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1話 暗黒咆哮・第二形態

 俺は最大の敵である運命王:クロムと荒れた大地の上で戦っていた。その所為で鎧と身体はボロボロになっていた。互いの手と足の形態は保たれていた。


 手は指先から手首まで禍々しい深い黒色の化け物の手に、指先の爪はどんな物でも斬り裂く鋭利な爪で、足は化け物みたいな禍々しい黒い三本鉤爪で足の爪の部分に二本、踵に一本の鉤爪だった。足の鉤爪が地面に突き刺さっており、鉤爪のみで身体を支えていた。鉤爪は人の頭を鷲掴みし、粉砕する事の出来るような禍々しい大きな黒い爪であった。


「お前に面白い物を見せてやろう」

 運命王は立上がると空間魔法で深い青色の首輪を取り出した。


「その首輪は…、俺の孫から奪い取ったのか?」


「ああ、そうだ」

 運命王を中心に黒い大嵐が生まれた。そして大嵐は消え、運命王は深い青色の鎧を身に纏い深い青色の二つの盾を両手に持った姿になった。


「傷が癒えてくる。ああ、良い気分だ」

 運命王は身体の傷を回復させた。


「どうだ?この最強の鎧、大崩(たいほう)の鎧:アビスを見た感想は?」


「ああ、とても美しい鎧だ」

 僕は答えた。


「お前がその鎧を使うなら私もお前に見せてやる。最強の鎧を」

 僕は黒い大嵐に包み込まれた。そして大嵐は消えた。僕は深い赤色の鎧を身に纏い、深い赤色の首輪を身に付けた姿となった。鎧の下には黒いコンプレッションウェアを着ていて、(へそ)が見えるような鎧とインナーを身に付けていた。


「支配の鎧:クリムゾン」

 僕の先まで負っていた傷は治り、体力も回復した。


「ほう。それがお前の最強の鎧か…」


「ああ、そうだ」

 僕は答えた。


「お前、自分の事で精一杯で気付いていないようだな」

 運命王は僕にそう言った。


「お前の大切な物」


「テオ」

 運命王がそう言うと僕はテオの存在を忘れていた。僕は辺りを見回すがテオは何処にも居なかった。


「テオならここだ」

 運命王は空間魔法でテオの死体を取り出し、地面の上に置いた。


「返してくれ」


「あん?」

 僕は運命王に向けて手を伸ばした。


「俺の大切な息子なんだ。返してくれ」


「ふふ」

 運命王は笑った。


「嫌だ」

 運命王は無残にもそう告げた。


「俺の息子はこの戦いには関係ないだろ。だから返してくれ、頼む」

 僕は懇願した。


「ああ、此奴はこの戦いには関係ない。だが私はお前の絶望する顔が見たい」

 運命王はニヤリと笑った。


「お前はどうせこの戦いが終わったらテオをどうにかして生き返らせるつもりだろ」


「私はそれを許さない」

 運命王は右手に炎を生み出した。


「止めろ、頼む、止めてくれ」

 僕は何とか運命王のしようとしている事を止めさせようと頼んだ。


「お前が何を言おうとも無意味だ。屑息子に生きる価値無し」


「止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 僕は叫ぶが、運命王はテオの身体を凄い火力で燃やした。テオは跡形も無く灰になった。


「復活阻止☆成功☆」

 運命王はふざけた様子で言った。


「テオ…、テオ」

 僕は灰となったテオに近づく…。運命王は後ろに移動した。


「うあっううっ」

 僕は地に膝を突き、灰を手繰り寄せた。


「ヨミ。何故、この世界はこんなにも残酷なんだろうな。頑張って生きてる奴が損して生き地獄を見る世界。なあ、何でお前はこんな世界を作ったんだ?」


「うううう」


「もう壊れてしまったか…」

 運命王は僕の方を見て対話しようとしたが僕の心は完全に折れてしまった。


「テオが死んだのもお前の所為、アリサが死んだのもお前の所為、全部お前の所為なんだよ!!」

 運命王は声を荒げた。


 テオは僕を庇い運命王に剣で斬られ致命傷を負った。死ぬ直前、テオは僕に言った。その最後の言葉を思い返した。


「父…さん、戦っ…てくれ…、家族の…だめに!」

 俺の感情が高ぶる。どんなに息子は屑だと言われようが最後には家族を想ったんだ。テオは屑じゃ無い。俺の誇りなんだ。


「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 俺は今まで自分が何も出来なかった事に対して怒りが湧いた。


「…………殺す、殺してやる」


「そう、其れで良い。人は互いに憎み合いながら生きるのがこの地獄の世界での正しい生き方なんだよ」

 僕は立ち上がった。深い赤色のオーラが僕を包み込み、深い赤色の球体となった。そして球体は消え僕の姿が見えた。


暗黒咆哮あんこくほうこう第二形態セカンドフォーム

 頂点二つが上にくる正六角形の形の胸の鎧の部分にマヤ暦占星術における太陽の紋章の中の一つ『赤い月』の紋章が浮かび上がった。


 鎧の胸の部分の形は平べったいのでは無く、膨らんでいて前に正六角形の形が出っ張っている形であった。


 そして両眼の下に黒い刻印が浮かび上がった。その刻印は目の下一センチ空けて、眉毛と平行な直線で耳元から鼻近くまで伸びている。そして直線の真ん中から耳垂(みみたぶ)に向って一直線に黒い刻印が伸びている。まるで耳に向かってYの文字が横に倒れているかのような刻印だった。


 口の中の下顎の両方の第一大臼歯(だいいちだいきゅうし)は発達し、硬い物を簡単に噛み砕くかのような上に突き上げた牙になった。


「がああああああああああああああああああああああっっ!!」

僕は怒りに満ち咆哮した。


「はああああああっ!!」

 運命王の僕に呼応するかのように力を自分の鎧に込めた。力を込める事で鎧の胸の部分に鮫のエラ(あな)に似た、縦の太い三本線の刻印を浮かび上がらせた。そして左の頬に鎧に浮かび上がらせた刻印と同じ物が浮かび上がった。


「双盾」

運命王はそれほど大きく無い二つの深い青色の盾を出し握りしめた。盾の形は上の部分が平らで両側は下に真っ直ぐで、下の部分は尖ってる形だ。盾の裏の上の部分に盾を持つ為の持ち手がある。


「魔力固定:大双剣だいそうけん

 僕は魔力を練り黒い二つの大剣を作り出し握りしめた。。


「行くぜ!」


「ああ!」

 僕と運命王は構えた。


 ガキン!グググググ。

 僕は右手に握りしめた黒い大剣を振り下ろした。運命王は左手に持っている盾でそれを防いだ。


 バリン!バリンッ!!バリンッ!!

 互いの剣と盾が打つかり合って音が鳴り響く。


「うおらああっ!!」


「ガキンッ!!」 

 僕は左手の大剣の持ち手を逆手に持ち、身体を回転させ二つの大剣をぶん回した。


「くっ!!」

 運命王はこの攻撃を防御出来たが、弾き飛ばされた。


片盾突き(へんじゅんづき)!」

 運命王は地面を蹴り僕に向かって行き、右手の盾での突きの攻撃をした。


「単調な攻撃」

 僕は軽く運命王の攻撃を()なした。


双盾回転(そうじゅんかいてん)。おらあああっ!!」

「!」

 運命王は突きをした右手の盾を右にぶん回し、そして左手の盾もぶん回した。


「がああっ!!」

 僕は盾で後ろを斬られ(うめ)いた。


「くそがああああっ!!」

 僕は右手に持っていた大剣の持ち手を逆手に持ち後ろにぶん回した。


「バリン!!」

 運命王は咄嗟の判断でバリアを展開させ、僕の攻撃を防いだ。力が打つかり合った為、互いに弾かれた。


「グズグズになるか。凄い防御力だ」

 僕は両手に持った大剣を魔力に戻した。その魔力は僕の身体に戻った。


暗黒双拳(あんこくそうけん)

 僕は自分の拳に真っ黒のオーラを纏わせた。


双盾の舞い(そうじゅんのまい)

 運命王は構えた。


 ギインッ!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!!

 運命王は双盾で僕に向かって舞うように攻撃を繰り出す。僕は拳で防御する。


「双盾回転」

 ギギギギギン!!ギギギギギン!!

 運命王は身体を回転させ双盾をぶん回した。身体を回転させることで攻撃の威力、キレが上がる。僕は防御の姿勢を取り防御する。僕は防御するが回転攻撃の威力に後ろに押される。


「くっ…」

 余りの威力に僕は蹌踉(よろ)ける。


双盾連打(そうじゅんれんだ)

 バリンバリンバリンバリンバリンバリン!!

 運命王は僕に両手の盾を何度も打つける連続攻撃を繰り出した。僕は連続攻撃を浴びせられた。


「くっ…」

 僕は後ろに移動し回避行動を取った。僕の身体から血が流れ、痛みを感じ片膝を地面に突いた。


「驚いた、まだ立てるのか…」

 僕は血を流しながら立上がり構えた。運命王は僕を見て感心した。


暗黒流動(あんこくりゅうどう)!!」

 僕は獣の手のように指と指の間を開け爪を立てた。そして僕は身体を奇抜に動かし両手で振り払う動作をし、見えない風の刃を作り出した。


(来るっ!)

 運命王は僕の見えない攻撃を察知し、両手の盾で攻撃を防ごうとする。


「おらおら」

 運命王は盾で攻撃を防いだ。


「!」

 だが僕の想定より重い攻撃に運命王は態勢を崩した。


(決まった)

 僕は見えない風の斬撃を三発放ったので最後の一発の風の斬撃が運命王に迫り来る。僕は勝利を確信した。


円刃(えんじん)

 運命王は攻撃の当たる直前にそう呟いた。


 フオン!! 

 運命王は僕の攻撃を無散させた。


「うらあああっ!!」

 僕は風の斬撃を運命王に向けて飛ばす。


「無駄だ」

 運命王は僕の攻撃を全て無にした。


「無力感を感じるだろ?」


「これは私が作り出した最強の防御技。まあ、只の風魔法のバリアなんだがな」

 運命王はそう僕に言った。


「そんな、俺の攻撃は只の風のバリアに負けたというのか…」

 僕は唖然とした。僕は円刃の攻略法を頭で考えるが思いつかなかった。


「まあ、只の風魔法のバリアっていうのは嘘なんだが」


「………」

 僕は黙って運命王の話に耳を傾けた。


「私のバリアは無数の風の刃で出来ている。私の風の刃に当たればどんな物でも細切れになる」


「ヨミ。果たしてお前に私の最強の防御を打ち砕く事は出来るのかな?」

 運命王は僕にそう言った。


「あれを試すか…」

 僕は掌を合わせた。運命王はこれから来る攻撃を察知し円刃を展開した。


火祀火術(かしかじゅつ)火景火羅万象(かけいからばんしょう)火刃(かじん)

 僕は唱えた。すると運命王の周りを全方位囲むように禍々しい無数の深い赤色の火の刃が現われた。火の刃は燃えていた。


「死ね」

 そして火の刃は運命王に向けて飛んで行った。火の刃は無限に生成され、止むことは無かった。


 ギギギギギギギギギギギギギギン。

 火の刃と風の刃のバリアが打つかる音が鳴り響く。


「アンタの技が幾ら最強の絶対防御のバリアだとはいえ、隙が全く無いっていうのは無いよなあ」


「火の刃のスピードを上げて行けばアンタは何れ捌き切れなくなる」


「さあどうする運命王!!」

 無限に生成され飛んで行く無数の火の刃を見て僕はそう叫んだ。


 ギギギギギギギギギギギギギギン。

 運命王は風の刃のバリアを維持し防御する。


「何でもっと早くこの術を使わなかったんだろうな」


「この術は大きい化け物に対して使う技だから、すっかり使う事を忘れていたよ。ははは」

 僕はこの技を使った時点で勝ちを確信した。無限に生成され飛んで行く無数の火の刃を見て僕はそう叫ぶ。


「セコい技だと思うよなあ。ああ、俺もそう思う」


「俺だって敵と戦う時はスポーツマンシップを持って戦うんだけど、化け物のお前と戦うんだから仕方無いよなあああ!!」


「俺はもう前までの自分に戻れない!!」


「あはははははははは、死ねい!!!」

 火の刃の生成、飛ばすスピードを上げると風のバリアと打つかる事で起きる音が聞いた事の無い音が鳴り響いた。

 


 十分後…。


「はあ、はあっ、はあ、はあっ…」

 運命王は片膝を地に突けて荒い呼吸をしていた。運命王の身体には無数の火の刃が突き刺さっていた。


(さっき)の攻撃を耐えるとは中々の物だ。流石、化け物と言った所か…」

 僕は感心していた。


「これで決めるッ!!」

 僕は獣のように屈み爪を立てた左手を地面に付けて体重を支え、右手は獣の手のように指と指の間を開け爪を立て横に構えた。そして僕の右手の指先から黒いオーラが煙のように上に上がった。


(次の攻撃で決めるつもりか)


「掛かって来い。お前の全てを見せてみろ。円刃!!」

 運命王は声を荒げ、風の刃のバリアを展開した。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「はあああああああああああああああっ」

 僕は地面を蹴り運命王に向かって爪を立てた右手を突き出し飛び込んだ。


暗黒の尖い爪(ダークネスクロウ)!!」

 僕は叫んだ。風の刃は僕の尖い爪と打つかり合い、音が鳴り響く。


(これだけしても破れないか)

僕は一瞬でそう感じた。


(だが俺はこんな所で負ける訳にはいかんのだ。テオと約束したんだ。俺は勝つ!!)」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああ!!」

 ギギギギギ。

 僕は風の刃のバリアの中にぐぐぐと手を()じ込んだ。


 バリンッ!!


「なっ!!」


「おらああああああああああっ!!」


「ぐあああっ!!」

 風の刃のバリアは割れるような音がした。そして僕は爪を立てた右手を運命王の腹に()ち込む。

 運命王は吹っ飛んだ。運命王の腹からは大量の血が流れ出た。


 勝負に決着が付いた。


「………」

 運命王は意識が朦朧(もうろう)とする中、走馬灯を見た。


 あれは数年前の話だ…。俺には妻と息子が居た。妻は昔から身体が弱く床に伏せっていた。私は妻を看病しながら生活していた。私が仕事で居ない時は息子が妻の看病をしてくれた。家族三人で食事する時間はとても幸せだった。妻も息子も幸せな顔をするので私も幸せだった。


 私たち家族三人は幸せで慎ましい生活を送っていたが、ある日、妻の病状は悪化し医者に診て貰うが妻の余命はあと(もっ)て一週間も無いと言われた。


 それから私は仕事を休み家族と過ごす時間を作った。私と息子は妻の側にずっといた。息子が寝ている時、妻が「もう直ぐ私は死ぬから息子をお願いね」とか(ぼそ)い声で言った。僕はそう言われ涙が込み上げた。私は妻にこう言った。「俺が何とかするから妻と息子と俺がまた幸せに暮らせるように俺が何とかするから」僕がそう言い妻の手を握ると妻は涙を流し、「うん」と答えた。


 次の日、妻は死んだ。嫁は僕の言葉で安心したのだろうか死に顔は安らかな顔をしていた。息子はわんわんと妻の身体を抱きしめ泣いていた。俺は涙を流しながら自分の無力さを痛感した。



 一年後…。


 息子も母親に似たのか床に()せっていた。また医者に診て貰ったらもう直ぐ息子は亡くなると言われた。俺は息子に付きっ切りで看病した。息子は私に聞いた。


「僕も母さんと同じくもう直ぐ死ぬのかな。僕たちは何気ない生活をしていただけなのに何で死なないといけないのかな」


「僕、母さんと父さんとやりたかった事沢山あったのに。僕と母さんは死ぬ運命だと予め決まってたのかな」

 私は息子にそう言われた。


「………」

「運命なんて…関係ねえよ。俺が何とかするから安心しろ」

 私は運命王でありながら運命を否定した。私の声はうわずっていた。私は息子を強く抱きしめた。息子は安心したのか「ありがとう父さん」と私にそう言った。


 次の日、私の息子は死んだ。私は一人になった。私は運命王として生きていたが運命王の家族だとしても運命には逆らえない事が身に染みる程分かった。私は私を運命王として産みだした創造主を心の奥底から憎み、殺意が湧いた。私、いや俺はいつか必ず創造主を苦しめて殺す。只それだけのために俺は復讐の火を絶やさず生きた。


 私はヨミと戦い負けた。私の側にヨミがゆっくりと歩いて近づいてきた。どうやら私に止めを刺すつもりのようだ。ヨミは私の側に辿り着き立ち止まった。


「何か言い残す言葉はあるか?」

 ヨミは私にそう聞いた。


「俺の妻も息子も命を踏み躙られた。お前が作った世界にだ。お前に命を踏み躙られた者の気持ちが分かるか?」

「………」

 私は血を吐きながら言葉を紡いだ。


 私は悔しくて涙が込み上がる。


「俺の妻の人生って何なんだよ。俺の息子の人生って何なんだよ」

 私は泣いていた。ヨミはそれを聞いて何も言えなかった。

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