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転生王女の外遊譚  作者: えすろく
7/13

時計の国(完結編)

 憲兵さんのガイドで簡単な晩餐と、滞在中の寝床のある『王宮』へ案内されてしまいました。サミュエルさんの荷馬車をちょっと引き上げただけですのに。


 簡単な晩餐とは。ドレスコードなど、家に捨て置いてきました。家と言っても王宮ですけど。旅人である私ではありますが、オシャレコーデは数着ありますのでそれで許してもらいます。


『アリスティリア様、我が国は如何ですか?とてもとても美しい国でありましょう』

「サミュエル様、商人ではなかったのですね……まあ、気づいていましたが」

 国王自ら望んで商人をされているとは。なかなか勤勉です。やはり王たる者、下々と膝を突き合わせ励むべきですね。ですが、この王は嫌いですね。


「11時の方向さえ見なければ、この国はお噂通りの『美しい国』ですね」

 11時の方角には奴隷商や野党が納める監獄が鎮座していました。

『アリスティリア様、貴方の国では「ならず者」はどう対処されなさってるのか?』

 質問をされてしまいました。私が極刑にしていますわ。とでも答えておきましょう。


「11時に発動する呪いでもあるのかと思いました。交通の法則性にも呪いでもあるのかと思いました。ただあるのは『ルールを破る者』には外道を許すだけでしたが。ルールどころか、呪いもありません。ただ、ルールを破ると『合法的な荒くれ者』に襲われるだけです」


 そう、この国の法は『ルールを破りし者11時の刑に処する』だけです。ルールを破ると荒くれ者に好きにされても文句なし。ただそれだけです。

 そして、サミュエル卿は『荒くれ者共』の王でもあるのですね。


『商人でもある私は考えたのです。街道の運用・観光地の活用・街の作り、そして荒くれ者達までもを。かくいう私は婿養子でしてね』

 サミュエル卿は淡々とこの国と民を思う気持ちを話しました。

『時計の文字盤に近しい街並みだったのも相まって、この街に「悪しき魔女が呪い」をかけたと流布したのです。元々、我が国の民は勤勉さと協調性を重んじる良き民であった。この呪いは「外道」外部の人のみに効果絶大な流布です。時折、街道の上を魔女様に飛んでもらうだけで外道たちは信奉し、従うのです』


 従わぬ者たちは理に従って無法を許される者に罰せられると。確かに合理的かつ、警備費も浮きますね。無法者を無法者で処理するのですから。『それが11時の刑』ですか。11時は『短針と秒針が交わることのない唯一の時間』ですからね。


セカイで多く使われる『条件』です。この条件は解りやすいという理由だけで皆が使う、『欠陥』です。

 呪いでも魔法でも完璧な術を構成するのは、いささか労力と時間を要します。

そこで、あえて欠陥部分を組み合わせることで『柔軟性と発動力の節約』を得る法則です。

 言い換えてしまえば、その欠陥を突けば、呪いや魔法は容易く破れるのです。

 ながーーーーーーーーーーい、詠唱時間もそれも欠陥と言えるでしょう。ひとはそれを『条件』という綺麗な言葉で魔女は誤魔化していますが。


 時計の国との相乗効果は絶大です。実際はそのような呪いも魔法もかかっていませんが。流布させ、承認させるには解りやすい『ランドマーク』ですね。街中に時計を設置し、ど真ん中に城を構え、『11時にならず者達』。ルールを破るとならず者達に、あらあらやだやだ。男の子の方が良かったですね。首チョンパ!で、あっさりしています。


「でも、あまり美しい光景とは思えませんね。王、自ら『慰み者』を他国へ売りに行くとは。親切な商人さんには気をつけろとも言いますね」


『いやはや、手厳しい。親切な商人は確かにそうかも知れませんね。ギブアンドテイクが血の一滴まで染み込んでる類ですからな』

 見た目からも察するに『良き隣人』の雰囲気すら感じる王だ。『時計の国』という箱庭のハウスルールに従いさえすれば幸せな時を終末まで過ごせるでしょう。私は嫌いですが。

 

 国の闇まで背負うこともないでしょうに。やはりこの国は嫌いです。


 次の日の朝、私はルールを無視して国を後にすることにしました。


 魔法のカバンの底から『懐中時計』を取り出し、『ゼンマイを巻いて』時計を合わせました。

 私の自転車、実は空も飛べるのですよ。ホウキのように。

 お城の周りと街をグルッと一周してから。私は荒くれ者達に襲われることもなく国を後にしました。その後のことは、私には関係ないでしょうし。


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