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転生王女の外遊譚  作者: えすろく
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時計の国(後編)

 途中、小休憩を挟みながら城下町の門前までは約3時間程で到着しました。途中、私が軽快に走っているところ、早馬が走り去ったくらいでしょうか?どうやら関所方面からの伝令のようです。


 伝令の憲兵さんは城下町正面門に馬を停め、門番さんと立ち話をしているようです。ならず者でも迷い込んだのでしょうか?門番さんと入国する人を精査なさっているようには見えませんが……。


 私は自転車を降り、歩きながら入国することにします。いきなり駆け抜けてしまったら、門番さんの槍と憲兵さんの馬で追い回されること確定でしょう。


 門に近づいていくと、声が届かないくらいの距離・目視で顔が確認できる程度の距離に入ると、憲兵さんは私を指さしておられます。

 絶世の美少女である私が気になるのは当たり前のことです。

 左手をシルフィードソードのポンメルに乗せておくことにしましょう。

 私の剣は、『魔女の杖』の上位互換なんですよ?


 不可解な動きをすれば、極大爆裂魔法をファストキャストで唱えることになるでしょう。イオナズンですよ。


『ようこそ、メディシス卿。カール・クオーツは貴殿を歓迎致します』

 あらあら、私の名はクオーツ国まで届くほどですか。絶世の美少女なので当然のことでしょう。

 そんなことはありえません。今すぐに爆裂しましょ。


「ありがとうございます。ですが、貴方様に私の名を名乗った覚えはございません。どうしてご存知なのでしょうか?」

 憲兵さんに問いかけると、一礼をし、『サミュエル様より伺いました』と仰っしゃりました。荷馬車の件ではお世話になったとも添えて。わざわざそれを伝えるために早馬を走らせたのですか?


 気持ちはわかります。

 私のカバンはサミュエルさんの喉から手が出る程の品でパンパンでございますから。

 邪心に囚われ、暗黒卿に堕ちた堕落した美少女、私の事でしょうか?

 未来はサミュエル卿とともに『異世界の武器商人』です。次の職業候補が決まりました。よかったです。


 ――純粋に荷馬車お礼だそうです。


 旅人にとって、厳密な『時のルール』があるカール・クオーツ国は『ガイドを雇うのが通例』との事。『暗黒卿サミュエル殿』はお伝えする事を失念していたこと。危うく娼婦堕ちするところでした。その前に国が消し飛びますけど。


 ガイド役として『憲兵さん』が担ってくださいました。

 サミュエルさんの邸宅で今宵は簡単な晩餐と、滞在中の寝床を用意してくださいました。

 高待遇すぎですね。今宵限りでさっさと御暇(おいとま)することにします。

 ギブアンドテイクのテイクのウェイトが大きくなってきた気がします。

 私の体が目的ですね。きっとそうでしょう。やはり国を爆破しましょう。


 クオーツ国は、整備されたメイン通り、美しいレンガ積みの家、ゴミ一つ無い街。とても美しい国ですね。『見た目』はです。内に秘めている事なんて住んでみないとわからないものです。クオーツ国は観光立国で『美しい時の国』としてセカイで指折りの地としても有名なのです。魔女の旅行ガイドブック『選ばれし10国』の一つに記載されています。


 気になることは、『正確に刻まれる時計台』が、どの方角を向いても目に入る事ぐらいでしょうか?。私自身も時間厳守の志を胸に秘めています。あら、小さい志だということ?『レベル5時デス』を発動してしまいそうになりました。正確に5時に発動すれば即死です。

 ――ただの妄想ですよ?


 街の皆さんは時計台を向いては時間を確認し行動なさっています。ガイド役の憲兵さんも時折、時計台に目を向けては私の案内をしていただいています。

 時々ですが、『メディシス卿、この時はこちらの通りは右に曲がる時です』と説明してくださいます。たしかに、この街はガイドがいないと街歩きすら難しいですね。


 では、他の冒険者さんや旅人さんはどうされているのでしょう。

 ガイドを付けている人・少数ですが、地図を片手に回っている人と2パターンですね。

 地図を片手に回っているのはカップルでしょうか?新婚さんでしょうか?。

 新婚旅行でしょうか?死ねばいいのに。


『時折、観光客がいらっしゃるんですよ。ガイド役を付けない「愚か者」が。特に、新婚旅行の不貞共は「二人の時」を邪魔されたくないでしょう。気持ちは判りますよ。ならば、我が国に来なければ良いのです』


 では、街の皆さんはどうされているのでしょう?。

 ガイドする側の憲兵さんは地図など持っておらずスイスイと案内をなさっています。街の皆さんもストレスを感じるような事がない歩き方や、馬車を走らせています。

 どうやら、街の作り自体に法則性があるようですが、複雑そうです。『鷹の目さん』を上空に飛ばし、街の並びを高くから拝見してみました。


「あ、なるほど。憲兵さん。この街は、街全体が時計台なのですね」

 一目でわかりました。とてもとても大きな文字盤の上に街が立っていました。たしかにこれは美しい。

 町の中央にある時計台が『お城』のようです。

 外堀の外周が時計で言うところのフレーム?でしょうか。城を中心に1から12まで11等分されています。ホールケーキを綺麗に切ったかのようになっています。

 確かに、美しいですね。ただ、11時から12時に当たる部分を省いてですが。


「なるほど……だから11時に表に出るなと。ここまで解りやすい構造ですか。私もこの手を使う『条件』を使いますね」

 

 現代っ子の人は、この法則に気づかない方は結構いるでしょう。11時のみ。いえ、11時にしか起きないというのが正しいでしょう。

 デジタル時計ではなくて、アナログ時計特有です。


「ですが、憲兵さん。不思議なのですが、この法則性を用いると『11時を回避』すれば良いのでは?」


『お察しがよろしいですね。逆なのです。11時のみ「法則が適応される」のです』


 はて?それでは、11時以外だと道を自由に行き来しても呪い等……にはかからないのでは? そしてまさに今、その午前11時台です。


『お昼の11時は大丈夫です。むしろ「メディシス卿」の時間でもありますね。今なら何をなさっても問題ないです』

 私は問題ないようですが、先程の『新婚さん』ははてさてどうなっているのやら?『鷹の目』で観測していて結果ははっきりくっきりと確認できてますけど。あら残念ですね。リア充は爆発してしまいました。


「では、憲兵さん。私はここで通ってはいけない『時間』を通ると、新婦さんのように貴方は辱めるのでしょうか?」


『それは例え話としても不愉快ですね。そのような行為はこの国では一切行われていないでしょう。新婦さんは自ら望んで「憲兵の慰み者」に志願されてたのです。さぞ良い子を産んでくださることでしょう。だって、ご自身の意思で「道を外された」のですから』


 憲兵さんの言う事はごもっともです。クオーツ国は四方八方に時計を設置し、ルールを明示し、警告をし、更にガイド役まで用意していらしている(有料ですけど)。

 ルールを守らない人に対してルールを守る義務はないということでしょう。

 ルールを破るとどうなるかは明示していないところがポイントでしょうか?


 解らない事もまだありますし、憲兵さんのガイドに大人しく従っておくことにしましょう。


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