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もののふの星 リブート  作者: 梶一誠
31/37

ヴァルデス・フリートの足音

 艦艇突入舟艇『バラクーダ』は、今まさに必殺の一弾を撃たんとする『ベーオウルフ』の右舷側砲口に向けて突進を開始した。


 そこから放たれる碧き破壊の光芒と無人で宇宙を駈ける舟艇との軸線が見事に重なり、航法AIはそれに沿って一直線に突き進んでいく。

 その姿はまるで命を持つかのように、冷徹な精度と猛スピードで敵の懐へと迫っていった。


 それを見届けた艦長ルナン・クレールは

「転舵! 回避ぃぃー!」と、叫んだ。

「了解! 奴の舷側をすり抜けます。これしか手がありません!」操舵を担うベルトランの言を受けたルナンは即座に

「全員衝撃に備えろ!」と、船内各区へと通達した。


 発令所に詰めるクルーたちは一斉に部署に装備された手摺りをつかみ、座席に身を収めたまま両足を拡げ、頭を深く下げる防御姿勢を取った。

 中央ディスプレイ前では、アメリアにケイトが先刻と同じようにしがみついている。

 全員の注意が一つに集中し、戦闘の激しさと危機感が場を支配していた。


 それとほぼ同時に『ベーオウルフ』もレールキャノンを発射した。

 冷酷な砲弾は『バラクーダ』の舳先で赤熱するレーザーブレードを直撃し、舟艇は瞬く間に白熱の火炎に包まれ、炎の彗星と化したそれは見事に『ベーオウルフ』の右舷側発射孔に突入を果たしたのであった。


 直後に、(まばゆ)い閃光が発令所内を染め抜いた。すぐに、ミサイル迎撃時とは比べ物にならないほどの強い衝撃が艦を襲い、発令所全体が激しく揺さぶられた。

 ルナンらクルーは、天地お構いなしの大揺れの中で自分の席から振り落とされないように必死にしがみつき、耐え続ける中で再び電源が喪失して暗闇が幅を利かせた。

 それと入れ替わる様に、火花がまたしても上がり小規模な火災が発生した。


「被害状況知らせ!」ルナンは周囲に漂う焦げ臭い臭気と煙にむせ返りそうになるのを堪えた。


 消化班が作業に没頭する中、再び照明が戻り、ルナンは真っ先に像を結び始めた中央モニターを注視した。

 周囲のクルーらが咳き込む中、彼女はそこに映し出された『ベーオウルフ』の発射孔並びにキャノン本体が巨大な爆炎を上げつつ崩壊していくのを目の当たりにしたのだった。


 見事な白亜に染め抜かれた砲身の装甲は完全に吹き飛んで、代わりにそれを構成していた鉄骨類が顕わになっていた。

 それらもまた、爆発の影響によってねじ曲がり、(ひしゃ)げて赤熱した残骸を周囲にまき散らしていく。


「うん? ……あれは?  画像を拡大しろ。キャノンの基部辺りだ」とルナンが指示すると、自動的に問題の箇所へと画像が拡大投影された。


 敵艦の右舷後方、すでに残骸と化した砲身の付け根にあたる部位。おそらくキャノンの磁界収束波を束ねる複合連鎖コイルが集積された区画は、大きく楕円状に膨らんでいた。その周囲には放熱板と思われる大きなスリットが幾重にも重なっている。


 その区画もまた黒ずみ、無惨な姿を晒していたが、原型はまだ保たれていた。その中から、チカチカと蒼白い光が明滅するのが見える。


「あれは……『バラクーダ』か?!」ルナンの声を皮切りに、クルー達の視線が一斉にモニターに集まった。

 なんと、キャノンの直撃を受けて突入した際に生じた膨大な熱エネルギーで蒸発したかと思われたアサルトボートの船体後部が、突き刺さっていたのだった。それは未だに船尾ロケットを噴射させ、前進を試みていた。


 ルナンが視認したチカチカする光は、その噴射炎だったのだ。


 『ベーオウルフ』右舷に伸びていた砲身は、支柱などの残骸が大きく外側に向かって裂けるように広がっていた。それはあたかも黒ずんだ鋼鉄の花びらのようであった。

 その根元では、外周装甲が消し飛び、内部機構を剝き出しにした『バラクーダ』が、更に奥へと突き進まんとする勇姿を見せていた。


 真空が支配する宇宙空間では音は伝わらない。しかし、ルナンを始め、その光景を見つめる者たちには、「ギギギッ」、「ゴリゴリッ」とした鉄骨や内部構造物を押し広げる破砕音が聞こえる錯覚に陥っていた。

 目の前で繰り広げられる激闘と破壊の光景が、静寂の中にあっても彼らの感覚に響き渡るかのようであった。


 不屈の闘志で戦闘を繰り広げる母艦『ルカン』とルナンらの魂が宿ったかのように、舟艇は崩れかけた船体をねじ込ませていくが、噴射炎がふいに途絶え推進ロケットの根元から白いガスが噴き上がった次の刹那(せつな)、白とオレンジ色がない交ぜになった光芒と共に大爆発を起こした。


 遂に無人の突入舟艇『バラクーダ』はその任務を全うしたのであった。


 『ベーオウルフ』の右舷船尾にある砲身基部の放熱スリットから、火の粉を伴う黒煙が噴き上がった。

 次に、区画全体が破壊の閃光と共に砕け散り、その衝撃波が敵艦内部を容赦なく駆け巡った。火炎と破砕のエネルギーは、右舷を内部からなめ尽くすように広がってゆく。


 本体船尾に連なる四基の大型メインエンジンの外側に配置された数基の補助ロケットノズルからは真っ赤な閃光と火柱が噴き出し、船体後部から中央にかけて白亜の装甲が内部から押し上げられてめくれ上がり、継ぎ目から黒煙と火の粉が虚空へと流れ出していった。


 これまで姿を(くら)ませ、同胞の艦艇をいいように切り崩してきた“猟犬(ハウンド)”こと『ベーオウルフ』は遂に瀕死のダメージを受け、左へ大きく船体が(かし)がせていく。


 その姿は正に片翼をもぎ取られた巨竜(レヴァイアサン)であった。白い(うろこ)に覆われた半身を失った怪物はここに来てようやく大きく針路を転換させ始めた。逃げに打って出たのだ。


「やったぞぉー!」「大打撃だぁー」発令所内は歓声に沸き上がった。

「やった! やりもしたぁぁー!」ケイトもアメリアにしがみつきながら嬉々として跳ねている。


 これまで見えざる謎の存在に生命を脅かされてきたクルーたちの表情には、一気に明るさと笑顔が広がった。しかし、艦長ルナン・クレールだけは泰然自若。依然として厳しい表情のまま

「状況どうなっているか!」と声を上げた。


「クレール艦長、右舷第三区画損傷! 周辺各ブロックの気密は確保。被害甚大(ひがいじんだい)! 艦首外部追加装甲はほぼ喪失しました」と、ロイドが被害状況をまとめて報告した。


「兵装区画もダメージを受けた模様。前部発射管は全基損傷。第三、第一砲塔も使用不可につき閉鎖したとの報告あり」次にケイトに抱きつかれたままのアメリアが追加報告を上げた時だった。


 不意に発令所のスピーカーからある報告が為された。声の主はあのサンダース砲術班長であった。

「艦長へ。封鎖された船首区画に取り残された者が三名いる。うちの若ぇ連中が助けに行きてぇって騒いでいやがる。気密扉(エアロック)を解放しても構わねぇか?」かく言う親分さんにルナンが

「残された者らの人員構成は?」と、静かに問うた。

「みな一〇代の少年義勇兵ばかりだ。どうする?」


 これに、艦長ルナン・クレールは即座に席から立上り、そして決然とした咆哮を上げた。

「ダメだ! 現状を維持せよぉぉー!」


 猛々しい凛とした声量の迫力に、これまで歓喜していたクルーらの表情が引き締まっていく中、彼女は更に

「戦闘中である。ここにある者はすべて軍属。今さら判りきった事を訊くなぁ!」と、発令所に響き渡る大声を上げた。

 一泊の間があって

「了解であります。艦長のご判断は正しいと自分も思います。失礼いたしました」

 ここでスピーカーは黙した。


 ルナンは座席に身を収め、艦長帽の(ひさし)をぐいっと下げて俯いた。両の手は膝をつかみ、制服の布地が破れんばかりに爪を立てている。

 肩を小刻みに震わせ、前歯を覗かせた口元を下唇が白くなるほどにきつく結んだまま声を潜めて一言だけ呟いた。

「済まぬ……許せ」と。


 この様子を見た、アメリアは胸元にいるケイトにそっと

「戦争……だからな」と、言った。彼女もまた、悲痛な表情を浮かべている。


 ケイトも微かに肯くと、彼女の腰から手を放してアメリアに背を向けて同じ姿勢に直ると

「もう、大丈夫です。アメリアさん部署へ戻ってください。ごめんなさい」と、言った。

「自分が恥ずかしいです。つい、あの人が、ルナンが私とあの子たちを信頼してくれたのが嬉しくって、はしゃいでしまいました」

 ケイトが、か細い声で少し申し訳なさそうに言葉を紡ぐのを見た、アメリアは身体を離しつつその肩に手を置きながら

「いいんだよ。あいつの……力になってやってくれ」と、囁き自分のブースへと戻っていった。


 ルナンは苦悶を浮かべた表情から、再び(まなじり)を上げると

「取り舵いっぱぁい! 奴を追え。キャノンはまだ一基残っている。撃たせる隙を与えるな」との命を発した。

「これ以上はやらせん! 止めを刺す! 残った牙も抜いてくれる」


 “勇将の下に弱卒無し”

 その(ことわざ)通り、『ルカン』に乗り組む誰もが、更なる宇宙の戦いに挑まんとした。その意を汲んだかのように、老朽艦と呼ばれて久しいラパス級フリゲート艦は全身を軋ませ、損害箇所から煙を引きずりながら進撃を開始した。


「ケイト! ドローン隊に再度敵艦に取り付き、レールキャノンを封じ込めるよう指示してくれ。方法は任せる」と、ルナンが指示を発すれば、ケイトも決然と大きく肯いた時だった。


「猟犬が対艦ミサイルを発射……いえ、これは?!」観測員の一人が奇声を上げると同時に全員の視線がモニターに集まった。


 『ベーオウルフ』の船体中央部にある、先刻誰かが『ミサイルサイトにしては大きすぎる』と、指摘した区画。

 横二列、縦三列合計六基分の発射口が開き、白煙が間欠泉の如く吹き上がっている。そして、オレンジの眩い閃光と同時にデルタ型の飛翔体が飛び出した。


「あれは『スティングレー』じゃねえか! 艦上雷撃機まで積んでいるのかよぉ!」アメリアが忌々(いまいま)し気に怒声を上げる中、ルナンは


「次から次へと……贅沢な猟犬君だぜ」うっすら口の端を上げて見せた。


    ◇            ◇             ◇

       ー火星公転軌道 前方トロヤ群外縁部宙域ー


「救援要請だと?」やや怒気を含んだ豪快な声が、アトランティア連邦海軍籍の巡洋戦艦『ハンニバル』中央にそびえ立つ司令塔最上階の艦橋の冷たい空気を切り裂くように渡った。

挿絵(By みてみん)


 それを受けた、紺色を基調とした詰襟型軍服の女性士官は身動(みじろ)ぎ一つせず、メガネの真ん中を指で押し上げつつ

「はい。試験艦艇『モヴィディック(白鯨)』よりのダイレクト通信どした。何でも逆撃を受けて損傷したとの事どすなぁ。どういたしますのん? ゲルダ様」


 ゲルダと呼ばれた指揮官は多くのクルーがひしめく艦橋中央、床面より数段高い位置にある司令官席にあって、その最前列に居並ぶ監視窓の向こうに広がる闇の(とばり)を彩る星々を眺めつつ


「あの首領は『護衛艦隊なぞ要らぬ世話だ』と息巻いていたが……もう泣きを入れて来たか。海賊上がりの(やから)めが」と、これ見よがしに鼻を鳴らしては、優雅な女性らしい仕草で滑らかに足を組んでみせた。


「小一時間前には『豪勢な土産がある』て大威張りどしたのに、情けない限り。あと一応社長とお呼び下されませ。あれでも我が連邦の“外注業者”でっさかいに」

 黒髪おかっぱ頭にメガネの副官は柔和な笑みを浮かべつつ、司令官席に身を委ねる同性の指揮官へと寄り添った。


「距離は?」

「直線距離にて七万キロメートルほど。巡航速度でも二時間弱はかかりますやろう」

「監視ドローンは?」

「我ら五〇二(ごぉまるに)直属のドローンを配置しております」

「状況確認はできるな? カナンよ……」

「はい。タイムラグが二分ほどございますが、それでよろしければ」


 指揮官ゲルダが肯くと、カナンと呼ばれた極東アジア系の女性士官は手際よく、指揮官席に備え付けタブレットを操作し、記録映像を再生し始めた。


 それは巨大な白鯨『モビィディック』に果敢に挑み近接攻撃を繰り返す一隻の小型艦艇を映し出された。

 遠望からの拡大映像のためか、多少ぼやけてはいるが戦闘の詳細を見てとるには充分であった。


 鈍重な鯨に何度となく牙を立てるさして大きくもない鮫の姿をゲルダは笑みを浮かべつつ眺める。これに対し、カナンは白鯨の応戦に落胆したかのように肩を落として上官にこう囁いた。


「なんともみっともない戦いぶりどすなぁ。艦艇戦のいろはもあらしまへん」

「ふむ……なかなか手堅い戦い方をする船だな。カナン、これは?」ゲルダは画像にある鮫を指差し副官に問えば

「ラパス級フリゲート艦どすなぁ。旧式どすけど自由フランス海軍の汎用艦艇どす。よく海賊掃討作戦に用いられとります」と、的確に答えて見せた。


 記録された戦闘経過はフリゲート艦が二人の言う『モビィディック』の針路上にて舳先を真上に差し上げ、鯨の真下に潜り込む場面に差し掛かっていた。

「操艦は抜群。それに見事な逆鉾(さかほこ)撃ちではないか。敵ながら天晴と言う所かな」

「ふん! ベテラン操舵士と腕利き砲手が揃うているようどすなぁ」と、カナンが不満げに洩らした。


 これにゲルダは小柄だが丸みを帯びた煽情的な体躯を持つ日本系女史に

「違うな。これは指揮官の腕だよ。カナン・東雲(しののめ)よ」と、言うや佐官用制帽を脱ぎ、濃い褐色の面持ちを彼女に向けた。ウェーブの掛かったダークブラウンの髪が背中まで垂れた。


 ゲルダが前髪をかき上げながら微笑むと血色の良い唇の端から大きすぎる犬歯が牙のごとくに覗いた。

「一糸乱れぬ統制に基ずく反撃だな。指揮官の強い意志を感じる……」と、呟くゲルダ。

 肌の色こそはアフリカ系黒人だが、顔立ちはヨーロッパ系で鼻筋が通り鼻梁も高い。両の目の色は赤味の掛かった茶。眼光は鋭く獅子の如くであった。


 フルネームで呼ばれた副官は頬を染めて気恥ずかし気に、上衣と同系色のタイトスカートに包まれた良く張り出た臀部(でんぶ)と豊満な胸元を押しつける様にゲルダへとしなだれかかった。


 カナンはそのまま指揮官の肩に手を添え、悪戯(いたずら)っぽくひとさし指に癖の強いウェーブヘアを絡め付けてから、彼女の唇がゲルダの耳たぶに届くまで近づけこう妖しく囁いた。

「それで、あんさんはどないすんおつもりなんどすか?」


「さて、間に合うかな?」指揮官と言うより、黒い肌に端正で引き締まった女戦士の容貌に冷ややかな笑みを浮かべるゲルダは

「面白いな……こ奴と()ってみたい」と、声を潜めて女性の割には大きな手から伸びるしなやかな指二つを、いまだ顔を上気させて、とろんとした眼差しを向ける副官の顎に添え、優しく押し返した。


 “場をわきまえよ”という事であろう。


 この扱いに副官カナン・東雲は声を発せぬ唇の動きだけで“いけず(いじわる)やわぁ!”と。やおら身体を離し両腕を後ろ手に組んでから、次のように進言した。

「連中はどうなろうとかましまへんけんど、同乗しているドローン集中制御を(つかさど)る士官は我がブライトマン機関直属でおます。あの魔女の身柄だけは当方で確保しませんと、後でなにかと……」

「確かに。エルザ・シュペングラーの身柄が自由フランス側に落ちるは少々厄介だな」と、ゲルダが己が恋人にウィンクすれば、受けた方は頬を膨らませそっぽを向き

「それに、この失態に勘づいたアデル・ケイリー閣下の我らへの風当たりもいっそう強くなりますやろなぁ」と言った。


「国防総省に巣くう女狐(めぎつね)め。宇宙に出てまで嫌な名前を聞かされるとはな」

 上官にして想い人の言葉にカナンは鼻をフンッと鳴らし

「狐どすか? あ奴は言うなれば熊の暴君(ベア・ティラント)ですさかいに」と明け透けに言い放てば、ゲルダが快活な笑い声を上げた。


 肩を揺らすゲルダは膝上にある制帽の(ひさし)を手でなぞっていたが、やおら顔を上げそれを被り直し

「いずれにせよ我が養父殿(ちちうえ)エドガー・ブライトマン局長の面子をつぶす訳にも行くまいよ。相分かった。カナン・東雲中尉、全艦緊急発進せよ!」と、落雷のような声量で下令した。


 当のカナン東雲が伝達するまでも無く、艦橋に詰めるクルー達の動きが一斉に慌ただしくなった。


「はっ! 第五〇二独立遊撃艦隊(ヴァルデス・フリート)出撃いたします。ゲルダ・ウル・ヴァルデス大佐殿、つきましては駿足で名高い麾下(きか)ラングレー艦隊を先行させるがよろしいかと」この助言を受けたゲルダは

「任せる」と、その場で立ち上がった。


 身の丈二メートルに及ばんとする勇壮な体躯。されど四肢は流麗にして優雅。加え女性であっても『雄々(おお)しい』という言葉に相応しい出で立ちに、側に佇むカナンは頬を染めた。


 副官の熱い眼差しを受けつつゲルダは朗々たる声量をもって

「『ハンニバル』発進。全艦我に続け!」との号令を発した。

挿絵(By みてみん)


 これまで闇のみが支配していた空間に、突如として煌びやかな星団が産まれた。その光全てが、ゲルダ・ウル・ヴァルデス率いる全艦艇の噴射光であった。


 ゲルダは両脚をひろげ、腕を組んだまま屹立(きつりつ)して監視窓の向こうに広がる噴射炎の輝きを見つめながら

「カナンよ。我らは未だに正規連邦艦隊が忌み嫌う海賊共を束ねる任にある」と、口元を歪めた。

「……はい」

「だがな、今に見ておれ! 私は国許(くにもと)のみならず列強各国を従えてみせるぞ!」

「その意気や良し。あんさんらしゅうございますわ」

「この火星宙域、いや宇宙は我ゲルダ・ウル・ヴァルデスの版図、狩場であることを示さん!」

「ゲルダ様、天下をお獲りなされ。あんさんの好きなように為さればよろしゅうございますよってに」


 旗艦である巡洋戦艦『ハンニバル』を筆頭に、重巡洋艦二、軽巡四、駆逐艦七隻の他、補助艦艇を含めば二十数隻の艦隊が宇宙を駈け、一路ルナン・クレールが死闘を繰り広げている宙域へと進撃を開始したのであった。


怪物の片翼をもぎ取り、出現以来初めての大打撃を与える事に成功したルナンと『ルカン』であったが、『ベーオウルフ』もすぶとく新たな攻撃の手、雷撃機を出撃させた。これを迎え撃たんとするドローン三兄弟。

そして、アトランティア連邦の特務機関が派遣したヴァルデス・フリートも急行しつつある中、果たしてルナンの起死回生なるか?次回「跳べ!『ルカン』虚空への脱出」ご期待ください。

死闘に今、終止符が打たれる。

~君は惑星ほし未来あすを見る~

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