魔王の国(前編)
「エクプロ---じょん!トラボルタ!」
……カシャ!
――魔王城はバラバラになった!
いい写真が撮れました。コウモリが飛び、闇雲がかかるいいお写真です。念の為に1枚はカラーで、あと2枚はモノクロームで撮影しちゃいました。
よし、用事は済んだし街に戻りましょう。
『ちょいちょいちょい!待て待て!そこの娘!!』
勇者でしょうか?僧侶でしょうか?魔法使いでしょうか?はたまた冒険者でしょうか?魔王城の周りには沢山の死骸やらが散見しております。南無三……。
『貴様!我に挑戦せずそそくさと逃げおうせるとでも思ったか!!この人族の娘よ!引っ捕え、なぐさめ者にでもしてやろうぞ!』
あらあらあら!威勢いい殿方で、私を捕らえ、なぐさめ者にて傀儡にすると!
よろしい!ならば大惨事大戦です!
「ここは、かの有名な『悪しき魔王が住む魔王城』でしたよね?仕方がありません」
「エクプロ---じょん!そんエンドジョンソン!」
……カシャ!
――魔王城は砕け散った!
「あの、すみません……変なワイプみたいなので顔出されてしまって、『卒業写真の欠席者』みたいな写真になってしまいましたよ。さっさと引っ込んで下さい」
厄介なことに魔王城を撮影した写真の右上4分の1ぐらいに人相と顔色が悪いオッサンの写真がついてしまいました。これでは売り物になりませんね。ご丁寧にエフェクトで顔を囲ってある仕上がりです。
『貴様!ここは、観光地ではないぞ!死して償え!死して屍拾うものもなし!』
そう言い残すと、壮大なワイプ画面が消えた!
確かに……魔王城ですね。無惨に散った勇者パーティーらしき骸が転がっています。さて棺桶に入れて運ぶべきでしょうか?っと、のんびりと写真を撮影したり顔色が悪いモンスターと会話していた間に取り囲まれてしまいしました。
『マオウジョウへオンナひとりでケシカケルとはいいドキョウだ!ヘヘヘ……コヨイは愉しませてもらうぞ!』
片言の言葉を喋るケンタウロスっぽい輩が『愉しませて』のところだけはっきりくっきりと喋っている卑猥なケンタウロスです。何人かやってしまってますね。あと、喋り口調が四天王の三下っぽい喋り口調に、『あ、こいつ死んだわ!』って今確信しました。私が始末しますので。
……たしか『上級ケンタウロスの肉』と『角』は高価な価格で取引されている素材だったはずですね。何となく理解しましたね。生きの良い生娘を味わって成長した上級ケンタウロスの肉が美味で出されているのも理解しました。
そういえば、この前行った国で食べたステーキも美味しかったです。上級ケンタウロスの肉だったかもしれませんね?
――よし、一狩りしましょう!
「貴方、私のような麗しき女子を食らって成長したケンタウロスさんなのでしょうか?そうであるならば、見逃すわけには……いけませんし、ぶっ殺しますよ?さっさと魔王城に戻って、ママの干からびたオッパイでも吸ってなさいな?ぶっ殺しますよ?」
『バーカカオメェー。キサマのようなコムスメにキョウミはナイワ!テメーのヨウナ、ムネがテッパンみたいなガキがイキガッテルンじゃねーぞ!』
滅殺する理由を加点してきますか?予告なくぶっ殺しますよ?ホントに殺ってしまいますよ?今なら金貨出せば大人しく帰ってやりますよ?
『ワーレは、キサマのヨウナ、メスノコワッパには興味ないわ!!』
なんか、所々、はっきりくっきりと喋って気持ち悪いですね。性的な意味です。そして、性的な意味の部分だけはっきりくっきりと喋って気持ち悪いですね。性的な意味で。あんまり、性的な意味を連呼されますと、Rー15の外遊譚になってしまいますよ?それは困ります。
――やはりこの世の巨乳の為に『生かして』おきましょう!
私には興味ないっぽいですし、彼は『戦闘』で私を愉しみたいようですので。私的には害は無いのですよ?とりあえず、駄賃代わりにご立派様な、『上級ケンタウロスの角』だけ折って持ち帰ることにします。実際、ケンタウロスの肉を捌くのも一苦労ですし。何より二足歩行する首から上が牛で首から下は屈強な漢の体ですから。臓物です、グロ中尉です!
あ、ちなみにですが、ケンタウロス率いるモンスターの軍勢約100体程度に囲われていますが、見世物のように私とケンタウロスを取り囲んでカンカンと武器やら、訳の分からない鉄の塊をカンカンと打ち鳴らしてとても賑やかです。
どうやら、彼等も娯楽に飢えているのでしょう。勇者パーティー?らしき骸は転がっていますし。
さて、この先どうしたものか……?