魔法の写真機と転生者
この世界にはちょっと面白い魔法具があります。
元いた世界でも存在していましたが、『スマートフォン』に役割はほぼ奪われていました。ですが、私の唯一の趣味でもありました。まさか異世界でも『それが』使えるとは。嬉しい限りです。
――パシャ!
そうカメラです!この世界では『魔法のカメラ』です。これを見つけたとき、ネームも含めて、『私以外の転生者』の存在を確信しました。ですが、その者は既に亡くなっていました。何故わかりましたか?と……。
「この世界の写真は全てモノクロームなのですか?」
写真館に立ち寄りました。ですが、どこの国の写真館も全て『モノクローム』です。
『お嬢さん、おかしな事を言うね。カメラに色は付かないよ。光と影を記録する魔法具だからね』
そう、この世界のカメラはモノクロでしか撮影が出来なかったのです。元いたセカイではフラグシップ機を使っていました。ですが、この世界のカメラは味のある転写紙を使った物でした。メリットも有りまして、チェキのように撮った瞬間紙にプリントされるところでしょうか。意外と品質も良いのですよ?
なので、写真を売る場合、1品ものの作品になるのです。良いお写真はとても良いお金にもなるのです。
私の路銀が意外と豊富な理由の一つですね。
あと、もう一つ付け加えるなら、その形ですが……。
「どう見ても……フジだわ……」
そうなのです、フジなのです。写るんです!!ではなく、普通の軍艦タイプのフジなのです。このカメラを見た時思ったことが。
「こんな偶然がある分けがないです」
このカメラを見たときに、私以外に転生者がいることを確信しました。もちろん王女様である私にとっては造作無いことでした。
◯
『ティリア様!この大量の書物と文献……いつになったら精査終わるのですか!!もう1か月も書庫に缶詰ですよ!!』
よし、ムチを入れよう。えいえいえい!!。
「マクル!禁書庫の書物をすべて調べ上げるまでよ!」
っと、まあ、王宮の書物をすべて開いて人海戦術をマクルと2人で1ヶ月程読み漁りました。副産物として、旅路の魔法具の開発に大きくプラスになりました。
調べ上げた結果、それは200年以上前のことになります。旅の吟遊詩人が不思議な箱を持って魂を紙に念写するという物語を見つける事ができました。
◯
どうやらその『不思議な箱』こそ、『魔法で転写するカメラ』だったようです。
このカメラは不思議なことに近接撮影(マクロ撮影)もできるカメラでして、さらにすべての写真が『パンフォーカス』になる仕様です。さらに凄いといえば……。
「高感度が半端ないわ……」
高感度耐性が半端なく高いというくらいです。
では、カラーで撮影出来ないかと?……実はできるんです。
ただ……。
『お嬢さん!凄く精巧に描かれた絵は確かに素晴らしいがね……それを写真と偽って持って来てらダメだよ!』
偽物扱いされてしまいました。魔法カメラ自体は『初期ロット』からカラーで撮影出来たのですが、『魔法カメラを作った転生者』が、写真=カラーが標準と思っていなかった、知らなかった、はたまた未来でまさかデジタルで動画でグルングルンなんて想像も出来なかった。ので、どうやら『モノクローム』になってしまったのです。
初めて手にした時に普通に撮影したら『カラー』で撮影できちゃいましたから。
特に、私はフラグシップ機をガンガン使いたおしていた程のカメラ愛好家でした。
才能溢れる私は、オートモードで写真コンテストを受賞してしまったとは、授賞式に黙っておいて上げました。AIが才能を未だ越えられていないようです。
ここから推測されるに、モノクローム期の人物が転生して作ったが、写真=モノクロームだという先入観がこのセカイ中に定着してしまって、以後写真はモノクロームであるとなってしまいました。
もし、革命に失敗し『女王』になった暁には、私が改革したい一つですね。
え?革命に失敗したら女王になれるのですか?と。うちの国、私以外に跡継ぎがいませんので。のんびり外遊しているのはそういう事です。国に帰ったら『王冠被って勇者に経験値を告げセーブする簡単なお仕事』が待っています。
まあ、どっちにしても、一度『女王』にならないと革命はできないのですけどね。