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8話『デストピアース』


 この世界はデストピアースと呼ばれている。


 何百年も前に世界中を巻き込む大きな戦争が起こり、空から降ってきた鉄の塊で大地は焼かれ、黒い大きな茸のような雲が空を覆いつくしていった。


 ゲオの口から語られるデストピアースの歴史は暗くおぞましいものだった。


 戦火の影響で日照不足に陥り作物は枯れ、疫病が流行り、沢山の子供や動物が死んでいく。


 その過程で、今ではアーティファクトと呼ばれる遺物を作れる技術者は途絶えたらしい。


 寒さの厳しい地域で起きた戦争は激しく、黒い茸のような煙を上げた砲弾は黒雨となり、地表に暮らす全てのものに平等に降り注ぎ、雨は等しく命あるものに呪いを振りまく。


 沢山の命を奪い、生態系を壊滅させた汚染された大地でいち早く環境に対応したのは小さな小さな虫たちだった。


 短い命を重ねるうちに、変質した遺伝子は虫たちを巨大化させて行く。


 人々にも雨の呪いの影響は出ていたが、虫たちによってもたらされる絶滅の危機よりまさるものでは無かった。


 次第に淘汰される人々の中で、社会性昆虫であった蜂の女王の命を救い絆を結んだ英雄が、後にチェスビーと呼ばれる巨大化な蜂と共存する国を作り上げた。


 同じくチェスアントと呼ばれる巨大化した蟻と絆を結ぶことに成功した者たちも国へと加わり、力ない人が周辺から国へと集まっていく。


 チェスビーとチェスアントの世話を人間が行い、その力を借りて国内の害虫を倒した。


 そんな話を聞きながら、虫嫌いの俺は顔を引きつらせる。


 ちなみに虫船とは簡単に言えば、犬ぞりのように水性昆虫を飼いならし海船を牽かせたり、空飛ぶ虫に飛行船を牽かせるものだそうだ。


 そのどちらにも当てはまらない乗り物、それがアーティファクトと呼ばれる古代の人工遺物らしい。


 そもそもそんな古い物が動く時点で快挙だ。


 そして俺の愛船はアーティファクトだとゲオは言う。


「大陸のビアント王国にはアーティファクト専門の修理工房があるから魔石で動くようにしてくれると思うよ?」


 また聞き覚えがない単語が出てきたな。

 

「魔石?」


「げっ!? 魔石も知らないの?」


「すまん、箱入りなんだ……」


 ゲオに頭を下げる。 魔石の知識は今後の生活に直結する情報だからな。

  

「ちょっと魔魚貰っていい?」


 そう言って、生簀を覗き込む。


「好きなのとれ」


 許可を出すと網を生簀に入れて、五十センチは超える大きさのスズキを取り出した。


「ここをこうしてたしかこのあたりにあるは……あった!」 


 器用に頭を切り落とし、頭を立てに割ると、その中央に小さな赤い石が現れ驚く。


「これが魔石だよ、これを砕いてアーティファクトの燃料にしてるんだよ」


 はいっと渡された魔石を手の上で転がす。


「魔石が取れるくらい大きくなった魚はなかなか釣れないから基本的には鉱山産か、凶悪な害虫や害獣から取るんだよ」


 厄介だな……しかし魚……魔魚から採れるのは助かる。 


「海はマーリーン族の領域だから乱獲も密漁も見つかれば容赦なく船ごと沈められるしさ」


 ゲオが続けた情報に俺は顔を引き攣らせた。


 それを早く言え!



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