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27話『金山毘売神(かなやまびめのかみ)様の言うことにゃ』


 やべぇ絶賛冷や汗が止まらない。


「そろそろ気がついたかと思うのだけど、ここはあなた方生きていた時代から約千年以上先の未来の世界よ」


 朗らかにお話になる金山毘売神(かなやまびめのかみ)様のお話をただいま正座で拝聴しております。


 金山毘売神(かなやまびめのかみ)のお話では、どうやら俺がこの異世界と化した未来へ飛ばされたのは偶然だったらしい。


 俺が漁に出ていた時、ある国がなんの宣言もなく複数国家へとミサイルを撃ち込んだのだそうだ。


 日本へ撃ち込まれたミサイルの爆風の衝撃で未来にタイムスリップしたわけだが、俺が現代……過去からはじき出されたあと、報復による報復の連鎖によって核施設等が破壊され汚染され被害を受けたりとまさに地獄絵図とかしたそうだ。


 なんとか生き延びた人々は国家再建を目指したが、地上の大半が焦土と化し、知識者や技術者も大勢なくなった世界で新たに文明を築き上げるのは並大抵の事ではなかった。


 そしてそんな世界にいち早く対応してみせたのが昆虫たちだったという。


 汚染された大地に適応するため大型化していったのだ。


 また汚染に対応していったのは昆虫たちだけではなく、汚染水が流れ込んだことで汽水域、陸地に近い海が強アルカリ性の毒海へと変化し、それに対応してみせたのが魔魚や大魔王魚ということらしい。


 次々と明かされる事実に頭痛がするが、未来へ飛ばされたのは事実らしい。

  

「それで、この未来で生きていくのにジョブランクというものが新しく出来たのだけど誰かに聞いたかしら?」


「はい、少しだけですが……」


 俺はゲオから少しだけ聞いた内容をなんとか記憶の彼方から引っ張り出す。


 長い歴史の中で汚染された大地で生き残るために、人間が身に付けた特殊な力をジョブと呼んでおり、それぞれがランク別されているらしい。


 金山毘売神(かなやまびめのかみ)様の補足によればジョブとはいわゆる職業適性の事らしい。


 人それぞれに向いている職業と不向きな物があがあり、職業適性が高いものほど習得が容易だ。


 職業適性の低い仕事でも出来ないことはないのだが、どうしても適正のある人よりも劣ってしまうそうだ。


 たしか神社の神主とか技能審査師ぎのうしんさしと呼ばれるジョブの持ち主に見てもらえばこのジョブがわかるらしい。


 神主や技能審査師は、成人する時に自分に合った職業を導いてくれる特別な能力をもつ人達とされており、幼少期の経験などもこのジョブに影響を及ぼすようだ。


 しかし幼いうちは何かと力を制御しきれずに暴走させる子供もおり、生まれて来てすぐに技能審査師のもとへ赤子を連れていき力は成人するまで封印される。


 この封印、解除出来る能力を持っている者だけが技能審査師となれるらしい。


 また多種多様なジョブの中でも技能審査師、神主、チェスビーやチェスアントと意志の疎通を図れる職業適性は特別でこのジョブに恵まれれば一生安泰らしい。


「いつもは神主を通してジョブを啓示するんだけど、この島には居ないから状況説明もかねてわざわざ出てきたと言うわけなのよ」  


「ただ単に暇だっただけだろうが……ってぇ! 頭を叩くな」


「そもそもあんたはなんでこんな時間から酒を呑んでるんだぃ!?」


「いいじゃねぇか、何百年ぶりの清酒だと思ってやがる! ドブみたいな酒もどきじゃなくて清酒だぞ! 大吟醸だぞ! 別にいいじゃねぇか」


 御神酒を煽りながらボソリと金山毘古神(かなやまびこのかみ)様が呟いた言葉を聞き逃さず金山毘売神(かなやまびめのかみ)様はどこから出してきたのかわからないハリセンを剛速で金山毘古神(かなやまびこのかみ)様の後頭部へと叩き込んだ。 


 神様の夫婦漫才を目の前で繰り広げられておりますが、一見揉めているように見えるけどこれ絶対に俺が居るの忘れてるんじゃね?


「あの~すみません、続きをお願いできますか?」


「あっ、あははごめんなさいね~。 ううん、それじゃあ改めて」


 照れ隠しをしながら金山毘売神(かなやまびめのかみ)様が俺の頭に白魚のように美しい手を俺の潮焼けして赤茶けた髪の上に優しく触れた。


「さて、覚悟はよろしくて?」


「へっ!?」


 美しい微笑みが黒く見えるのは……気のせいだよ……ね? 


「さて、覚悟はよろしくて?」


「へっ!?」


 何を覚悟しろと言うのだろうか、まって!マジでこわいんですけど!?


「幾千幾万八百万の神々を司る別天つ(ことあまつかみ)五神、神代七代の夫婦神、伊邪那岐命神(いざなぎのみことかみ)伊邪那美命神(いざなみのみことかみ)に産み落とされし、我が金山毘売神(かなやまびめのかみ)の名のもとに彼の者の適性を開示賜らんことを……えぃ!」 


 何やらむにゃむにゃと祝詞のような物を威厳たっぷりに唱えたあと、その威厳を台無しにする茶目っ気たっぷりの掛け声と共に凄まじい頭痛が襲ってきた。


「ぐぁぁぁ! 痛ってぇぇえ!」


 あまりの痛みに座っていることすら難しく地面にのたうち回る。


「だから言ったでしょう? 覚悟しなさいって」


 頭の痛みがだんだんと全身に広がっていく感覚に、もしかして死ぬのではないかという恐怖が募る。


「もともと貴方は汚染前の時代からこの時代に来たからね、この世界に身体が適応出来ていないのよ」


 荒い呼吸を繰り返しながら痛みに耐えるなか、のほほんとこちらの様子を見ている金山毘売神(かなやまびめのかみ)様の言葉だけが聞こえてくる。


「言ったでしょう、ジョブランクはこの汚染された世界で生き残るために発現した力だって」 


 少しずつ痛みが引いてくると、陸の上に居るにも関わらず少しだけいつもより身体が軽くなったような気がする。


「はぁ……痛いなら痛いって先に教えてほしかったです」


「あら、どうせここで痛い思いをしなければ、身体が適応出来なくて死ぬだけだもの。選びようがないなら教えるだけ無駄だわ」


金山毘古神(かなやまびこのかみ)様、奥様が容赦ないです」


「あぁ、俺も良くやられるよ。 諦めな」


 俺の嘆願はあっけなくポイッと捨てられてしまった。


「とにかくこれでこの世界でも生きていけるし、消化不良を起こしていた今日まで食べた物もあなたの身体に馴染んだはずよ」


 自分の体がどう変わったのかわからなくて両手を何度も握ったり開いたりして確認する。


「ジョブランクオープ〜ン!」


 着物姿の金山毘売神(かなやまびめのかみ)様の口から中二病のノリで職業適性開示の呪文? らしきものが告げられたが、ふざけているのか真面目なのか判断がつかない。


 どこから現れたのか目の前にひらりひらりと花びらのような物が降りてきて思わず両手で受け止めると習字に使うような半紙サイズの和紙に変わった。


「それに書いてあるのがあなたのジョブランクね、もし神々の祝福があれば下に追記してあるわ」


 そう説明されて、俺は改めて手元の和紙をみる。


 墨と筆で書かれた文字は良く言えば著名な書道の達人が書いたような、悪く言えば判読できないレベルでのたくっていてはっきり言って俺には読めません!

 

「学が足りず申し訳ありませんが、何と書かれているのか読めません!」


「ブハッ! ほら見ろ金山毘売神(かなやまびめのかみ)お前字が汚すぎるんだよ」


 俺の渾身の土下座が笑いのツボに入ったらしく金山毘古神(かなやまびこのかみ)が爆笑していく。


「うっ、うるさいわね! 金山毘古神(かなやまびこのかみ)だって私と大差ないでしょう」


 プリプリと怒って見せる金山毘売神(かなやまびめのかみ)にどこからともなく出した花びらを見せつけながら俺に渡してくる。


「ふふん、こういうのはな書き方が大事なんだよ」


 そうして俺の手の中でA4サイズのコピー用紙に変化した花びらにはゴシック体で書かれたジョブランクが書かれていた。


 しかもなぜかゲームのステータスに似た形式で。


*****

氏名 比寿海人(えびすかいと)


満年齢 1632歳


職業適性(ジョブ)


*****

農民 適正なし

商人 適正なし

漁師 適正あり

戦士 適正なし

航海士 適正あり

 ・

 ・

 ・

以下略 


加護


『海神の愛し子』

大型モンスターを釣って食べることで強化されるチート


『陸神の忌み子』

陸に上がると運気がマイナスに振り切れるバットチート、丘酔いや不運に襲われる。


 ……これはなんと判断して良いものか……陸に関係のある職業適性がほぼ皆無だ。


 しかも俺の歳がおかしな数値を叩き出している。


 確かに見やすく読める書類には……なった。


 なったけれども意味がわからない。


 特に神様からの加護が二つあるのはありがたいがその内容がいかん!


 愛し子に忌み子って真逆じゃないですか!?


 えっ、これは相殺されているのか、はたまた忌み子の方が力が強い気がする。


「『海神の愛し子』に『陸神の忌み子』か、この二つは俺等にはどうにも出来ないな……特に『陸神の忌み子』とは、お前さん何をやらかした?」


「いや、ものごころつく前からなぜか陸との相性が悪かったので、どうして忌み子なんて加護? を貰うことになってしまったのか、全く心当たりが無いんですが」


「いや忌み子は加護じゃなくて呪いだな、お前さんにわかりやすく言うなら(たた)りだ。 神仏に不敬を働き恨みを買うと貰うことができるバットステータスだ」

  

「えー、俺は一体何をしたんでしょう?」


 だめだ、いくら考えても思い浮かばない。


 幼い頃から陸に上がると体調が優れなかったことを考えれば、やはりタイムスリップ前から祟られてしまっていたのだろうか……

 

「まぁ、何にしても忌み子については専門家に聞いたほうが確実だろう……」


「専門家が居るのですか?」  


 そう問いかければ金山毘古神(かなやまびこのかみ)様がニヤリと笑う。


「いるぞ? ここから更に北、もと気仙沼にな」


 


 

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