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34話『神様チート』


 姫命神社が仮設置された夜、大きな満月の下でささやかな宴が開かれた。


 新たにジョブスキルを授かった大人たちの表情が明るい。


 それはそうだろう、ジョブスキルを授かることで自分の適性がわかるだけでなく、今後はジョブスキルのレベルを上げ、才能を伸ばしていく事で作業効率も上がってくるのだから。


「それはそうと、俺もジョブスキルレベルアップがどうのこうの聞こえたな」


 楽しそうな村人たちの様子を俺の隣に座って楽しげに眺めていた瀬織津姫様が俺の声に反応して顔を上げる。


「まぁ妾の使える神力が増えたのもあるが、体内にそれだけ魔素を蓄えて居ればそりゃレベルも上がって当然じゃの」


 ふーん、そんなもんか……


 クラーケンやら脂の乗った魔石持ちの魔魚やらを食べていたおかげで魔素が増えたらしい。


「せっかくレベルアップしたのじゃ、内容を確認してみてはどうかの?」 


「それもそうだな」


 ステータス、ステータス……ステータスってどうやって確認するんだったか?  


  あー、たしか……


「ジョブ……ランク?オープンだったかな?」


 思い出しながら口に出すと、見覚えがあるゲームのステータスに似た形式が目の前に浮かび上がった。


*****

氏名 比寿海人(えびすかいと)


満年齢 1632歳


職業適性(ジョブ)


*****


漁師 レベル4

航海士 レベル3

料理人 レベル2

 以下略

注意! レベルアップに伴い適正のないジョブは非表示になります。 


加護


『海神の愛し子』

大型モンスターを釣って食べることで強化されるチート


『陸神の忌み子』

陸に上がると運気がマイナスに振り切れるバットチート、丘酔いや不運に襲われる。


NEW 『初恋姫の祝福』

『人魚姫の祝福』のなかでも強力な祝福が『初恋姫の祝福』詳しくは番に聞くように!

 

NEW『金山毘売神(かなやまびめのかみ)の加護』

金山毘売神の氏子に与えられる祝福

 

NEW『金山毘古神(かなやまびこのかみ)の加護』

金山毘古神の氏子に与えられる祝福

   

 夫婦神から祝福の効果により以下のスキルを獲得しました。

下半身の傷病治癒 レベル1

夫婦和合 レベル1

子孫繁栄 レベル1

安産 レベル1

鍛冶 レベル1

鑑定 レベル1 


 NEW『姫命の加護』

姫命の氏子に与えられる祝福。

海の神の愛娘より与えられた破魔の加護。罪や穢れを祓い浄める事ができる……

 

 どこからツッコミを入れたらいいものか……新しい加護が四つも増えている。


 特に金華山の二柱の神様からの加護があるのはありがたいがその内容がいかん!


 こんな加護を貰っても独身の俺に一体どうしろってんだよ!

 

 しかも『初恋姫の祝福』ってこれ、『人魚姫の祝福』だの番だのって時点でアクアリーナ絡みだろ絶対。


 あのお転婆人魚はいつの間に、しかもいったい何をしたんだ?


 しかも番に聞けって……番って自称俺の番のアクアリーナの事か?


 毎回思うがもう少しわかりやすく詳しく説明を書いて欲しいんだが……


「瀬織津姫様の加護は『陸神の忌み子』の効果を弱めてくださるあれですよね?」


「そうじゃ、それから……」


 ちょいちょいと少し大きくなった美しい手で、俺を手招いてきたので顔を寄せると、額にペシっと指弾する。


「その元来の日本人特有ののっぺりした容姿では、ちと今の混血が進んだ世では悪目立ちするからの、目眩しの加護をお前に属するものにかけておこう」


 確かに言われてみれば、シンゲンもミチコも顔の彫りが深い。


 日本人よりもハーフと言った風貌なのだ。 


「お前に属するもの、例えばお前の船も目眩ましが効くからの、ついでに悪意があるものを寄せ付けぬようにしておこう」


 うん、神様セキュリティならどんな警備会社にも負けない防犯対策となるだろう、これから俺はグレードに合流しようと考えている。


 攫われた娘達も気になるが、この千六百年も時間が進んでしまった未来で生きていかなければならない以上、このオーナガワ村は俺にとって大切な拠点だ。


 そして第八豊栄丸も……

 

「ありがとうございます」


「なんならやる気が出るように良いことを教えてやろう」


 ふふふんと鼻を鳴らして瀬織津姫様は自慢げにこちらをチラチラと見てくる。


「何でしょう?」


「今はまだ目眩まししか出来ないが、昔の仙台市……今で言う奥州ダーテ藩に、妾を奉る瀧澤神社たきざわじんじゃがある……そこへ訪ねて妾の加護で浄めてほしいのじゃ」


「浄めるのですか?」


「そうじゃ、千六百年前に起きた戦で大地が酷く穢れてしまい、妾の力だけでは浄化しきれなんだ……」


 当時の事を思い出しているのか、ポソリポソリと瀬織津姫様が村の広場の中央で炎を巻き上げる焚き火を眺めて言葉を紡いでいく。


「崩れてしまった社の穢を祓い、御神体を回収してきてほしいのじゃ、さすれば妾の力はまた戻り加護も強まるからの……例えばカイトの船を小さくして箱に入れ持ち運んだり、その逆に元のサイズや大きくすることも可能じゃ……まぁ一度にサイズを変えていられるものは三つまでと言う制約は付くがのぅ」


 いやいやいや、たとえ制約がついたとしてもそれでもかなりのチートだと言わざるを得ない。


 瀬織津姫様の話では、オーナガワ村の港を出発して海路で南下し昔で言う仙台湾から名取川へ、更に内陸部へ行き広瀬川を船で遡上していくのが良いだろうとの事だった。    


『陸神の忌み子』を持つ俺は、陸に上がると運気がマイナスに振り切れるバットチートをかかえていて、本当に丘酔いや不運に襲われる確率が高い。


 しかし川ならば瀬織津姫様の管轄なので大丈夫なのだそうだ。


「名取川や広瀬川を遡上するのはわかったけど、水深がなぁ」


 川用の船と第八豊栄丸で船底の形状も違えば浮かぶために必要なの水深も違う。


「水深などどうとでもしてやろうよ」


 ニヤリとドヤ顔の瀬織津姫様に顔が引き攣る。


 神様マジチート……  

 

 

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