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もののふの星 リブート  作者: 梶一誠
24/37

汝の目指す天下は何処か

 ルナンの膝が震えた。たった今、自分への助力を惜しまぬと誓ってくれていた朋友(とも)は肩をいからせ、これまで見せた事のない険しい表情を浮かべている。


「ど、どうしたんだアメリア……全部、全部話したじゃないか」

「ああ、聞いた。だけんどおめの言うた事、みんな上っ面ばかりだがぁ! 今のおめではケイトは首を縦にふらねぇ。 天下獲るどころか『ダ・カール』の二の舞だぁ!」

「だから、真摯に詫びる。頭を下げるって。あの娘の納得できる条件すらも出すって! うっ!」

 

 こう言い返したルナンは思いっきりアメリアに頬を張られた。勢いあまってコードルームの壁に背を打ち、そのまま尻もちをついた。

「立て! ルナン。立てぇぇー!」

 アメリアに襟首を引っつかまれたルナン。そのまま壁に体躯を打ち付けられた。

「おめはここに来ても、まだケイトを手に入れ自分の野望を成就させる、その事しか頭にあるめぇ! だから上っ面と言ったんだぁー」


 ルナンもまた親友を()ねたガキのように睨み返す。そんな彼女にアメリアはこうも言ったのだった。

「おめ、この危機をチャンスだと思ってるべ? 棚ぼたとは言え艦長になった。目の前にはダイヤの原石みてえなケイトと機動兵器もある。その二つで功を為せば成り上がれる。これまで漠然としていた大望を為せるかも知れんと。違うかぁー?!」

 ルナンは襟首を掴む彼女の手首をむんずと握り返した。

「それの何が悪い?! オレは決めたんだぁー! 功を成し目の前の坂をどこまでも駆け上がってやるんだ!」


 アメリアの膂力(りょりょく)で小柄なルナンは持ち上げられるようにして、反対側の壁へと今一度叩きつけられ

「それはいい! だけんどその先だ。おめの本当の狙いは何だぁ。言ってみろ」と、さらに親友へと詰め寄った。

「い、妹の仇を討つぅー! 海賊共を根絶やしにしてやる。そして、 未だ行方知れずの親父を金と名声でおびき寄せて」と、次にこう叫んだ。

「オレの手で断頭台(ギロチン)にかけてやるんだぁぁー!」

「そんな事の為に天下ば獲るだとぉ! 声なき人々のために勃つだぁー! 今のおめはなぁ、その我欲と妄執に取り憑かれて目ん玉(くも)っていやがる。それがわがんねぇがぁぁー!」


 ルナンはまたぶん殴られると身を(こご)めたが、アメリアの両手が再び自分の頬を包み込んだ。ただ今度は抱き寄せるのではなく俯いたまま肩を震わせている。

そして、親友が顔を上げた時ルナンは凍り付いた。


 豪壮無敵の灰色狼は泣いていた。

「やめてくれアメリア。そ、そんな顔しないでくれよぉ。な、何でだよぉ」

ルナンもまた声を戦慄(わなな)かせ始めていた。そこへまたアメリアの怒声が降りかかってきた。


「おめ、今すぐその欲ば投げれぇぇー! このままだら、おめは坂の中途で高転びにこけて奈落の底に真っ逆さまだぁ! おらはそんなおめば見たかねぇんだぞぉぉー!」

 大粒の涙を流す友に、ルナンもまた声を上ずらせつつ

「どうしろって言うんだよぉ! だってこれがオレの原動力だったんだぁ。この一心でやってきたんだぞぉ~」と、身体を揺らせまたも泣き伏した。


 二人は狭いコードルームで互いに頬を濡らしては、鼻水をすすり上げていた。やがて、アメリアは大きく息を吐き、僅かに震える声音で

「あの頃を思い出せ、ルナン。おらと出会った士官学校時代を。おめはあの頃から、おらまで手に入れて成り上がるつもりだったかや?」


 ルナンは(うつむ)いたまま何度も大きく(かぶり)を振りこう言った。

「あの頃は無我夢中だった。アメリア……君の背中ばかり見ていた。嬉しかったんだ。オレの班長は背が高くて、カッコ良くて、何をやっても群を抜いていた。追いつきたかった。……オレはトロ臭く、いつもいつもビリッ(けつ)だった。でも班長はオレを待っていてくれた。そうだよな?」

 顔を上げるルナンに、アメリアは首を縦にする。

「おらは最初、『なんて厄介な奴がこんな所に来やがったんだ』ってよぉ、成績優秀者ばかりのおらの班に振り分けた教官を恨めしく思ってたよ」と、想い出に(ひた)るように目を細めた。

 

 ルナンは大きなしゃっくりを上げながら

「いつも、へとへとになって食堂に入ると班のみんなが飯に手を付けずに待っていた。他の連中はオレを睨んでたが、君は『ヨシ! 終わったな。飯だ』と言って笑顔をくれた」と、また豪快に鼻をすすり上げ嗚咽(おえつ)を洩らし始めた。


「あたり前だ! ビリッ尻だってちゃんとやるべき事をやった人間を(いじ)めていい訳はねぇし、ましてや仲間外れにする(いわ)れもねぇからな。だけんど……おめはぁ飯喰うのだけは速かったなぁ」

 これにルナンは妙な裏声のままで

「そうだったけぇ~?」と、少しばかり顔を(ほころ)ばせた。

「んだよぉー」アメリアも白い歯を見せ、左手で軽くルナンの金髪を引っぱたく。

 

 次にアメリアは神妙な面持ちで

「今は偉そうに言うとるけんど、あの頃はおらも天狗だった。増上慢でよ、いつか名を挙げて故郷に(にしき)飾ってやるって躍起になってたんさ。挙句の果てに銃の扱い舐めてコレだわぁ!」と、先刻固く握り合った薬指を半ば失くした左手と顔の銃創を重ねるようにしてこちらに向けた。


 アメリアは続けてこう言った。

「それまでおらを()めそやしてきた連中は誰も来なかった。一人ぼっちでよぉ。もぉ全部投げで故郷さ帰っぺと思ってた矢先におめが来てくれたな。おめはあの時も野心でおらを取り込もうとしたんか?」

 ルナンは顎の先まで垂れた鼻水までブルンブルン揺らして

「淋しかったんだぁー! オレの姉ちゃんみてぇな班長がいねぇ! 今どうしてる? 傷は痛むか? 何かオレに出来る事ねぇか? それだけで規定訓練空けに病室に通ったんだぁ」と、恥も外聞もなくうぉんうぉんと声を上げ泣き張らす。


 うっすら笑みを浮かべる灰色狼。またもやハンカチでみっともない豆タヌキの顔を拭ってから

「おめはおらの髪ば(くし)入れてくれだな。身体も拭いてくれた。危なっかしい手つきでリンゴの皮さ剝いてくれたべし。あん時はおめの方が指落とすんじゃねぇか冷や冷やしたわのぉ」と、ぱっと親友の眼前に左手をかざすと

「何でおらが顔の疵と指落としたままなのか……(わが)っか?」と、問うた。

「……自分の戒めのためだろ?」

「それもある。だけんどそれ以上にこれはおらの“宝物”だからだ。あん時おめがおらの気持ちさ変えてくれた(あかし)だからだど」

「宝物……」

「そんだぁ! おらが天狗の鼻折れてからは世の為人の為に働く。先ずはおめの為に戦ってやるべってな。全部ぅおめのまっさらな誠実さと大きな優しさがおらを変えたんだっぺさ」


 ここでアメリアは先刻の厳しい表情をルナンに向けた。彼女もそれを真向(まっこう)に受け、ズボンの裾を硬く握り身構えた。

「今からおらが言う事よう聞け、ルナン」アメリアは頬に添えていた右手で何度も友の頭を優しく撫で、宝物と称した左手を握り“どん”っとルナンの胸に押し当てつつ

「おめのここはな、でっけえ風呂敷だ。なんでも入る。誰でも包み込む。おめの最大の力なんだ。下手な条件なんざ出すじゃねぇ! 先ずは無私の心で、ずっと一人で戦って(かたく)なになってるケイトを包んでやれや! 『お前の味方はここにいる』って抱きしめてやれ。友だちになってやれ。一緒に歩いてやれよ。おめの天下獲りはなぁそこからなんだぞぉー」と、声を大にした。


 ルナンもまた真顔で熱のこもった朋友(とも)の言を醇乎(じゅんこ)たる(まなこ)で受け、大きく肯いた。そして、アメリアは両の手で何者にも代えがたいツレの二の腕を更に強く握り


「これまでのなんもかんも飲み込んでぇー、おめの、ルナン・クレールだけが成し得る天下ばぁぁ目指せぇぇぇー!」と、大喝したのだった。

 これにルナンも腹の底から()えるようにして

「はいっ! 班長ぉぉー! はぁいっ!」と、(こた)えてみせるものの、すぐに年端のいかぬ童のような見事な泣きっ面をさらした。


「判ったんならええ! おらがさっき言うた“真っ正直にぶつかれ”っつーのはこういう事だで。もう泣くなやぁ」

 親友の涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったハンカチを見て、一瞬眉をひそめたアメリア。そのまま彼女の顔にあてがい雑巾をかけるように拭けば、気恥ずかし気にこちらを見上げ耳たぶまで真っ赤にしている。


「何だね? まだ言いたいことあんのけ?」と、問えば、ルナンはもじもじしながら

「今だけでいいから……」こう呟いてから

「“お姉ちゃん”って呼んでいい?」と言った。

 

「ほれっ()やぁ!」アメリアは思いっきり破顔させ大きく腕を拡げた。そして、ルナンは友が(まと)う動甲冑の厚い胸甲(きょうこう)目がけ飛び込んだ。

「ありがとう! アメリア姉ちゃん。今まで誰にも言えなかったんだ」

「そうだな。易々と話せるこっちゃねぇわなぁこれは。それどな……」と、アメリアは抱きついて来た、妹ルナンの後頭部をギュギュッと締め上げ、そのつむじ目がけ顎の先を使い、キツツキが大木の幹に孔を開ける要領で何度も小突き始めた。

「いまさらなんだぁよ~。おめどおめの同居人キサラギ・スズヤはとっくにおらの妹だっぺさ。おめは次女でキサラギは三女だぁ」と言えば、

「嬉しいよ。お姉ちゃん。……あの……痛いんだけど」こう次女は控えめに訴えるものの……。


 長女を自称するアメリアはさらにキツツキ攻撃を加速させ

(すえ)の妹はよぅ出来た賢い(むすめ)っ子だげんど、次女のおめはぁほんに手のかかるぅー!」と、止めの一発を金髪頭に見舞う。

「ご面倒をおかけしてますぅ。不束者ですがこれからも面倒みてくらはぃ……。やっぱ痛いよぉ~アメリア」


 やっとここで羽交い絞めを解いたアメリアから少し下がったルナンが顔を上げてみれば、頬を染めたアメリアの慈愛に溢れる眼差しがあった。

「よぉ~う生きたげな。辛抱しできたなぁ。おめはなぁおらの殿様で、自慢の妹だぁ。人一倍苦労してもへこたれねぇけんど、ようよう世話の焼ける殿様だでのぉ」と、ウィンクしてみせた。

 ルナンも無二の親友へ屈託なく相好をくずして、何度もうなずき返す。


「アメリア、オレにもう迷いはないよ。今やるべき事はこの窮地を乗り越え、ケイトを始めクルーの皆を無事、家族の下に還してやることだ。お願いだ、知恵を貸して欲しい」と、再び孤高の鷹の目を輝かせて見せた。

「おうっ! いいぞその目だ。何でも言えや! 何からおっぱじめる?」


 今また新たな心持で現状を捉えんとしたルナンが一度大きく深呼吸してから

「司令部が“猟犬(ハウンド)”と名付けた敵艦は存在している。ドイツ皇帝派の新鋭艦らしいが、何らかの方法で姿を隠しているんだ。主要武器も不明で手がつけられない。これを皆に報せて意見を聞きたいのだが」と、表情を曇らせた。


「……またそげな顔する。全部おらに聞かせろや」と、アメリアに促されたルナンは秘匿情報”AA”扱いの内容に触れたクルーらに不利益が及ぶ危険性がある旨を告げた。


 それを聞いたアメリアも

「腹立つのぉー! これじゃ敵と殴りあう前に手足が利かねぇべさ……上は何を考えおるか?」と、不満をぶちまけ、コードルームの天井を仰いだ。


 二人が思案に暮れているところへ、この区画の主が呼び出し音と共に、クレール艦長への出頭要請を伝えてきた。

「そうじゃった! ここへおめを引っ張りこんだのは艦隊司令の引継ぎ云々(うんぬん)があったからだった! 早いところ済ませちまえ」

 アメリアは、モニター前の座席に彼女の体を押し込むように座らせ、自分は後ろの気密扉(エアロック)に腕組みして寄りかかった。


 アメリアは思わず吹き出しそうになった。


 頭でっかちで首の短いルナンが席に収まり、機器を操作する姿は、タヌキのぬいぐるみがえっちらおっちら悪戦苦闘してるように見えて仕方がなかったからだ。また、艦長の重責を全うしようと、一人で耐えていたのかと気付かされ、たまらなく愛おしく感じられたのだった。


「アメリア、こ、これ見てくれ。こっち来て!」手招きする豆タヌキ。


「何だね?」アメリアはルナンのすぐ脇でしゃがみ込んで一緒にモニター画面に表示されている文面に目を通した。


『秘匿レベルAA‐この情報の取り扱い、転載、複写を禁ず。艦隊司令及び副官、麾下艦隊各指揮官までの視認のみ(アイズ・オンリー)

〇艦隊司令及び副官クラスによる情報開示権限は海軍規定第七条第三項による(要確認)』


「ここ、(要確認)ってあるだろう。オレがムーア艦長から任を引き継いだ時にはここが(参照不可)だった。ここを開くと……ここ読んでみてくれ」


「なになに、海軍規定七条…ああこれか。えぇ~『第七条、三項に関する付帯事項:艦隊司令官による麾下(きか)に対する情報開示の場合、軍令部査察部による捜査対象とされるは各艦艇上長までとス。士官、兵卒はその適用外となす。なお、艦隊司令官否認の際も上記と同様の扱いとス』って何だぁこりゃ~? 説明してくんろ」


 ルナンはじとっとした目で、笑みを浮かべるアメリアへ

「君、一応士官だよね?」と、囁けば姐さんはそのまま妹分の頬を軽く抓ってから

「人間得手不得手(えてふえて)っつうもんがあるの。はよせぇ!」と、半ば強引に促して手を離した。

 ルナンは軽くため息をつくと

「前任のムーア艦長が仮に、この情報を全将兵に開示したとしよう。その場合、査察部に尋問され、処分を受けるのは各艦の艦長まで。オレやアメリア、他のクルーらは罪に問われないってこと」と、管制AIに悟られぬよう小声で話した。


「ほんならおめぇ、ムーア艦長もこれに沿って開示した方が良がったんでねぇのけ?」と、スカーフェイスの女武者は声を張った。

「これが“AA(ダブルエー)”軍令のいやらしい所なのさ。ムーア艦長を始め、各艦の艦長連はほぼ同年代。同期もいたかもな。前任艦長は自分の決定で彼らのキャリアに傷を付けるのを避けたかったんだろう……。選択の余地なんて端っからありはしなかったんだよ」

「聞こえはいいけんど、結局は互いに牽制させて監視体制を維持させる目的だっぺな! 機密管理システムの理不尽ここに極まれりだな」とアメリアは気勢を上げた。


 憤懣やる方ない相棒とは対照的に、ルナンは落ち着いた様子で画面に見入ってから


「やり様はあるぜ。聞いてくれアメリア。ここはオレが管制AIの指示通り司令官代行を引き継ぐんだ……」

「ちょっと待ったぁ。艦隊なんざ残っちゃいねぇ! もうここには『ルカン』一隻だけだど?」と、アメリアは抱いて当然の疑問をぶつけてみた。


「『シュルクーフ』がいる。現宙域を離脱したが健在だ。司令部は艦隊編成解除の命令を出していない。二隻になっても艦隊さ。それにこの表示を見てみな」ルナンはモニターをタッチ、一つ前の画面に戻した。


 そこには『特務訓練編制艦隊司令 旗艦『ルカン』艦長兼務 ルナン・クレール少佐(仮)を当該艦隊の代行指揮官とす』の文面が見て取れた。


「なるほどね! 艦隊の名目(めいもく)を保つためには管制AIはなんでもありって訳かよ」と不承不承ながら納得のアメリア。ルナンは更に興奮して捲くし立てた。


「こいつを逆手にとるんだ。司令権限で情報をオープンにしてもオレ本人が罪を認めれば、他の士官、クルー達が責任を追及されることは無い! 査閲の対象はオレのみ。そうすれば全員の知恵を借りて対抗策をひねり出せるんだ」ルナンはぱっと表情を明るくさせた。


 言うが早いか、彼女はそそくさと手続きを済ませると

「管制AIに指示する。秘匿命令『K―Ⅳ』を開示。船内各端末からのアクセスをオープンにせよ」と下令。


 すると意に反して、目の前の液晶画面に”エラー”の赤文字表示が点滅。

「副官の承認がありません。開示には副官の同意が必要です。副官を選んで下さい」と、物腰柔らかだが冷徹な擬似音声がルナンの指令を撥ねつけた。 


 ルナンはがっくりと落胆した。硬く握った自分の拳を忌々しげに睨むと

「自分が副官を拝命したく存じます」と、アメリアが声をあげた。驚きの表情を浮かべる親友へ

「ツレだって言うたべさぁ!」と、またウィンク。自分の官姓名と認識ナンバーを告げた。


「承認されました。アメリア・スナール准尉を副官権限有りの中尉(仮)として登録完了。秘匿命令『K―Ⅳ』を開示。随時アクセス可能となっております。お二人が(つつが)なく任務を遂行されますことをお祈り申し上げます」

 一連の登録手続きを終えると管制AIはモニター画面の電源を落とした。


「済まないアメリア。でもこの際だ、ご好意に甘えさせてもらうよ」

「気にすんな! 銃殺刑にはなるめぇ。二人して降格処分でも元の階級に戻るだけだっぺ」そう言いながら床に転がしておいたヘルメットと手甲を装着し始めた。


「さぁ、行こうか! 全員で対抗策を講じよう。なんだか気持ちが上向いてきたよ!」

「あぁ大分時間をかけちまった。あとルナン、妹さんの件は誰にも言わんぞ!おらが墓場まで持っていくからな」


 真顔のアメリアにルナンはまたしても泣きそうになりながらも感謝の意で大きく何度も頷いた。


 装備を装着し終えると、アメリアはヘルメットのヴァイザー部に“緊急連絡”の表示が点滅しているのに気付き、彼女はインカムを通して記録音声の再生を指示した。


「……クソッ!バッカ野郎がぁ!」


 アメリアはこの言葉を後に、コードルームを脱兎の如く駆け出した。慌ててルナンも走り出して、いきなりの親友の行動に戸惑いつつ何事かと訊ねた。


「クラークの奴が問題を起こした! 銃でケイトの身柄を拘束しているらしい」完全武装で戦闘モードのアメリアが狼の様に船内通路を疾駆する後ろを、イノシシの子供、ウリ坊みたいにたどたどしい足取りで後を追うルナン。


「もう…何でこうなるぅ?」ルナンの悲痛な声とアメリアの足音が通路に響きわたっていった。


《次回予告》

艦長就任以来、ずっと悩みの種であった秘匿情報開示の難題を突破した二人。そこへまた新たな問題が。

いったい何が起きているのか? 

次回「イエス! マイロード 仰せのままに我が主よ」乞うご期待。

~君は惑星ほし未来あすを見る~

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