
(お前を無事に過去に送るためだよ)
(そっか…)
アリスは心なしか嬉しそうだった。
(うううっ)
アリスは苦しんだ。
(大丈夫か?アリス)
(身体中が焼かれているみたいで痛いよ。お父さん痛いよ)
アリスは苦しんだ。
(アリスの痛みをこの俺に!)
(うああああっ)
アリスの痛みを僕が代わりに受けた。身体中が焼かれていくようだった。僕は手を組みながら、口や目、身体から血が流れた。
(アリス、大丈夫か?)
(うん。大丈夫。お父さんは大丈夫?私の痛みを代わりに引き受けたんだよね)
(ああ、大丈夫だ。もうすぐ過去に辿り着く、お前は自分の生きたいように生きろ。逃げ出したっていいんだ)
僕はアリスにそう言った。
(私、逃げないよ。過去を変えるために戦うよ)
(そうか…)
僕はそう答えるしかなかった。
(出口が見えてきたよ。もう大丈夫だよ、お父さん)
(もう一人で大丈夫か?)
(うん、ありがとう)
(アリスが過去でやることを終えたら、お前を必ず元の世界に戻してやるからな)
(うん)
アリスはその言葉を聞いたとき、泣きそうになった。
アリスの声はそれを最後に聞こえなくなった。アリスは無事に過去へ行った。
その頃、レオ達は空間魔法で自宅に戻った。
「ただいま」
ルークが玄関で待っていたエリナを見てそう言った。
「ルーク!あなた何年家に帰って来てないと思ってるの、手紙の一つも寄越さないで!!」
「ごめん、母さん」
「無事で良かった」
ルークはエリナに抱きしめられ、恥ずかしがった。
「エリナ姉さん、ルーク兄、凄かったんだぜ。あのレイスを圧倒したんだぜ」
「なあ、兄さん」
「ああ、凄かった」
クロスは興奮気味にそう言い、ロキに同意を求めた。
「強くなったんだね」
「レイスには油断してボコボコにされたけど」
ルークはポリポリと頬を掻いた。
「貴方を修行に行かせて良かった。本当に良かった」
エリナは涙を流した。
僕は家に戻り、玄関の扉を開け中に入った。
「アリア…」
僕の目の前にアリアが立っていた。アリアの後ろにはみんな心配そうにこちらを見ていた。
「アリスはどこだ?」
アリアは僕にそう聞いた。
「アリスは過去に送った」
僕がそう言うとアリアは僕の顔を殴り、僕は地に倒され何度も殴られた。みんなは僕を殴るアリアを止めた。
その日の夜。
「お父さん、いる?」
僕とシエラの娘であるノアが扉を開け、中に入った。
「どうしたんだ、ノア」
僕は読んでいた魔導書を閉じ、机の上に置いた。ノアが一人で僕の部屋に来るなんて珍しいので驚いた。
「こっちにおいで」
僕はそう言うとノアはこっちに来た。僕はノアを抱きかかえ、僕の膝に乗せた。
「寝れないのか?」
僕が聞くとノアは首を振った。
「お父さん、私の力を返して」
「レイスと戦った時、使った白い力はお前のだったか…」
僕が奪った力はノアの力だった。
「私の力でアリス姉さんを過去へ送らなくていいようにするし、お父さんの大切な人、アリサさんが死なないように私が力を使うから。私の力を返して」
「いや、ダメだ。お前に力を返さない」
「私がみんなを幸せにするから。不幸な人をみんな救うから」
ノアは僕にそう言った。
「僕が精一杯生きてこの結果だから、僕はそれを受け入れる。アリサが死んだこともアリスを過去に送ったことも…。僕は後悔していない。もしそれをお前が変えようとするなら、俺はお前を一生、許さない」
僕は強い眼差しでノアにそう言った。
「ふえっ…」
「ノア!」
ノアは強い言葉を言われ、涙を流し、部屋を出て行った。
「どうしたの?ノア」
「お父さんが、お父さんが」
シエラの部屋でノアはポロポロと涙を流し、シエラは抱きしめた。
「お父さんと喧嘩したの?」
「うん」
「お父さんに何かされたの?」
「ううん。私が悪いの」
「じゃあ、お父さんと仲直りしないとね」
「うん」
ノアは頷いた。
「お父さん…」
ノアは僕の部屋の扉を開け中に入った。
「お父さん、先はごめんね」
「良いよ。先は僕も言い過ぎた、ごめん」
僕はノアの頭を撫でた。
「お母さん、仲直り出来たよ」
ノアはシエラの方へ行き、抱きついた。
「シエラ、まだ起きていたのか」
「うん」
シエラはそう言った。
「お母さん達、何してるの?」
トワは眠たい目を擦りながら部屋に来た。
「二人ともお父さんの所に来なさい」
僕がそう言うと、ノアとトワが来た。
「二人とも可愛いな。ああ、可愛い。僕の天使達」
僕はノアとトワを抱き、膝の上に乗せ頬ずりした。
「昔、シエラは男の子しか生まれなくて悩んでいたんだ。でも君たちが生まれてくれた。君たちは神様からの贈り物なんだよ。生まれてきてくれてありがとう。愛してるよ」
僕はノアとトワを抱きしめた。
シエラはその言葉を聞くと涙を流した。
「夜ももう遅いし、三人共もう寝なさい」
「分かったわ」
「お父さんもね」
「お父さん、またね」
三人は僕の部屋から出て行った。
次の日。
僕はイザベラとリリアと一緒に魔女ディアナの所に行った。
「何の用だい?」
魔女ディアナは聞いてきた。
「瀕死状態の人を回復させる薬が欲しい」
僕は答えた。
「ああ、お前さんの娘に使うのか。いいじゃろう。お主に薬をやろう」
「ありがとうございます」
僕は感謝した。
「だが、お前の世界を創り変える事の出来る白い力、死と滅亡の運命・失われた恐怖と交換じゃ」
「ディアナ!」
イザベラは焦った。何故ならディアナがその力を何に使うのか分かったもんじゃないからだ。
「分かった。薬は僕の力と交換だ」
「話が早くて助かるのう。これに力を込めろ」
ディアナは黒い玉を僕に渡し僕は力を込めた。
「はい」
僕は力を込めた黒い玉をディアナに渡した。
「美しい。今まで見たどんな力よりも美しい」
ディアナは黒い玉を見てそう言った。」
「ちょっと待ってな」
ディアナは奥へ行き、薬を持ってきた。
「はい、これ」
ディアナは薬を渡してきたので受け取った。
「この薬を飲ませればどんな傷を負っていても治るのか?」
僕は不安になりディアナに聞いた。
「ああ、どんな傷でも治せるぞ。死体でも時間が経ってなければ復活するし」
ディアナはそう言った。
「それは凄いな。薬の副作用は無いのか?」
「副作用は無いな」
「そうか。ありがたく使わせてもらうよ」
「ありがとう。ディアナ」
イザベラはディアナと話があるそうなので僕は一人でディアナの家を出て家に帰った。
「力を奪われてありがとう何て言われるなんて、優位な取引なのにまるでこっちが損しているみたいじゃないか」
ディアナがそう言うとイザベラは笑った。
「そうね。ヨミにとって自分の力は取るに足りない物なのよ」
イザベラはそう言った。
「そういえば貴方。何故、ずっとその老婆の姿なの?」
イザベラはディアナにそう言った。
「まあ、お前達以外誰もいないし、元の姿に戻ろうか…」
ディアナは自分に魔法を掛け、若い姿になった。
「ええっ…、ええー」
リリアはそれを見て驚いた。
「何をそんなに驚く」
「いや、驚きますよ」
リリアはそう言った。ディアナの本当の姿は美しかった。
「リリア、貴方は先に帰りなさい。私はディアナと話さなければならない事がある」
「分かりました」
リリアは一人で帰った。
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